迷えども、彼はその選択に意義を見出す
「あの、私達……作業場を探してて」
新聞部に訪れた依頼人の女の子。彼女の所属はロボット同好会という、一風変わったグループだった。詳しいことは良く分からないけど、小さなロボットなどを作って様々なコンテストに出場したりする団体らしい。メンバーは5人程度の小さなグループのようだが、日々精力的に活動に励んでいるという。
そんな相談というのは同好会の作業場が必要だというものだった。特殊なオイルやら道具やらは部室で使えるのに限界があるらしく、会はずっと広い作業場を探していたらしいのだが。
「結果が残せてなくて、予算も少ないから場所借りる訳にもいかないんだとさ。けど部室じゃ周囲に迷惑もかかるから出来ることも限られてて……とはいえ結果出さないと予算も増えない」
「モノローグだけで説明した事になるとか便利だよな」
なるべく分かりやすいようにと。要所をかいつまんで説明してやったが、隣を歩く男の放った第一声がそれである。しかも物凄い他人事のような声色で。
「予算足らずに困ってる部分に共感したのか、香織が引き受けてあげようってね」
「なるほど……容易に想像できる光景だ」
そう言いながら何やら空に向かってカメラを構えている俊也。全然聞く気ないですねこの人。しかし、時折立ち止まってはシャッターを押して、屈託のない笑顔をみせる。
「空が、好きなのか? 」
「ん、あぁ。空は1秒ごとに表情が変わるから、見てて飽きないっていうかさ」
……何だか、懐かしい答えを聞いた気がした。
「どーかした? 」
「昔さ、同じような事言ってた人がいたんだよ」
「昔? 」
「あぁ。あれはえっと……俺が小学校の頃かな。確か3年生とかそんなもんだったと思う」
地元のサッカークラブに所属していて。毎日が無我夢中だった頃。1日1日がキラキラしていて、まだ何の違和感も覚えていなかった頃。
「夕方くらいかな、クラブの帰り道でちょっと迷子になっちゃってさ。林みたいなとこでウロウロしてたら、助けてもらって」
「大人だったのか?」
「あー、いや。中学生、高校生くらいの男の人だったな。その時からしてみれば大人だけど」
あまり顔はよく覚えてないけど。
その人は迷子の俺を知っている道まで連れてってくれて……そう、確かその時も空を見上げて撮影をしていた。よく笑うような人だった気が。
「何だか怪しい奴だな」
「いや、今君も同じことしてるからね」
そう言えば、何処となく雰囲気が──
「次回、水原秋斗過去編。『誰が為にある思い』。信じることに疲れた少年は、信じることを諦めた少女と出会う。二人の失われていた時間が、ゆっくりと動き出す……」
「違ぇーよっ‼︎
つか勝手に終わるな変な予告を入れるなっ‼︎ 」
ボケないといられないのだろうかこいつは。つかやたら予告うまいなオイ、割とその話気になりますよ!自分の話だね!
