第十三話「セカンド・ウィンド」
殺し合い(ゲーム)に生存し、ジャックを退けた采。
その采とセヴンに、決断の時が迫る。
「では、神無月采とセヴン・・・・・・貴方達は何を求めますか。」
呆然と立ち尽くす、俺とセヴン。
考えている事は同じだろう。
けれど、まずはセヴンに言わせてやりたい。
「・・・ご主人。」
「・・・・・・お前から行けって。」
「・・・」
「行かないなら、まず俺から・・・・・・質問させろ、13番目・・・マザー。」
俺は、気になる事がいくつか、いやかなりある。
このゲームは一体どこで行われ、武装人格とは一体何で、疑問が尽きない。
しかし、全部答えてもらう気は無い。
俺が知りたいのは「ゲーム」についてだ。
「・・・このゲームは何の為に行われてる。」
「救済措置です。・・・貴方達のように、生まれ方を間違えた者への・・・」
「・・・ふざけるなよ。間違いなんてない。生まれ方、生き方、それに間違いも、絶対も、ないだろうが。」
「現に「間違えて」やり直したい、と願ったのでは?」
「・・・ある奴に会って、気づいて、それからだ。間違えば正せばいい。」
「・・・私が正すと・・・」
「・・・クソが。」
俺はセヴンとアイコンタクトを取る。
笑顔でセヴンは頷く。
勿論「一発ぶちかます」為、だ。
「んで、セヴン、決まったか?」
「僕はご主人と同じ事にしますね、マザー。」
「・・・・・・分かりました。」
「・・・さて、じゃあ聞いてもらうか。」
俺が望む。
俺がやり直す為に…
いや、変わる為、か。やり直すんじゃない。変わるんだ。
どちらにせよ一度死んでるからやり直しに変わりはないけれど。
「・・・・・・俺を、元の場所に戻してくれ。簡単に言えば、落下はしたが、死んでない、って感じで。」
「・・・・・・分かりました。」
「そうそう、僕も同じ感じで、お願いしますよ?マザー。」
「欲のない人たちです。」
「・・・・・・別に欲の有無じゃない。純粋に人間として、もう1回生きてみたいんだ。なぁ?」
「はい!僕も長い間これだったから人間ってどんな感じだったかなぁって!」
見た目こそ人間だが、セヴンは一応元武装人格だ
今は人間として呼び出されているが。
「向こうで、また会おうな。」
「はいっ!」
「・・・では、最後の勝者を・・・・・・」
新しい風、いや、新しくはないか。
・・・もう一度、風が吹く世界へ。
願わくば、少しでも俺にとって、追い風であるような。
第二の追い風。いや、第一は無かったな。
第二は追風であるように
目の前がフェードアウトしていく。
真っ白い世界。
壁も、床もない。
まるで目を閉じたような。
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――
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風澄鈴は、部活動に打ち込んでいた。
何故か、いつにも増して、やる気になっていた。
「部長、変わったよねー」
「なんていうか、あの事故以来?」
「そこっ!座ってないで練習練習!」
「は、はい!」
そのすぐ側には冥王院紫苑。
いつの間に横に立っていた。
「・・・紫苑。」
「ふふっ、鈴さん、一試合、お手合わせ、願えます?」
「・・・いいわよ、今日こそアタシの勝ちだから。」
数分後、そこには風澄鈴が横たわっていた。
その横には冥王院紫苑が座っている。
「・・・まだまだ・・・・・・紫苑には勝てないかぁ・・・」
「でも、今日の鈴さんはいつもより、どこか、なんていうんでしょう・・・」
「気合?」
「・・・っていうんですか?それが入ってました。」
「ふふっ、練習の賜物ね。」
二人は、何気ない会話をしているが、何か、大切な事が抜け落ちている気がする。
「しかし奇遇よねぇ、アタシ達。」
「ですね、同じ日に事故に遭うなんて。」
「アンタの場合事故っていうか、手入れミスでしょ。」
「ふふふっ、そうですね。」
風澄鈴は事故で意識を失うが、特に怪我はなかった。
その同時刻、冥王院紫苑は、家で真剣の鍛錬を行っていたところ、手を滑らせ、怪我をしかける。その後気絶。
奇遇などではない。「向こう」から戻されたのだ。
当然、戻された時間は同じ。
「此方」側で目覚めた時も同じだ。
また、あの場所で起きた事の記憶は残っていない。
彼女達や、生き残った参加者には、微塵も。
・・・ただ、一人を除いては。
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―――
――――
あれ、俺は・・・いてて・・・そういえば、会社をクビになって、ヤケ酒して・・・
・・・二日酔い、じゃないよな。自室で飲んで・・・
何で周囲には人だかりが?
