散歩でもするか
今回はレフェル様がお貸し下さいましたキャラクターが登場します。
性格や言動が上手く再現出来ているか不安ですが、ご指摘頂ければ即訂正致します。
それと、霞の口調を変えてみました。前話も口調を訂正済です。
もっと毒舌が似合いそうな口調にしましたので、ご了承の程よろしくお願いいたします。
土曜日。
学生にとっては何よりも大切な連休のうちの1日目。翌日に日曜日を控え、気分は高揚、暖かい布団で丸くなってぬくぬくと昼間で二度寝を楽しむ素晴らしい日。
の筈なのだ、本来ならば。
「はぁ……」
「俊也、その耳障りなため息は止めてくれる?」
土曜日にも関わらず、俺は学校に来ていた。朝早くから叩き起こされ、制服を来て通学路を歩いてきたのだ。
理由は勿論、新聞部の活動の為である。
「せっかくの土曜日なのに登校する辛さ、これがため息を吐かずにいられると思うか?」
「じゃあ息の根を止めなさい」
「死ねって!?」
やるせなさに部室の窓から広がる空を眺めて深々とため息をつくと、向かい合わせに座っていた霞がジト目をこちらに向けて相変わらずの辛辣な言葉を放ってきた。
「それにしても暇ね……
俊也、何か面白い事は無い?」
「おいおい、こうして男と部室で二人きりなんだぜ?ラブコメ的にこれ以上おいしい展開は……」
「黙りなさい雑草。
その腐りきった思考回路を焼き切るわよ」
「すみません、少し調子に乗りました……」
パタリと読んでいた本を閉じてギラリと目を光らせる霞。
うん、流石に調子に乗ったな。怖かったので素直に謝っておく。
今、部室には俺と霞の二人しか居ない。
香織と島先輩はパソコン室で新聞のサンプルを作っている。それが出来上がったら部室に帰ってきてチェックをするのだが、それまでは仕事が無い。
島先輩の同伴は毎回ランダムなので今回は香織、俺と霞は留守番になっているのだ。
「残念だけど今の私と貴方の間に立つフラグなんて無いわ」
「今のって、じゃあいつかはあるのか?」
……ちょっと期待してみたり。
「そうね、私の俊也への好感度が75以上になれば或いは……」
「何の基準だよそりゃ」
「因みに今の好感度は4ね」
「低っ!?
好感度低過ぎだろ、共に過ごしてきた2年半でたったの4かよっ」
基準はよく分からないが彼女の4という数字が限り無く低い事だけは分かる。
何だかんだいって付き合いも結構長いのだからもう少しくらいあっても、せめて30くらいは。
「安心しなさい。
中等部二年の時は20、三年の時は10だったから」
「着実に減って来てんじゃねーか!このペースだと来年には0になるよな!?」
「相変わらず可哀想なな頭ね、0にはならないわ」
急に真面目な表情になってこちらを見つめる霞。ま、まぁ流石にそうだよな、彼女なりのフォローのつもりなのか……
「マイナスがあるから」
「………」
そんな訳も無かったな。
やはり彼女は徹底しているようだ。まぁ、もう慣れたけどさ。
「それで話を戻すけど……暇よ、俊也」
「……だったら学校内を散歩でもするか?」
このまま部室に閉じ籠っていても暇なだけだ。付近だけでもブラブラと歩き回れば少しは
「なるほど、気分転換にペットの散歩という訳ね」
「待てオイ、誰がペットだよ」
「反応している時点で貴方以外に選択肢は無いでしょう?」
クスリと
俺は一体何のペットだというのか。
「首輪はいる?リードもあるけど」
「いるかっ!!」
テーブルの側にあった紫色の鞄から何故か入っていた首輪とリードを取り出してみせた。
何でんな物騒な物があるんだよ。
「演劇部用の鞄。
倉庫にあったのをこの間持って来たの」
「どんな演劇……?」
棘付きの首輪とリードとは随分と趣味の悪い内容そうだな。どうでも良いが。
「で、いる?」
「いらんわっ!」
「で、私達はどこに向かってるの?」
「別に決めてないけど……」
部室を出た俺達は第二校舎から第一校舎に移動し、廊下を行く宛も無く歩いていた。
ブラブラと特に目的も無いのだが、先輩達が帰ってくるまで時間を潰せればそれで良いのだが。
「じゃあ、取り敢えず近くのカフェでお茶にしましょう。勿論貴方の奢りで」
「お前話聞いてた?学校をぶらぶらしようって……」
「喫茶店、貴方の奢りで」
「分ァったよ……じゃあ学食な学食。それで勘弁しろ」
「妥協するわ……」
目的地は決まってしまったな。仕方ないとため息をつきつつ、俺は学食のある校舎外に行き先を帰る事に。
霞もすぐ隣に並んでちょこちょことついて来る。
というか、流れで頷いてしまったが何故俺が奢らなくてはならないんだ。
