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すくーぷっ!!  作者: 伽藍云々
2nd Semester
90/91

縦の糸



 

 

 偶に。ごく偶に。

 人生の中で1回あるかないかくらいごく稀に、人間はどうしても理解も不能な現象に真正面からぶち当たることがあると聞く。それはきっと説明しようがない、しかし確かに記憶にも、心にも残り続ける、時に歪で不確かで、時に不思議な温かさを抱えたものだという。だというなどとのたまっている以上そんな体験をしたことが凡そ無いに等しい人生経験値なのだがそれは大方の周りの経験値とほぼ大差ないといって差し支えないだろう要するに当たり障りのないごく平凡なものなのである。


 ともあれ。そんな現象にぶち当たったとき、の話だが……思えば今回の件も、そんな出来事の1つだったのかもしれない。




「いらっしゃ……何だ藤咲か」

「ご挨拶だなぁ」

「ちょうど良いくらいだよ」


 常連客に対して辛辣な店である。それが売りなのかはたまたどうなのかともあれ自分にそんな癖はないので悪しからず。


 

 さて授業が一通り終わった放課後。真っ先に藍さんの購買を訪れたのは、なんとなく落ち着かなくなった気持ちに区切りを付けたいという言い知れぬもどかしさ故。一度気になってしまったささくれは実に心の中に目立つ、解いてしまったかもしれない靴紐を早く直したいそんな感覚に近いかも分からない


 が、しかし。


「おー、君が噂の藤咲くんかぁ」

「へ?」

「はろー、ぼんじゅーる」


 いつもと異なる光景に、目的はするりと抜けていってしまった。

 彼女の後ろからひょっこりと、ブラウンのショートヘアの女の人が顔を覗かせたからだ。え、誰?


「ど、どうも……」


 取り敢えず会釈しつつ後ずさる。

 ぱっちりした大きなエメラルドの瞳に、長い睫毛。スッと高く整った小鼻に、小さな唇にはうっすらと桜色が添えられている。どこか日本人離れしたような美人さんである。いや誰?


「えっと……取り込み中? 」


 知り合いか?そんな意味もこめつつ視線を藍さんに移すが、彼女はどこか諦めたような表情で軽く右肩を竦めてみせる。


「いーや、まとわりつかれて迷惑してたところだよ」

「はっは、またまた藍ちゃんはツンデレなんだから〜」

「はぁ」


 ポンポンと肩を叩かれる藍さんはさも面倒そうに息をつく。一方女性は屈託無く笑ってどこ吹く風。そんなやり取りを見ていると、どうやら長い付き合いがあるように見えるが……っと、それはそれは人懐っこい笑顔で、こちらに近づいてくるではないか。


「えーと」

「藤咲くん。久しぶりだね」

「は?」

「ひ?」


 いやハ行じゃなくて。


「え、お会いしたことありましたっけ?」

「うーん、通りすがりにすれ違ったことくらいはあるんじゃないかな?」

「いやそれ久しぶりって言わないんじゃ」

「なーに、人類皆兄弟さ!だからすれ違っただけでもモーマンタイ!」


 いやいやちょっと。


「故郷のシャンゼリゼ通りとかで目と目が合った〜かもしれない」

「確実にないですよねそれ。フランス行ったことないし」

「わたしも行ったことないよー」

「………」


 何だろう……直感というか、本能が囁きかけてくる。この人は色々あれだ、関わると厄介なことにあるあれだ。あれしてあれするとあれするとあれだ。


「しかーし!私のおじいちゃんはスペイン人、おばあちゃんはフランス人なのだ!」

「はぁ」

「つまりわたしはスパニッシュフレンチクォーター」

「……えっと、それが今までの話と何か関係が……」

「根源的にフランスは故郷の味?」


 確信。絶対に関わってはいけない人だ。


「はいはいそこまでエリ、彼も困ってるだろ」

「あははー、藍ちゃん妬いてるのかな」

「アホか。それよか藤咲、何か用事あったんだろ?」

「あー、いや……特に急ぎって訳でもないからサ」


 すっかりペースというかリズムを崩されてしまい、もうこれ以上踏み込むことを躊躇わされるくらいでございましてハイ。もう気持ちはすっかり回れ右である。


 実際。先日聞いた藍さんの昔話が気になった、というだけの話であって。それが何の意味があるのかは分からないが、何となく聞いておいた方が良いのではないかと……直感的に感じてしまったのだが。そんな気持ちを知ってかはたまた偶々か、