「と、小気味の良いツッコミを挟んで目的地に到着した訳だが」
「人のことアイキャッチみたいに使わないでくれない? 」
「宣伝効果薄そうだもんな」
「どーいう意味ですかねぇ⁉︎ 」
欠伸混じりに前方へと指を向ける俊也。ホントに掴み所のない奴だ。
「何あれ、倉庫? 」
「あぁ。あれだな」
細かい経緯は俺もよく分からんので、恐らくもう集合しているであろう香織達に説明を求めるとしよう。
「あ、としやー! 」
「だからでかい声で名前を叫ぶな、小学生かお前は」
倉庫はよくアメリカのホームドラマなんかに出てくる車のガレージくらいの大きさだった。プレハブだが、雨風もしのげそうだし割りかししっかりとした作りだ。
で、その前には新聞部のメンバーが既に集合していた。白ノ宮ってやつは自分の活動に戻り、古湊って後輩も用事があると帰っていたが。真ん中の香織が大きく手を振って俊也の事を呼んでいた。ため息をつきつつも彼女の側に歩いていく彼の後ろ姿を見て、妙に何か微笑ましい、それでいて懐かしい感覚になった。
「秋斗君、連行お疲れさま! 」
「あぁ、香織の読み通り屋上で捕獲出来たから」
「ちょっと?人のこと珍生物みたいに言わないでくれる? 」
ある意味それよりもレアかもしれないな。
「あら、貴方の場合心身ともに絶滅危惧種の方が適切じゃないかしら」
「まぁ、人類史レベルで貴重な存在というのは悪い気はしないな」
「その思考も追加指定しておくべきね」
霞がにこやかに毒を吐くが待ってましたとばかりに切り返す。周りは気にも留めない辺り、いつも通りのやり取りなのだろうか。
「水原君は感染系の天然記念物ね」
「なるほど、概ね同意」
「まさかの飛び火⁉︎急に振るなよっ」
しかも感染系って何⁉︎いや天然記念物の方も意味が分からないけれど‼︎
「ともあれ、この倉庫を使い物になるようにしないとな」
粋先輩ってホントこのグループの良心だよ。常識人がここまで輝ける場所ってそんなにないと思うんだが。
「失敬な、360度何処を見ても俺が一番常識人だろ」
「そう言う俊也を諌めるのが常識人の私の役目ね」
「その中でも特に私が常識人代表」
「君らだけは絶対にそれ言っちゃいけないよねっ⁉︎ 」
右から俊也、霞、優理。
何で自信満々に語れるのこの人達!何でちょっとドヤ顔なのこの人達!常識を語る前に良識を持て‼︎
「つか、聞くタイミング逃してたんすけど。この倉庫どーしたんですか? 」
「お、よく聞いてくれたね」
と、辺りをキョロキョロと見回していた向井が倉庫に視線を戻して尋ねた。そう、俺もそれが気になっていたんだ、周りが脱線ばっかりしやがるから辿り着けなかっただけで。
香織はというと、何故か自慢気にふふんと胸を張ってみせた。
「ここはね、私達の戦利品なのだよ」
じゃーん!
やや間の抜けた効果音でも鳴りそうなほど周りが置いてきぼりになる中でも、香織は不敵な笑みと自信に満ちた態度を貫いている。
「つまりどーゆうことなんすか先輩」
向井は粋先輩に質問を進路変更した。
「ちょっと⁉︎これから説明しようと思ってたのに!」
「部長に任せてたら日が暮れます」
「なっ、どーいう意味よっ」
確かに変に勿体をつけている節は否めないけど。
「いや、俺も全く分からないんだけど……」
そして案の定粋先輩も小首を傾げている。そりゃそうだ、先程皆と一緒にポカンとしていたのだから。
「うぅ……なら、ここは折衷案で俊也に説明してもらいます」
「いや全く意味分かんないだけど、何と何を折衷しちゃったのそれ? 」
とか言いつつ香織の隣へ行ってあげる俊也。何だかんだ言いながら助けてあげる所が藤咲俊也という人間の特徴なのだろう。
「あの生意気な後輩に!ガツンと一発ぎゃふんと言わせてやる説明を! 」
「それ説明じゃないからな」
まぁ仕方ねーか。ため息混じりにそう呟きながら一同を見回して。
あれ、でもあいつ倉庫のこと知ってるような口振りだけど……さっき首を傾げてたような──
「えー、あの倉庫はだな……」
そこまで口にして、ふと口元へと手を当てる。何かを思案するようにしていたが──
「あれ何だ? 」
やっぱり知らなかった!
