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第四話「理由」

八島亮との話の後、采は幾つか気にかかることがあった・・・が。

そこに他の参加者が現れる。

  一体何だったんだろうか。

八島亮、そして襲い掛かってきた少女。

何より疑問が「八島亮の経歴」だ。

あの男は「参加して数ヶ月か?」などと言っていた。



「なぁ、セヴン、思い出せるかどうか分からないけど、一ついいか?」

『・・・この殺し合いが何時から始まってるか、ですね。』

「その通り、さっきの八島とかいう男は「数ヶ月前」なんて言ってたよな。」

『それについては覚えてますよ。最古参で1年前の今日です。』

「・・・で、人数が増え続けてる、と。」

『いえ、今回の人数増加はご主人と同時に叩き込まれた人たちで終わりです。』

「どういう事だ。」

『・・・あっ』



言ってはいけない事を言ってしまった、というような声が頭に響く。

コイツは一体何を知っているんだ?



『・・・あちゃー・・・』

「・・・話せる範囲でいいから教えてくれ。」

『えっと、まずご主人が生きてた世界、ありますよね。』

「あぁ。」

『この殺し合いゲームは何回か完了しています。ここが別次元って事は知ってますよね。そしてこの次元(セカイ)では数回この殺し合いが完了しています。』

「・・・つまり?」

『・・・これ以上続けるとご主人の生きていた次元(セカイ)で才能人だらけになってしまいますね。』

「・・・それは、いい事なんじゃないか?」

『いいえ、才能を持った者ばかりが跋扈し、突然国家レベルの富を得たり、もはや全知と呼べる存在になってしまったり・・・そんな事になればどうなります?』

「破綻、か。」



そう、と小声で頭の中でセヴンが呟く。

確かに、何度も人が死ぬ度、こんなセカンドチャンスだらけのゲームをしていれば、生き残った12人は才能人として再度向こうで活躍できる。

まずは12人、しかし何度も繰り返していれば、10回で120人、100回で1200人だ。

石油王みたいな金持ち、そして人とは思えない才能を持った人間、そんなのだらけになってしまえば、社会は破綻する。



「・・・じゃあ、これが終われば、どうなるんだ?」

『当然「生き残った人たち」が先人のように向こう側に戻ります。そして、また時間が経ってから、人数をつぎ込んで再開するでしょう。」

「・・・終わりは無い、か。」

『・・・それは主催に聞かなきゃ分かりません、あくまで僕は武装人格。』

「主催・・・か。」



俺をこの世界に投げ入れた誰か。

俺が死ぬ直前に、「機会(チャンス)」をくれた何者か。

それに会う為にも、生き残らなければな。



「さて、行こうか。」

『どこへ?』

「どこかに。なるべく殺しをしない様に・・・」



言葉を言いかけたその瞬間、足元に銃弾が落ちる。

正しくは、突き刺さる。



「上か!?」



飛んできた角度は90度に近い、つまりこの真上か、その近くか。

何にせよ「狙われている」事に変わりは無い。

走り出す。

どこへ逃げるかも見当が付かない。

ただ、走り続ける。



「どこまで追いかけてくる!?」



行く先々、弾丸をわざとなのか「当たらない範囲」に撃ち込まれる。

これは、誘導されているのか?