「彼女も、うちらと〝部活〟メンバーだよ」

「え? 」


 藍さんはあっさりとそんな話を口にしてみせた。

 部活とは、この間教えてくれた高校時代の活動のことだろう。正直踏み込んでいいのか判別が付かないが……


「人呼んで美しき小悪魔、プリティプチデビルエリリン!」

「言われてないだろ」

「えー、じゃあ天使な小○意気は?」

「そりゃ違うタイトルでしょ」


 あ、ファンです私。


「仲良いんですね……2人は」

「もちのろんろん!藍ちゃんとは最早ドス黒い鮮血の糸で結ばれているともサ」

「……それ呪われてるってんじゃないの?」


 エリさんと呼ばれたその女性。色々残念な美人さんであるが、底抜けなその明るさは周りに何か未知なるパワーというかエネルギーを与えてくれる……ような気もする。藍さんもやれやれと呆れているような態度ながらその実は満更でもないような態度、やはり仲が良いのだろう、きっと学生時代も──


「いたいた、サボリ魔発見」


 聞き慣れた声に振り返るとトボトボと面倒そうに歩いてくる向井後輩の姿が。サボリ魔とは失敬な言いようであるが、言葉から察するにコイツが探しに来てくれたらしい。


「珍しいな、探しに来てくれるなんて」

「つーか、部長が騒ぎ出して大変なんすよ。「俊也がいない」とか「あいつを殺して私も死ぬ」とか」

「怖ぇーよ」


 何故病み状態なんだ。


「はいはい、用がないなら行った行った。うちも暇じゃないんでね」

「いや藍さん暇そうじゃ──」

「ふふふ、何を隠そう私は今ちょー絶忙しいのだ!仕事をする間も惜しんで」

「「働け(いてください)」」


 思わず藍さんとつっこみがハモッてしまう。すると、きょとんと女性は目を丸くしてこちらを見つめて来た。つい条件反射的に口にしてしまったが、流石に不躾だったか……すぐにすみませんと頭を下げるが女性はまだポカンとしていて、


「俊也!ここにいたのか!」


 今度は誰だ。振り返るとまたしてもうちの部員がこちらに向かってくるではないか、え、部活に指名手配でもされてるんです?


「何だ吉川、お前まで探しにきてくれたのか」

「いい加減苗字覚えてくれない⁉︎海馬機能する気ある⁉︎」


 着いた瞬間秋斗から大げさなツッコミが返ってくる。相変わらずつっこみのボキャブラが豊富である。


「吉川先輩、その登場もうやったんで。二番煎じとか芸がないっすよ」

「お前まで乗るのかよっ、これ毎回やらないとならないの⁉︎」

「「暇つぶし」」

「お前らいつか覚えとけよ……」


 つっこみで息を切らせるエネルギッシュさはある意味で驚嘆に値する気もないこともないと感慨もひとしおでもないがそれはさておく。


「つーか、向井もさっさと部室来いよ。皆待ってるぞ」

「へーい」

「え?お前部室から探しに来たんでないの?香織が喚いてるどーのこーの言ってなかった?」

「空想っすね」


 一番問題なのはこいつではないんだろうか。


 行くぞと呆れたようにため息をつき、踵を返す秋斗とそれについてトボトボとついて行く向井。「俺もここで」と藍さんたちに会釈を1つ。何か絶え間無い展開ですっかり気が削がれてしまったし、俺も一旦戻って出直そう──


「藤咲、くん」

「?」


 と、後ろからエリさんが声をかけてきた。


「今は楽しい?」

「え?」

「今、君は楽しいかな?」


 質問の意図が分からず目を丸くするが、彼女はニコニコと笑顔で、しかしからかうというような感じではなく真剣な声色で聞いてくる。

 曖昧でかつ不明瞭で意味が分からないことこの上ない。どうしろと、半ば助けを求めるようにそっと視線を外して奥の藍さんへ──


「…………」


 ジッと。彼女もまた。こちらを見つめていた。いつになく真剣な瞳で、それこそ多分見たことない程に真剣な表情で。思わず息を呑む、そんな藍さんを見たことは無かったから……