えぇ⁉︎と驚くというよりショックを受けている香織。ということは、彼の在籍時の話なのだろう。単純に忘れているだけで。
「……あの倉庫は、先代の先輩が使っていた倉庫よ。まぁ、たった一時期であとは物置状態になっていたけれど」
「かすみん! 」
霞がそれら全ての後始末をあっさり片付けてくれる。最初から彼女に任せておけば良かったのではないだろうか。
「なるほど、先輩が獲得していた戦利品か」
「見た目結構前からあるっぽいけど……よく見つけたなこんなの」
「まどろっこしい言い方をするから無駄な時間が流れるんすよ部長」
「何か一部批判されてる⁉︎ 」
ぐぬぅと言葉を詰まらせるが、今回は大人しく引き下がることを選択したようだ。このままでは話が一向に進まないと思っているのは共通認識らしい。
「ま、まぁ先輩達も譲り受けたものなんだけどね。えっと、確か環境委員会だったかな」
「え、それって又貸しにならねーか? 」
「そこは大丈夫!委員とは話付けてあるから! 」
ふふんと自慢気な表情を見せてVサインを作ってみせる香織。実に根回しの良い奴だなと少し感心。
「でも、中見たの大分前だし……当時も結構散らかってたから片付けから始めないとって訳です」
「なるほどね。それは確かに……」
やり甲斐がありそうだ。
粋先輩につられるようにして、俺たちも倉庫の方へと改めて視線を向ける。まぁ何というか、良い意味で年季が入っているというか。錆も目立つし風でシャッターがガタガタと鳴っているしで、「じゃあ掃除すっか」レベルではなく、「じゃあ掃除すっかァっ‼︎ 」くらい。え?分かりにくい?そこっ、ボキャ貧とか言うなっ。
「という訳で、今から大掃除を始めたいと思います! 」
思うと言いつつ決定事項。日本語の妙だな。
おーっ。一人だけ拳を高々と天に突き上げてそう宣言してみせる香織を眺めながら、俺はぼんやりと考える。
「そういや当事者のロボット同好会さんは? 」
「向こうは向こうはのお引越しの準備中。終わったらこっち手伝ってくれるって」
ホントに何でも屋みたいになってるなぁ。
予想通りだった事と予想外なこと。
前者は片付けが一筋縄ではいかないレベルで散らかっていたこと。埃や砂なんかも凄かったのでマスク着用の本格的な大掃除体制を要されることになった。
で、後者だが……
「うわっ、これソファじゃん!」
「何つーか、えらく古めかしいラジカセだなこりゃ」
片付けるべき対象がゴミなどよりも、多くが誰が何処からか持ってきたのか家具や道具などの簡単に廃棄できない代物だった事である。1つひとつが粗大ゴミ扱いとなりお金がかかるものも多い。積み重ねていくと馬鹿にならない額になる。
「これ新品じゃない……勿体無い」
中にはほとんど使われていないような靴や鞄も埃を被っていた。
これら全てを廃棄するのは流石に厳しい、というか勿体無い。だからと言って、じゃあ今いるメンバーがそれぞれ持って帰れるかというとそれも現実的ではない。さてどうするかと皆で集まって相談した結果……
「私達は無理でも……これだけあれば誰か必要としている人はいるんじゃない? 」
廃棄よりはまだ可能性があるなと霞の意見に全会一致。寄贈出来そうなアテを探す方向へシフトチェンジ。そこで俊也が「ならあいつに聞いてみるか」と携帯を取り出した。
「ふふーん、私の出番って訳ですね」
「何かよく分かんねーけど腹立つなその顔」
ドヤァ。
数分後。どうだと言わんばかりの自慢気な表情で登場したのは先程帰宅した古湊だ。やたら嬉しそうというか、いや純粋な喜びというよりあれは裏がある笑顔だ、俺には分かる。何故ならよく優理も似たような顔を──痛っ⁉︎
「いきなり何すんだよ⁉︎ 」
「何か失礼なこと考えてたでしょ? 」
優理に思いきり足を踏まれた。英霊レベルの勘の良さ。それはさておき古湊たちのやり取りは続く。
「せんぱいが『一生のお願いだ、情けない俺にどうかお前の力を貸してくれ』って頭を下げて来たので私も仕方なくお手伝いしてあげます」
「一言も合ってないから。違う世界線の話持ってこないでくれる? 」
「これでせんぱいに貸し3つですねー」
「え、何で段飛びして3つなの?闇金より利率高くね?ていうかそもそも貸しになってんのコレ」
「ちゃーんと返して下さいね☆」
きゃるん!
うわ凄どんな擬音だよ、とばかりに小悪魔めいたウインクをする古湊。
「無利子無利息で無理のない返済計画プランとかありませんかね」
……なるほど弱みを握ることで後々便利に使えるようにするって訳か!後輩なのに怖いよこの子!しかも速攻で返済体制に入ってるし!