「この弾は・・・」

『ライフル用の弾ですね。アサルトライフルの・・・ッ!?ご主人、右に!』

「えっ、あぁ!」



思い切り地面を右へと転がる。

5発の銃弾が地面へと突き刺さっている。

セヴンが教えてくれなければ死んでいただろう。



「どこから狙ってんだよッ・・・」



無我夢中で走り続ける。

止まれば恐らく「殺される」、止まった時点で相手は狙いを定めるだろう。



『ご主人!真上に数発撃ってみてください!』

「何でだよ!?」



走りながら頭の中に語りかけるセヴンと会話をする。

まだ少しは避ける事に余裕がある。



『いいから!』



2発、真上へと撃ち込む。

すると俺の頭の上に、何か生温い液体が零れ落ちる。

雨が温いはずがない、そっと頭を拭う。

・・・血だ。



『やっぱり。ご主人、頭上を。』

「・・・人!?」



そこにはアサルトライフルを持った髭面の男が肩を抑えていた。

軍人にも見える強面の男。

ソイツの表情は殺意しか見えない。



「て、テメェ・・・ぶっ殺してやる!!」

『右に走ってください!』



俺は指示されるがまま、セヴンに従い右へと一気に走る。

男は手に持ったアサルトライフルを真下へ乱射する

肩の痛みのせいで、反動を制御できず、弾が飛ぶ方向が無茶苦茶だ。



「チィッ、曲がれっ!曲がれってんだ!!」

『さぁ今です!』



引き金を引こうと思う、だけど指が動かない。

これを引いたら「俺を殺そうとしたヤツ」とはいえ、恐らくコイツは死ぬ。

一発撃つだけでも結構キているというのに。

俺が躊躇っている間に、男は姿を消した。



『ご主人!』

「・・・撃てない・・・」

『居場所は分かりますから、覚悟をさっさと決めてください。でないと・・・』

「俺が死ぬ。」

『・・・そうです。だから・・・』



これは俺が元居た世界とは違う世界での殺し合い。

本来、殺人なんて当然犯罪だ。

「見えないからこそ行える殺し合い(ゲーム)」

それを上から楽しんでる野郎が居ると考えると頭に来て仕方が無い。



「・・・セヴン、敵は?」



覚悟を決め、拳銃を構えなおす。

そう、これは「ゲーム」なんだ。きっと。

「殺された参加者は死よりも辛い目に遭う」なんて言ってたけど。

どうせ辛い現実に戻されるだけなのだろう。

そう自分にイヤでも言い聞かせる事しか今は出来ない。

それが出来なければ、俺が死ぬ。



『・・・超常(サイキック)タイプのステルス。ステルスと云えど、自身の姿と武器を消すだけ、つまり、分かりますね。』

「そこか。」



ポタポタと赤い液体が零れ落ちている場所にアイアンサイトを合わせる。

姿は消せても傷から流れ出る血液でバレバレ、という訳か。



「チィッ!引き金一つ引けねえアマちゃんが・・・よォ!」

「弾切れ起こしてるバカに言われたくは無い・・・」

「なっ・・・」



姿を現し、銃口を向ける男。

本人はフルオートで俺を撃つつもりだったのだろう。

・・・しかし、鳴り響くのは弾切れ特有のボルトの動作音だけ。

排莢もされなければ、空しく響く音。

そんな空しい音の中に響かせる、放たれる銃声。

男の手からライフルが落ちる。



『どこ狙ってるんですか!?』

「反動強いんだよ!」

『グロックで反動強いって女の子ですか!?ふざけてるんですか!?貧弱すぎです!』



俺が撃った弾は肩へ命中。

反動が強かった訳じゃない、正直ライフルの銃口が怖くてすぐに撃つ事しか出来なかっただけ。

血の流れているところを狙って撃ったが、その狙っていた場所が偶然にも肩だっただけ、しかしこれで無力化は出来た・・・はず。



「オイ!戦闘系の能力は無ェのかよ!?」



武装人格に必死に叫ぶ男。

その間にもう一発狙いを定める。

が、俺の目を疑う出来事が起きる。

狙っていた男の胴体が輪切りのように、3つにきれいに分断された。



「・・・撃つなら撃ちなさいよ。殺されたいの?」



照準をその声の方向へと向ける。