・・・もしかして、飛び降りちゃったり?俺?
かなりの高さから地面に叩きつけられたみたいだな。
・・・でも、何ともないな。
「大丈夫ですか!?」
「いや、別に?大丈夫ですよ?」
「い、一応病院へ行ったほうが!だって貴方、上から・・・」
「ん、あぁ!大丈夫ですよ!」
「・・・でも・・・」
「あぁ!分かりました!分かりましたから、病院行きますって。」
俺は、病院へ行った。
特に外傷も無ければ、目立った骨折も無い。というか「何で病院に来たのか」を聞かれる始末だ。
無慈悲にも追い出され、街をトボトボ歩く。
「・・・何か、忘れてるよな。」
何故か、指で銃の形を作り、額に当て、撃つマネ。
・・・痛いお兄さんにしか見えないな。
・・・さーて、次の仕事を探しましょう。探さなきゃね。
「ん?」
ぼーっと病院前で突っ立っていると、薄紫色の髪の少女がこっちをじっと見ている。
・・・・・・何だろうな、彼女を、知っている気がする。
何故か、此方に笑顔を向け、手を振っている。
俺も、とりあえず振り返す。
「・・・・・・・・・何だろうな、この違和感。」
「・・・お兄さんお兄さん、僕とどこかで会いましたか?」
それはこっちのセリフだ。
・・・・・・全く、流石に高校生、大学生くらいの子に手を出したらマズいしそれに話しかけただけでも周囲に痴漢と認知される世の中だというのに、この子は・・・
「何言ってるんですか?」
「・・・へ?な、何か言ってた?」
「・・・あれ、言ってないような。」
「・・・・・・何だろうな、確かに、どっかで会ったような。」
「・・・そうですねぇ・・・」
まぁ、一応自己紹介しておくのが常識だろう。
誰だか知っているか知らないかはともかく。
「俺は神無月采。」
「・・・神無月・・・采・・・」
「どうした?苗字も名前も珍しいけど、そんな唖然とする事・・・」
「・・・・・・僕は貴方を知っているような・・・私は・・・」
病院で知り合った妙な少女。
彼女とはどこかで会ったような気がする。
互いに自己紹介を終え、少し話をすると、妙に共通点が多かった。
「事故に巻き込まれたけどほぼ無傷」「何か引っかかる」「思った事が少し読み取れる」
まるでエスパーか何かだ。
「・・・・・・まぁ、入院ですよ、僕。酷いですよねぇ、検査やら何やら。」
「事故って大事無かっただけマシじゃないかな?」
「・・・そうですねぇ。」
「・・・・・・さて、俺は・・・そろそろ用事を済ませに・・・」
「仕事探しですか?」
また読まれた!?
何も言ってないぞ。
「・・・その通りだよ。」
「ふふっ、頑張ってくださいね。それと・・・」
「ん?」
「また、時間とかあったら、会いに来てくれたら、嬉しいかな、って。」
「・・・あぁ、分かったよ。」
よく分からない少女。
だけど、何故か俺は、彼女に引き込まれていった。
どこかで、会ったような気がする。
考えを読まれるという事は会った、なんてレベルじゃないのかもしれない。
・・・その内、分かるだろ、多分。
・・・・・・まずは、仕事、探さないとな。