「この男に貸しを作っても見返りなんてたかが知れているわよ……まぁ弱みは山ほどあるけれど」
「ちょっと?にこやかに言うことじゃなくねそれ」
何故か霞も自慢気にそんな事を言ってのける。いやー良い笑顔だな、思い切りダメージ受けている奴がいるんだけどネ。
「と、ともかく。話を進めるぞ」
脱線もそこそこに俺たちは再び倉庫の後片付けに戻ることに。
しかし何故あの後輩を呼び出したのか。その疑問は彼女の接点がいとも容易く解決してくれた。何でも彼女はこの町にある孤児院に知り合いがいるそうで、そこにいる子供たちに使えそうな物を寄贈しようというのだ。
「大勢で遊べるゲームとかあるし、綺麗に磨けば鞄とかも」
なるほど、と思わず感心してしまった。ここには家具や日用品もだが、ボードゲームなどの玩具も積まれていたりした。これは子供達にあげた方が喜ばれる。意外としっかり考えてるんだなぁ。
「けど、まだまだいっぱいあるな……」
寄贈用の物をあれこれと選別して一通り分けたが、それでもまだまだこの倉庫の物は多く残っている。全部寄贈、なんて押し付けることは出来ないし、さてどうしたものかと再び頭を捻ろうとした所で──
「あ、だったらフリマにしちゃおうよ! 」
と香織が提案。
フリマ……フリーマーケットか。確かに、一見ゴミに見えるようなものでも、人によっては価値を見出せるものがあるのかもしれない。悪くない考えだ……けど、どうやってマーケットを開くのか。
「確か、近々地元の自治会でフリマをやるとか言ってましたっけ。提案してみますか、上手くいけば物引き取ってくれるかも」
すぐさま向井が携帯を取り出して何かを調べ始める。
「おっけ!
じゃあ向井君は連絡お願いね。私達はフリマ用になるものと完全な廃棄とを分けよう」
「じゃあ、仕分けしたものを掃除するのは俺たちでやろうか」
凄いな。何というか、判断が早いというのか……こうしようと決めた時の動き出しに躊躇がない。いや、というよりも部としてのお互いの信頼感というのかそういう目に見えないやり取りのようなものが──
「あ、これ部の名義にして、儲けを俺たちで取るとかどうっすかね」
「絶対ダメだから!寄贈だよ寄贈! 」
「じゃあ部の予算に回すとか」
「それもダメ……なこともないけど、でも……いや、それはあり? 」
「靡くな靡くな」
……やっぱり勘違いかな。
その後、ロボット同好会の人達も合流して一気に効率が上がった為か、日が沈みかけている18時頃にようやく区切りが付いた。フリマの件は向井が上手く交渉してくれたらしく、使えそうな物を自治会名義で出品する代わりにほとんど全て引き取ってもらう事ができた。まぁ、それらを磨いたりすることにかなりの時間を要したのだが。
古湊はといえば、仕分けした寄贈用の物を積んで──
「提案したのせんぱいなんだし、手伝って下さい」
「えー」
「大体私こんなに持てませんよー」
渋る俊也の首根っこを掴むかのようにして、つい90分前くらいに施設へと向かって行った。何気に上下関係構築されてないか、大丈夫か俊也のやつ。
「ふぅ……」
ま、そんな訳で結果的に色々と手伝ってしまっていた俺だがひと段落。倉庫のそばにあったベンチに腰掛け、ぼんやりと空を見上げる。薄暗く色褪せていく青に、鮮やかに彩られていく橙色に混じってゆく。言葉に言い表せないような美しい色合いが心を自然と和ませてくれる。
と、室内から出てきた香織と目が合った。
「お疲れ様。ようやく落ち着いたね! 」
「お疲れ様。まさかこんなに大変だとは思ってなかったな」
「ね、手伝ってくれてありがとね」
晴れやかな表情で笑みを作ると、こてんと隣に腰掛ける。
んーっと大きく伸びをして。
「でも、これでロボット同好会も活動に邁進出来るね」
「ま、学校からちょっと離れてるけど……ちょうど良い場所なんじゃないかな」
実質物置状態になってたのだから。中の道具も寄贈やフリーマーケットに出せることになったし、結果的に誰も損をしないというか、皆が納得して得する世界。とそこまで大袈裟なものでもないのだが……しかしだからこそ、気になっていた事がある。というか、ずっと引っかかってたことだ。
「なぁ」
「ん、なーに? 」
小首を傾げてこちらに目を向ける。
「皆は新聞部なんだよな? 」
「そだよ? 」
「何でここまでやってやるんだ?いや、その依頼とかがくるようになった経緯とかは聞いたけどさ……個人的な関わりとか無いわけだろ? 」
どうして新聞部なのに。
いや、困っているのを見過ごせないのは俺も同じだけど……それでよく優理には怒られているが。
「ふっふっふ、甘いね秋斗君」
「? 」
まるで悪代官のように不敵に笑う香織。何だ何だ、何かとんでもない裏があるっていうのか?