そこには、俺と八島が話している時に襲ってきた少女が、革靴を響かせながら、腕に竜巻のような風を纏わせ、歩いてきていた。



「ったく、判断のニブい男ね。ホントに12人が残れると思ってるの?この調子で。」

「・・・ムリだな。」

「12人残る前に貴方が12人からハブられるね。」

「ああ、助かった、ありがとう。」

「・・・で、ここでアタシが貴方を殺すって言ったら?」



足元に落ちている、男が使っていたライフルを拾い上げ、少女へと向ける。

「これはゲームだ。」そう言い聞かせ、ボルトを引く動作で牽制する。

勿論、弾なんて入ってない。



「・・・弾切れのライフル、でしょそれ。」

「バレてたか。」



バレてちゃ意味が無い。

弾が入っていればよかったが、残弾0では使い道が分からない人間を脅す道具くらいにしかならないので、投げ捨てる。



「・・・殺るなら殺れよ。」



諦めるしかなさそうだ。

俺はこの女の子に勝てる気はしない。

手を使わずに相手を真っ二つにするような危険人物だ。

銃を使ったところで簡単に無力化されてしまいそうだからどうしようもない。



『ご主人、敵意の有無くらい察してくださいよ、僕でも分かりますって。』

「えっ。」



思わず素っ頓狂な声を出してしまう。

何故なら、あの子は腕の風を消し、笑顔を浮かべてるから。

敵意の欠片もない、笑みだ。



「純粋すぎて・・・ふふっ・・・バカみたい・・・」

「う、煩いな・・・俺だって死にたくはないんだよ。」

『ホントバカみたいですね。』

「寄ってたかってバカにしやがって。」

「まぁバカみたいだけど。」



バカにしながらも手を差し伸べる少女。

敵意は感じられない。

これ手伸ばした瞬間に風出して俺の腕がスパーン、とかいうオチじゃないだろうな。



「・・・何警戒してるの?握手よ、握手。」

「・・・い、いや、だって、腕から・・・風出すじゃん?」

「出すけど。あ、いや、今は出さないよ?」

「・・・」

「ああもう、じれったい!」



半ば強引に握手させられる。

女性の手というのは柔らかいのですね、お父様。お母様。

そんな事はどうだっていい。何故彼女は握手を求めてきたんだ?

特に俺は能力はない。・・・武装人格には能力も胸もない。



『ご主人今何かとても失礼な事を考えませんでした?』



とりあえずセヴンをスルーして考える。

いや、考えるより聞いてみるのが一番いい。



「・・・で、今のはどういった意図で?」

「・・・神無月采。」

「は?」

「・・・はい。」



ケータイを突き出し、twiboinの画面を突き出す少女。

えっと、名前は・・・



「rin kazasumi・・・」

「風澄鈴、武器は貴方と同じグロック17と、この(エアレス)



自分の頭を指差し、武装人格であろう名を呟く。

・・・敵意は無さそうだ。



「・・・早くフォローボタン押しなさいよ。」

「・・・えっ。」

「えっ?」

「・・・いや、だって、それ押したら万が一俺が呟いたら場所とか特定されて俺が・・・」

「だから敵意の有無くらい察したらどう?」



本当に敵意が無いか、疑ってしまう。

何百、何千と参加者が居るであろうこの「殺し合い(ゲーム)」

残るのは12人、もし、彼女と俺を含め、12人以上で20人以下くらいの状況になったら。

彼女はどうするだろうか。



『もたもたしてないで押したらどうです?どうせ現実でも・・・』

「押しゃいいんだろ!押しゃ!」



彼女のケータイの画面に開かれている俺のアカウントのフォローボタンを押す。

俺のポケットに入っているケータイが震える。

その通知だろう。

勿論、通常なら返すのが礼儀だ。「通常なら」。



「まぁ協定ね。」

「・・・もし、もしもだ。俺たちが残っていたとして、数人がオーバーしていたら、君は・・・俺を殺すか?」

「・・・ふぅ・・・」



呆れ顔の風澄鈴。

何の意図で呆れているのか、よく分からないが、言ってはいけない事を言ってしまったか?