「……えっと」


 こっそりと視線を戻す。ちゃんと答えなければいけない気がした。


 今が楽しい、か。

 楽しいとはまたえらく曖昧な定義だが……学校とか交友とか人生とかそんな生活が楽しいかとわざわざ振り返ったことはなかったが。

 

 毎日が平穏……かどうかはともかく、学校に通い授業を受けて帰る家がある。当たり前のことだと言われるその当たり前があることはとてもありがたいことだ。部活も何だかんだで部員も増えたり、交友関係……といって良いのか分からないが知り合いも増えて色々な価値観もみることができた。それはきっと周りの皆も……同じ、なんだろうか。


「恵まれてると……思います」


 暫く考えて、出した答えはそれだった。楽しいかという答えになっているのかいないのか、捉え方によってはなっているとも言えなくないが、


「……そっか」


 エリさんは満足そうに、頷いてみせた。


「いいねいいね!青春してるんだね〜、少年!」

「は、はぁ……」

「いやー、若いっていいなぁ。また青春したいなぁ。わたしも学生の時はキラキラしてたのにな〜、」


 かと思うと能天気に笑ってポンポンと背中を叩かれる。してるんだろうか、少年。


「藍ちゃんもあたしも疲れて光を失った大人になっちゃったもんね〜、よよよ」

「待てこら、誰が光を失ってるって? 」

「あははー、ジョーダンジョーダン」


 そう言って戯れる2人はすっかり元の通りだ。先程のような奇妙な空気は微塵も、面影すらなかった。……何だったんだろうか、そう考えてもきっと答えは出てこないのだろう。何となくそれを直感していた。




「でもでも!あたしたちの学生時代はそれはもつキラキラしてたんだよ〜、きっと藤咲くんがあたしたちの高校時代にタイムスリップさせてあげたいナ」

「……それは、まぁ」


 確かに。2人とも美人なのは間違いないし、


「特に藍ちゃんはそれはもう清楚で可憐な美少女だったんだよー」

「清楚で可憐?」

「何故そこで首を傾げる?」


 日頃の扱いを考えると、むしろ当然の反応だと言って欲しいのだが。と、言い出しっぺのエリさんも納得してうんうんと頷いているではないか。


「どちらかといえば、特攻とか殲滅とかいう単語の方がしっくりくる気がする」

「あはは、それ分かるかも」

「釘バットとかもってサ」

「鎖鎌とかもありよりのありかなー」


 はははは。この日初めてこの人と共感した気がしたと感慨を覚える間も無く───自分の意識から光は抗う気もなく消え去った。






 目を開けると見慣れた天井、むくりと身体を起こすと見慣れた部室が迎え入れてくれた。さっきまで購買フロアにいたはずだったのだが……いつの間に瞬間移動など覚えたのだろうか。


「あ、起きたな」


 振り返ると秋斗が心配そうな表情でこちらを見つめてきていた。


「あれ、俺は……」

「良かった、いきなり気絶したから驚いたぞ」

「マジでか」


 購買から帰ろうとした秋斗たちは振り返ると床で伸びている俺を発見したらしい。背負われて部室に移動したようだった、テレポートではなかったらしい。原因は言うまでもないが……まぁいいか。頭を振って思考をクリアにしようと──


「てことで、ほい」


 はい?

 秋斗に手渡されたものに目を落とすと、それはトランプの手札だった。ふと見ると霞や古湊が手札を片手にテーブルを囲んでいた。……なにしてんの?