「口コミから」
「おお、結構色々考えてるな、流石部長」
なーんてね。
どこか吹っ切れたようにそう言うと、はにかんでみせた。
「困っているのを見過すのって、やっぱり私には無理なんだと思うな」
「……そっか、優しいんだな香織は」
「ううん。そんなんじゃないよ」
どこか困ったように笑ってみせると、
「結局、全部自分の為だよ」
そんな、凡そ似つかわしくないような言葉が返ってきた。思わず彼女の方をまじまじと見返してしまう。
香織は両手の人差指を胸の前で合わせると、ゆっくりとお互いを動かして円を作ってみせた。
「くるくる回ってるんだよ。悲しくて困ってる人がいたら、周りもきっと悲しくなっちゃう。そのまま見過ごしたら私も。
でももし力になってあげられて、それで喜んで貰えたら、周りも幸せになる。そうしたら私も嬉しい。そうやって巡り巡って、自分の所に返ってくる訳です」
「………」
「だから、自分の為なんだよ」
そう言って、屈託のない笑顔をみせる。
昔、どれだけ昔か分からないけど。多分俺は全く同じ事を誰かに言われた。確かに言われた。そうだ、だから俺も……
──あぁ。なるほど。今ようやく納得した。
「……そゆことか」
「秋斗君? 」
「いや、何でもないよ」
優理が何でここに居場所を見つけようとしたのか、何となくだが納得した。言葉にしろと言われると難しいのだが、何となく納得してしまったのだ。
中等部でサッカーをしていた時、彼女の悲しそうな顔が嫌に印象的で。俺がサッカーを辞めた今も、時々彼女はそんな表情をする。親友にそんな表情をして欲しくなくて、俺は色々と考えてしまう。けれど、ここに居る時の彼女はあんな悲しそうな顔をしないような気がする。直感だけど。
そして不覚にも、俺もそんな空気に触れてみたいと。そう思ってしまったのだ。
「あぁ、そうだ。入部試験の真っ最中だったよな確か」
「え?」
「もし継続中なら、是非お願いしたいんだけど」
ホントに⁉︎
目を輝かせて手をとってくる彼女に、やや肩をすくめるような調子で頷いてみせた。暫くして俊也達も帰ってきて、俺の入部意思は瞬く間に知れ渡った。
「……正気? 」
「聞き方がおかしくね⁉︎
まぁ、俺も同じだよ。優理と。何かが変わりそうな気がしたんだ」
「……」
優理はうつむいて、あれこれと思案していたようだが、やがて顔を上げて。
「720度違う」
「二回転してんじゃねーかっ! 」
やれやれと息をつく親友。それでも拒否をしている訳では無さそうだ。
あの表情の原因は未だに分からないけど。もし皆と一緒にいて、それが無くなるというのなら……もしくは、原因を見つけられるなら。
随分変わった奴らばかりだが。それでも。
ここで皆と一緒に過ごしてみるのも悪くないのかもしれない。
と、まぁ綺麗な終わり方をしようと思ったのだが……
「じゃあ改めて、面接を再開しようか」
「またやんのかよっ⁉︎ 」
「えー、我が社への」
……やっぱり不安だ。
次回から新学期をテンポ良く進めていけるように頑張ります!