「お、俊也じゃねーか。それに成條も」
「「?」」
素朴な疑問に内心首を傾げつつ歩いていると、後ろから突然声をかけられた。
この声は……進一だな。
「よ、ご両人」
振り返ると案の定進一が微笑んでこちらに顔を向けてきていた。
「あら、こんにちは。東堂君」
「あぁ、こんにちは」
軽く会釈してみせる霞にサッと手を挙げて爽やかに挨拶を返す進一。
しかし今日は土曜日、何故彼がこの学校に居るんだろうか。
「お前、何でこんなトコに……今日は休みだろ?」
「あぁ、練習だよ練習」
その疑問も彼の服装を見て納得した。
白いに胴着に黒い袴、肩には紫色の細長い布を担いでいる。彼の所属する剣道部の練習があったのだろう。
「けど、今日って部活無い日じゃなかったっけか?」
「あぁ、そうなんだけど。
もうすぐ試合も近いし、この試合が終わったら先輩達は引退だからな。
やりたい事は全部やっとかねーと」
なるほど、自主練か。
握りこぶしを作ってもう片方の手にグッと押し付けてみせる。真っ直ぐで真面目で努力家、相変わらずスポーツマン精神。外見だけで無く中身も男前だな。
「……なるほど」
「ん?」
と、隣の霞も俺と似たような反応で納得したように呟く。
何がなるほどなのかと首を傾けると、彼女はそっとこちらに口を寄せてきた。
(東堂君が女の子に人気になる理由が、改めて分かった。今の話を聞いただけで……)
(まぁ、だろうなぁ。アイツは上辺だけのヤローとは違うからな)
(貴方のような凡人と比べると、特にハッキリとするわね。その輝きは)
(………わざわざ耳打ちする辺りに悪意を感じるのは俺だけなの?)
凡人なのはは自覚してる。
進一のようなタイプとは本来全く関わり合いの無い人間なのだから、二人並べば雰囲気の違いなぞ一目瞭然。
わざとらしく口元を緩めてみせる彼女の言葉に思わずムッとしてしまう。
んな事は言われなくても自分自身が一番良く分かってる。
「けど、二人だけで何してるんだ?」
「散歩、香織達が出払ってて暫く暇だからな」
パタパタと胴着の胸元を扇ぐ進一に俺はやや大袈裟に肩を竦めてそう言った。
すると、霞がわざとらしく息をついて一歩俺から離れる。
「そう、嫌がる私を無理矢理連れ出して来たの。
更には首輪を付けさせてペットプレイを強要する始末」
「おい」
「弱みを握られて一生鎖で繋がれる運命……」
よくもまあ根も葉も無い話をすらすらと口に出来るものだ。
進一はさも可笑しそうに笑ってこちらに目を向けてくる。これは悪ノリする時の顔だな。
「なるほどな、俊也はそういうプレイが好みなのか。マニアックだな」
「二人きりになるや否や、急に高圧的でサディスティックな態度になって……」
「はいはい、勝手に言ってろ……」
隣の魔女と目の前の男前の会話に俺は肩を落とすとため息混じりに頭を掻いた。
一々ツッコんでいてもキリが無いのはよく分かっているつもりだ。
「じゃ、俺はまだ練習があっからこれで。お二人さんは“散歩プレイ”を楽しんで、な」
「お前なぁ……」
進一は布を担ぎ直すと額の汗を軽く拭って歩き出した。いやにわざとらしい笑みを浮かべながら、楽しそうに。
「じゃあな、進一」
「あぁ、またな〜」
そう声をかけると彼は背中越しにヒラヒラと片手を振って廊下を歩いていってしまう。
その後ろ姿を見送っていると、横からくいっと引っ張られる感覚。見れば霞が俺の制服のポケットに手をかけていた。
早く行こうという合図だろうか、それにしても服のポケットを引っ張るなんて意外と可愛い所も……
「酷い安物……けど貴方にはピッタリね」
「…………」
前言撤回。
いつの間にか彼女に抜き取られた財布(百均で購入)を奪い返した。
階段を降りて一階へ、校舎外へ出る為に下駄箱のある裏の玄関ホールへと向かって廊下を歩く。
「あ、藤咲君」
「ん?」
が、またしても呼ばれる声に足を止めた。
ちょうど教室の扉の前、しかしここはクラスの教室では無かった筈。扉の側に掛かった木製プレートを見上げると『美術』と書かれている。
そう、美術室だ。という事は今の声は恐らく。
「あ、桜さん」
予想通り、横を向くと教室内から机に座って可愛らしく手を振る愛華の姿があった。
俺は軽く会釈して教室に足を踏み入れる。霞も並んでそれについてきた。
「こんにちは、藤咲君。それに霞ちゃんも」
「こんにちは、愛華」
二つ並んでくっついた机にはパレットや絵筆、他にも画材のような物がいくらか置いてある。
椅子に座っている愛華の前には三本足の台に立て掛けられた真っ白のキャンパスが。
「今日は部活か……?