「・・・ならアタシと貴方を除いた他のを殺せばいい。単純な事でしょ?」

「なるほど。」



納得が行く。

定員は12人。

もしオーバーしていたら、俺たち二人以外の参加者を倒し続け、12人になるまで戦い抜けばいい。

そんな簡単な事だったか。



「ただ、もしも主催のキマグレで「やり直せる」のが一人だけだった場合・・・その場合は・・・」

「・・・ああ、言いたい事は分かった。」

「どうしても、やり直さなきゃいけないから。」

「・・・」



彼女の真面目な表情から感じ取れる決意。

「もう一度、才能を得て、生前できなかった事をやり直す」。そんな決意が見える。

聞いていい事なのかどうかは分からない、が・・・

気にはなる。



「・・・風澄・・・さん?」

「・・・鈴でいいわ。貴方のほうが年上でしょ?」

「・・・あぁ、どうして、そんなにやり直そうとするんだ?君に何があったか、分からなければ・・・流石に俺が死ぬのは・・・」

「・・・別に大したことじゃなくて、勝てなかった相手が居るだけ。」

「・・・勝てなかった?」

『ご主人、根掘り葉掘り聞くのはどうかと・・・』



ちょっと黙ってろセヴン。

「勝てなかった」この単語がとても気になる。

「此方側」か、それとも「向こう側」か。



「アタシの人生は、とても順調だった。ある「宿敵」が来るまでは。学校では生徒会長、部活の剣道じゃ主将。成績は優秀・・・」

「・・・別にやり直す必要なんて・・・」

「ある。・・・アタシより、数倍も、優れた奴が現れたの。偶然にも剣道部。成績は私以上。勿論、弱いアタシは・・・常に一番上に居たはずなのに・・・・・・それで、アタシは・・・向こうでは死んだ。」

「・・・そう、か・・・」



このやり直したい理由(ワケ)を通していいのか、それとも、俺にはわからなかった。

それはエゴの塊のようにも見えるが、一応、理由として筋は通っている。



「だから、もっと、誰よりも強く・・・誰よりも賢く・・・もっと高いところに居る才能人として、もう1回やり直したいの。」

「・・・そうなのか。」

「なんか、話したらスッキリした!・・・という訳だから、アタシに協力してよね!それと・・・貴方がやり直したい理由とかは?」

「えっ?」

「アタシだけ話すのは流石に不公平よね?・・・ほら、誰にも言わないし笑いもしないし、場合によっては協力するし!」



・・・俺のやり直したい理由(ワケ)

それは・・・何なのだろうか。

確かに、「やり直したい」とは願った。

・・・だけど、俺がやり直したい理由って、何なんだ?



「・・・分からない。」

「どういう事よ?」

「・・・何を、どうやり直したいのか、俺には、まだ・・・分からないんだ。」

「・・・何があったの?」



俺は、死ぬまでの経緯を彼女に話す。

出来損ないで、会社をクビにされ、呑んだくれて・・・

そして「もう一度、やり直せるなら」。そう願った、俺の事を。



「じゃあ、ただ純粋に、やり直したい、って事なのかな?」

「・・・そう・・・じゃないかな。出来れば、少しでいい、少しでいいから・・・前よりはまともになれるかな、って。」

「・・・はぁ、欲が無いわね。」

「痛っ!」



思い切り背中を叩く鈴。

かなり痛い。



「もしやり直せるのが12人なら、貴方もアタシもやり直せるんだから、もっとでっかい夢とか・・・」



俺は彼女の言葉を聞いてはいたが、理解はしたくなかった。

セヴンとの会話を思い出して。

「才能人や大金持ちだらけになってしまい、破綻した社会が作られる。」その事を。

・・・大きな夢を持って、それを叶えてしまったら、その後の世界はどう見えるんだ?

また、やり直したいと願うんじゃないか?「普通の人間としてやり直したい」と。



『・・・ご主人。』

「・・・今のところは、考えておくか。」

「まぁ、まだ何百人と参加者は居る訳だし、だから考える時間はたっぷりあるわね。」

「ああ。」

「さて・・・じゃあアタシはKPでも集めに行ってきますか!何かデカい事やる時はコレで連絡すれば、行くから。」



ケータイを振り上げながら去っていく風澄鈴。

俺は座って、俯いたまま、考え続けていた。

「何をしたかったんだろう」と。



「・・・やり直す、か。」

『考えているんですね。』

「ああ、風澄鈴、彼女のやり直す理由は・・・エゴに満ちているような気もするけどさ、だけど、しっかりとした意思がある。」

『ですね。僕には理解できませんけど。競争はしたことないので。』

「・・・それに比べて、俺は・・・」



何がしたかったんだろう。

生きていた頃、どんな事を望んでいた?

どのように、変わりたかった?

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