「せんぱいの番ですよー」

「いや意味が分からん」

「大富豪ですよ、大富豪」


 いや遊びの種類を聞いたのではなくて。

 渡されたトランプを改めて見てみる。K、Q、Jが1枚ずつ、1、9、8が2枚、10が3枚。それとジョーカーだ。ふむ、悪くない。テーブルを見ると右隣の古湊が7を1枚出しているところらしかった。


「……」


 全く理解出来ないが取り敢えず。テーブルについてQを出しておいた。


「他のやつらは?」

「他の用事で出てるよ……あ、じゃあここは1で」

「私パスですー」

「俊也と私もパスね」

「いや勝手に人のパス決めるなよ」


 パスするけども。


「何でそちらは残ってるんで?」

「せんぱいを待ってたんですよぅ」

「お前は部員じゃないだろ」

「いいんですー」


 良いのだろうか。しかし俺を待っていたというのはあながち嘘でないのか、秋斗や霞も軽くこくりと頷いていた。


「じゃあこれ10捨てで……」

「ちょい待ち、10すて?」

「あ、知らない……じゃあ辞めとくか」

「あたしは知ってますよー」

「10を出したら貴方のなけなしの尊厳を1つ捨てることができるのだったかしら」

「何その俺損闇のゲーム」


 何故トランプをしているのか分からないが、取り敢えずゲームを進めていく。


「それで、貴方の方では何か分かった?」


 都落ちしてから大貧民に転落し、3回巡ってやっと貧民に這い上がり、ついぞ大富豪の座へと返り咲いたところで、霞がぽつりと聞いてくる。何の話かは、言うまでもないだろう。


「……むしろ分からなくなってる気がする」

「もー、最初の威勢はどこにいったんですかぁ」

「威勢なんてはなっからありません」


 ペシペシと肩を叩いてくる古湊の批難をあしらいつつ居住まいを正す。


「けど、こうして待っててくれたってことは何か進展があったってことだろ」

「あら、普段使わない頭でも冴えることがあるのね」

「いざって時に沢山回転するように日頃は整備中なんだよ」

「あぁ、そう……」


 呆れたようにため息をつく霞は言い合いをする気力もなくなったらしく、視線だけを秋斗に向けてみせた。どうやら彼がここにいる理由もこの件絡みらしかった。


「概要は大体聞いてるけど……多分余計混乱するかもしれないぞ?」

「?」

「えーとな、順を追って説明すると・・・」


 さらりと5~9の階段を出して場を流す秋斗。あ、これまた都落ちパターンだ。






 秋斗がこの件を知ったのは昨日の朝、部室で霞と古湊が頭を悩ませていた時だった。正確に言うと、知り合いから聞いた話を何気なく2人に話したことが前に進むきっかけだった。


「お、アキ!」

「おぉ、久しぶり」


 その前日の放課後。

 たまたま学食で再会したのは中等部でサッカー部に所属していたときのチームメイト。高等部でもサッカーを続けている彼と今の部の情勢など積もる話をあれこれとしていると……


「そういや、今度のOB会はアキ来ないか?」

「あー、そういうのは・・・いいや。別に俺はいてもいなくても特に変わらないだろ」

「んなことねーって、皆来てほしいに決まってんだろ!」

「だと、いいんだけどさ・・・」


 からからと屈託なく笑う友人とは対照的に秋斗の表情に少し影が差したが、それも一瞬のことですぐに苦笑混じりに調子を戻した。


「つか部にも戻って来いよ、お前がいれば今のチームも――」

「あー、ところで・・・OB会の日程っていつだっけ」

「あ、あぁ、えーと・・・来月末だったな、あとで義人からメールさせるよ」

「おっけ」


 その後も他愛ない話を続けているうちにいつの間にか結構な時間が経っていることに気が付いた。辺りも少しずつ暗くなり、残っている生徒も部活動以外は疎らだ。


「悪い、そろそろ俺行くわ。部室に優理待たせてるんだった」

「お、なーんだそれなら早く言えよ。悪かったな引き止めて」

「別にいいよ、向こうもなんか作業してたしさ」


 っと、そうだ忘れてた。友人はそう言って別れようとした秋斗を呼び止め、椅子にかけてあったバッグからプリントを一枚取り出してみせた。どうやらそれは何かの連絡網らしく、名前と連絡先が掲載してある。