他に人は居ないみたいだけど」
「あ、ううん。
今日は違うけど、課題が出たから休日を使ってそれを、ね」
進一に引き続き真面目な性格だな。口元に手を当てて微笑む彼女の表情から本当に楽しんでいるという事が分かる。
「まだキャンパスは真っ白みたいだけど……どんな課題?」
「二人一組で絵を描くの。一緒に協力してね、テーマは自由だよ」
霞が小首を傾げるに彼女は机に置かれた絵筆を取ってササッと白いキャンパスをなぞる真似をしてみせた。
二人一組か。
言われてみれば愛華の席の隣にはもう一つ空になった椅子がある。
「って事はもう一人?」
「あ、うん。
つぐみちゃんとね。今は職員室に行ってるけど」
同じ美術部で彼女の友人の名前だ。
あぁと納得して頷きかけた時、教室の後ろの方からガラリとドアが開く音がする。
振り返ってみると小柄な女の子がパタパタとこちらに向かって駆けてきた。
「ごめんね、アイちゃん!ちょっと長くなっちゃって」
「ううん、大丈夫。
全然待ってないから」
その少女は顔の前に片手を立ててみせると、愛華は口元を緩めて首を横に振ってみせる。
そう、彼女が先程まで愛華と二人一組をしていた相手だ。
「あ、こんにちは!藤咲君。それと、えーと……」
机の横に立っていた俺に気付いて笑顔で挨拶してくれた。しかし隣にいた霞の方を見てすぐにきょとんとした表情に。
あぁ、そういや初対面だったな彼女と霞は。
その反応に気付いたのか、霞はそっと一歩前に出てきた。
「成條霞。
隣にいる獸に絶対服従を命じられた奴隷よ」
「え!?」
「おーい」
初対面相手に何て事を口走ってるんだコイツは。ほら見ろ、彼女もドン引きしているじゃないか。
「ジョークよ、本当はペットとご主人様の主従関係。勿論ペットは彼だけど」
「違うからな」
「嫌がる私に彼が執拗に——」
「お前どんだけ俺の株貶めたいの?」
「貴方に今更上がる株なんて無いと思っていたのだけれど」
「何ツンデレなの?私だけ独占したいっていい愛情の裏返しアピールに思っちゃうだろ終いには」
「その救いようの無い頭を糸鋸で削りたいだけよ」
真面目に自己紹介する気は無いようだ。ったく、相変わらず素直じゃ無いというか、何というか。ふと愛華の方を見ると、クスクスと可笑しそうに笑っている。それを見た彼女は少し安心したような表情になって、霞と向かい合った。
「あたしは雨宮つぐみ。今年から高等部一年生で美術部に入ってるの。よろしくね、霞ちゃん!」
「………えぇ、よろしく」
ニッコリと微笑んで手を差し出す雨宮に霞は少しだけ面を食らったような表情になるも握手を返した。彼女の純粋で裏表の無い態度にはあまり免疫が無いのか、霞のこういう表情は珍しいな。香織との初対面の時と似ているな。
「……何変な顔をしてるの?気味が悪いわ」
「いいや、別に」
視線に気が付いたのか不機嫌そうにジト目を向けてくる霞。そんな様子が少し可笑しかったが俺は首を振って目の前の少女に視線を戻す。
彼女の名前は雨宮つぐみ。
俺達と同い年で愛華と同じ美術部に所属している女の子だ。
ふわふわな茶色の髪をポニーテールにしており、若干くせっ毛で、ところどころ跳ねている。緑色の目は眠そうな感じで童顔が特徴的な美少女だ。
何より特徴的なのは凡そ高校生とは思えない程のの小柄な身長と対照的に強調されている胸だろう。
ピンクのリボンと鈴の付いた髪留めは余計に幼さを感じさせる。
本当に高校生なのか実は未だに信じられなかったりする。
「む、今失礼なモノローグが流れた気がしたよ」
「気のせいだ」
俺は彼女とはそれ程親しい友人という訳では無い。
愛華繋がりで去年顔見知りになり、時々会ったら言葉を交わしたりする程度の関係だ。
まぁ彼女は周りの評価も高く男女共に人気もあるから、自分のような人間とは深い関わり合いの無いだろう事は分かるが。
「そういや、雨宮ってどこのクラスだったんだ?」
「え?つぐみちゃんは同じクラスだよ」
「?」
愛華の言葉に俺ははてと首を傾げる。
彼女と同じクラス、そうだったか。如何せん昨日からHR時間の記憶は
「藤咲君ー、もしかして知らなかったの?」
「……最低ね」
軽く頬を膨らませて非難めいた仕草をしてみせる雨宮と冷ややかに切り捨てる霞。多分さっきの仕返しだな。
「あー、悪い。
HRの時間ってボーッとしててあんま記憶が無くてさ」
「あはは、冗談だよ。気にしてないから大丈夫!」
雨宮は全く気にしていないようでニッコリ笑ってみせた。
しかし、霞の言う通り知り合いのクラスメートを認知していないのは良くないな。以後気を付けよう。
「ところで、藤咲君達は何してるの?」
「今は休憩中だから、ちょっと散歩を。途中たまたまここに寄ったんだ」
「私が呼んだの。藤咲君にお願いがあって」
美術部でも無い俺達がここにいるのは確かに変だな。
疑問を口にする雨宮に簡単に経緯を説明すると、愛華もそう付け加えた。
「えっと、お願い?」
もしかして、私を貰って的なラブコメ街道まっしぐらの……
「ホントに救いようの無い頭ね……」
「心のボケにまでツッコミを入れなくてもいいからな」
どんだけ頭の中読みたいんだよ思わず勘違いしちゃうだろうがいやしないけども。
相変わらず油断のならない女、成條霞。それはともかく、愛華のお願いとは一体何だろうか。
「さっき言ったと思うけど、この間美術部で課題が出たの。私達、中々テーマが決まらなくて始められなかったんだけど……」
「ふむふむ」
「さっき思い付いて二人で話し合ったの、空の絵にしようかなって」
空の絵、つまり空の絵を書くということか。
彼女が空をキャンパスに描く、まさしく美術。
それはとても素晴らしいテーマだと思う。
「そりゃ、とっても良いアイデアだと思うよ」
「「本当に?」」
「うん」
俺の言葉に声を揃える愛華と雨宮。
何と言ったって、空だからな。常に自分達を一秒一秒顔を変える自然の美。
「藤咲君って、空の本とか確か持ってたよね?」
「あぁ、持ってるよ」
両手を併せて尋ねる愛華に俺は頭の中に幾つかの本の表紙を思い浮かべて頷いた。休み時間とかに良く読んでいたな、若干引かれたりしていたが。
「もし良かったら貸して欲しいんだけど、お願い出来るかな?実際に描くならちょっと勉強してみたいと思ったの」
そう言葉を引き継ぐ雨宮。
なるほど、そう言う事なら。
すぐさま承諾の意を返したのは言うまでも無い。
空に興味を持ってくれる人が一人でも増えてくれると嬉しいからな。
*
美術室の二人と別れて校舎を出た俺達はようやく目的地である学食ホールへとたどり着いた。
「あれ、今は蘭さん居ないみたいだな」
購買のレジは不在、『休憩中』と書かれたプレートが一つ。
ま、休日だからな。因みに日曜日は完全に休みだ。
「それにしても……さっきからやけに上機嫌ね」
「まーな」
空の話題が出来たから。
しかも愛華に本を貸す約束までしたし、彼女と空の話題で盛り上がれる日も近いのか。
何だか今年は良い年になりそうだな。
「不気味、雨に打たれた使い捨ての雑巾のよう……」
「再利用可能さ」
今は毒舌も何のその。
軽く流せてしまうのだこれが。きっと今日一日は調子が良いに違いない。
俺は軽い足取りで学食のテーブルに着く。霞も済まし顔で向かい側に腰を降ろすと、側にあったメニュー冊子を手に取った。
「じゃあ、ストレートティーとティラミス、生クリーム添え」
「………」
せめてうどんとか安物にしてくれれば良いものを。
情け容赦無い注文に俺は嘆かわしい視線を財布に落とす。
こういう時は男の甲斐性の見せ所だとよく香織に言われているが。如何せん財布の中身も嘆かわしい事態になっていた。
「俺は……水を一つ」
懐は冬に逆戻りを始めたのだった。
「後、頑張ってる香織達に紅茶のクッキーとカップケーキ」
「おい」
今回は俊也と霞で校内ふらふらの旅 パート1でした(笑)
霞の口調を変えたのは前書きでも述べましたが、彼女は俊也と二人で話す時は普段他の人と会話する時とはまた話し方が違いますね。
結構饒舌になる、といった感じですか。
しかし残念好感度は4というwww
今回はレフェル様からお借りしたキャラクターを登場させてみました。
ご協力誠にありがとうございました!!