「OB会の話なんだけどさ、白木って連絡とったりしてるか?」

「白木って……あぁ、2年のときに転校した……どうしたんだ? 」

「いやほら、タカとかと話してて思い出してさ。あいつ転校したままで連絡とってなかったから。OB会とかでも会えたらなーってさ」

「いや、とってはないけど」


 と、その友人は秋斗の手を取って軽く頭を下げてきた。


「じゃ、ちょっと頼むわ。連絡するだけでいいから」

「え、俺が?」

「ほら、ずっと連絡してなくて今更ってのも何かアレじゃん?だから、辞めた者同士ってことでその辺で連絡とってもらえたらなーって」

「……わかったよ」


 神経質なのか無神経なのか分からない理屈に一瞬顔をしかめそうになったが、悪気があるわけでもないのは分かっているので了承すると、連絡先を聞いて後日連絡すると約束した──



 ──といった経過があり、今日連絡するついでに、偶々部室にいた霞と古湊にポロっとそんな話を零したら食いついてきたという訳らしかった。


「……白木」


 別に極端に珍しい苗字というわけではないだろう。が、だからといってありふれているものでもない。その上ここ最近の情報の中では何か1番真相に近い道の入口のようにも思えた。

 彼の名前は白木 (あきら)というらしい。


「お前らの話はさっき2人から聞いたけど、本人の関係者かどうか分かんないぞ?少なくとも俺は白木に兄弟がいるって話は聞いたことないし」

「たしかに、明さんが先輩たちとタメなら15か16ですし……年齢的にはお兄さんになりますよね」

「あるいは従兄弟、とか」


 霞は口元に手を当てて思案顔のままこう付け加えた。


「……あの人が本当の年齢を言っていたら、の場合だけど」


 ぱっと見は歳が近しい感じだったが、そんな感想はあまりあてにはならないだろう。わざわざそんな嘘をつく理由が分からないが、それを言ったらそもそも俺たちはあの人のことを何も知らない訳で。


「案外明さんが偽名使ってて本人だったりして」

「それこそ、嘘をつく理由が不明だけど……まあ考えても仕方ないか」


 一通り話を聞き終え、3人がこれから何をしようとしているのかをようやく理解した。自分を待っていてくれた理由も。


「で、秋斗が電話してくれるのか」

「ま、お前らの言ってる人が俺らの知ってる白木と関係あるなら、誰がかけてもいいんだろーけど。違うとややこしいしな」


 もっともである。テーブルに散らばったトランプを片付けると、改めて俺たちは座り直し、秋斗の電話を見守ることにした。


 ──あ、もしもし。白木さんのお宅ですか?私水原と申しまして……ええ、はい。明さんいらっしゃいますか?


 本人が出てきたのか、「覚えてるか」「久しぶりだな」とやり取りした後にあれこれと話を続け、弾み始めたのか時折笑いもみせるようになった秋斗。多少積もる話やOB会の話をしつつ、こちらの本題へ。


──あ、すまんすまん。もう一つ聞きたいことあってさ……お前って兄弟いたっけ?あぁ、いないか。そうだよな、悪い悪い。


 こちらに向かって手を振ってみせる。どうやら兄弟という線は消えたようだ。


 ──白木光さんって人がこの学校にいたらしいんだけど、その人ことって何か…………


 しかし、尚も話を続けていた彼の表情から一気に色がなくなった。理解できない、処理できないという感情のまま、それでも受け答えだけはしているような……嫌な予感がする。


 ──あ、あぁ……ごめん。ごめんな、俺、知らなくて……あぁ、分かった。日程とか時間とか、メールするよ。携帯のショートメールに送るから……うん、番号だけ教えてくれ。


 秋斗はメモを走らせると、丁寧に礼と何故かもう一度謝罪をして電話を切った。俺たちは怪訝な顔を見合わせて、もう一度彼に視線を送る。


「水原くん、どうしたの……?」

「いや……なんというか」


 ひたすらに当惑した様子でこちらに向き直ると


「明のお兄さん……光さんって、そう言ってた」

「え?」



 なんだいるんじゃないか。さっきの質問はなんだったのか、というかそれなら電話を切らずにその兄についての話を聞かないと───





「──植物状態らしい、もう何年も前から」





1年以上更新なく申し訳ございませんでした。忙しさ、というよりは話がまとめられなくなりそうになって四苦八苦しているうちに……という状態でした。ようやくまとまったので更新再開いたします……何卒お願いいたします!

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