830〜閉鎖されたホテルで〜
8月30日。
今日は、お友だちといっしょに、お出かけをしました。お家から自転車でお出かけしました。しんぶん部のお友だちと遊びにいきました。お空にはお星さまがキラキラしていて綺麗でした。田んぼからはカエルががっしょうしていました。風がきもちよくて、楽しかったです。
「という感じ?」
「……どー考えてもんな微笑ましい絵面じゃないんだけど? 」
あまりにも場にそぐわない。
隣の火渡が口にした発言に、一瞬毒気が抜かれかけたがそれよりも──
「……改めて見るとヤバイなココ」
目の前の廃墟である。ヤバイってアレ、メッチャ怖いアレ的なアレ。
「いや、建物よりも穂坂先輩の方がヤバイと思いますけど……」
「…………」
くいっと、裾を引っ張られる感覚。古湊の言葉に振り返れば。
我らが部長、穂坂香織は立ったまま気絶していた。……いや、
「だ、だだだだだダイジョウブ」
ギリギリの所で辛うじて意識を保っていらっしゃった。まぁ擁護する訳じゃないが、目の前の建物を見れば誰だって怖い。が、香織のビビりっぷりは頭一つ抜けている。
仕方がないここはコイツを使うか。
「香織、これを食え」
「こ、これはっ⁉︎ 」
彼女の手に、まだ暖かい包みを手渡した。先程、ここに来る前に買ってきた……
「ロスバーガーのスパイシーチーズバーガー‼︎ 」
「それ食って大人しくしてろ」
「もぐもぐ……‼︎ 」
もう食ってるけど……まぁ気がそれたらしいから良いか。
夜の8時。町外れにある、今はもう一切使われなくなったホテルの建物だ。一昔前、具体的にはバブル全盛期頃の色々とアレなノリで作られた感じの古めかしさ。しかしながら、地域活性化の一環という建前はもう見る影もなあ。コンクリート剥き出し、ヒビ割れの目立つ壁にはだらしなくツタがへばり付いている不気味っぷり。
駐車場には荷台にガラクタが積まれたトラックが一台のみ、しかも前輪はパンクしている。
イースタン・ホテルという昭和感漂う名前の看板は、二度の修繕を経て、遂には根本からポッキリと折れて倒れていた。
「……そもそも、こんな場所に私達生徒が勝手に足を踏み入れても良いものかしら」
「ここに来て急に冷静になるのかよ……」
とはいえ霞の意見も最もである。
「問題ないっすよ、上の色々なアレに申請して許可済み」
「仕事早すぎだろ 」
「まー立ち会うはずの顧問は『サボるけど問題起こすなよテキトーに』って飲みに行きましたけど」
前々から思っていたが向井は何者なんだ……つーか顧問いたのウチ⁉︎しかも曇った鏡のような教師だなオイ。
「確かテニスサークルの顧問が掛け持ちしてるんだったな」
「いいんすか?そんなあからさまな後付け設定出してきたりして……後で変な矛盾とか起きても──」
「もう出てこないから平気さ!」
「粋先輩⁉︎ 」
サムズアップでどんだけメタな事言ってんのこの人⁉︎誰の影響間違いなくうちの部活だごめんなさい。
「ええっ⁉︎顧問って津田先生なの⁉︎」
「お前部長だろッ‼︎ 」
もうダメだなこの部。
「……俊也、ツッコミ疲れないの? 」
「良いんだよ、ローテンションばっかじゃやってけない時もある」
「? 」
はてと、首を傾げる火渡。
以上、新聞部のメンバー6人と、依頼人の古湊の7人は、廃墟を守るようにして立つ、フェンスの前に集まっているのだった(7時45分現地集合)。加えて、今回は心強い助っ人が2人。
「まーたえらく突飛な事を始めてんだなぁ」
夜風に髪を揺らしながら、前方にそびえる廃墟を眺めるのは東堂進一。うーむ、相変わらずどんな場所や風景でもこの男前は様になりやがる。
という訳で助っ人その1。
「何だか……いやに雰囲気がありますね……」
そのお隣は、その1の妹、東堂愛奈ちゃんだ。長く透き通るような綺麗な黒髪とパッチリとした黒い瞳。10人が10人振り返るであろう美貌、加えて柔らかい物腰とお淑やかな振舞い。性格の良さは言うまでもなく女神級。それが進一の妹である、助っ人その2。
「愛奈ちゃん、本当に大丈夫?」
「は、はい、大丈夫です!お気遣いありがとうございます、俊也さん」
やっぱり少し怖いのかな。それでもすぐに優しく微笑んでくれる。
これだよ!これこそが今の時代に必要な妹力だよ!これなんだよ!誰だよ。
調査の件で、まぁ色々あって俺たち以外にも人数はいた方が良いだろうという話になったのだ。
で、結局進一が協力してくれることになったのだが、不安だったのか、彼女も一緒について来たのだ。よほど兄の事が心配なのだろう……いやはや羨ましい限り。
「なーんかあたし達と対応違い過ぎる気がする……もぐもぐ」
「馬鹿は放っておきなさい」
訝しげな視線を送りつける同級生二人。とまぁ男子四人、女子四人、妹一人……あれ?この勘定の仕方いいのか?まぁいいか。ともかく、この9人で今回のクエスト『廃墟の鳴き声』に挑むことに──
「東堂先輩っ!」
なんとまぁ愛らしい声に遮られた。
「ん?あぁ、古湊さん。こんばんは」
「はい!こんばんはです〜、すみません、私の頼みに先輩をお付き合いさせてしまいまして〜」
見れば、古湊がきゃるるん☆ゆるふわパワー全開で進一にアプローチをしているではないか。……にしても露骨な擦り寄り方だなぁアレ。
「誰だあの可愛らしい後輩は」
「先輩には無縁の対応ですね」
進一の爽やかな笑顔に対して古湊の可愛さアピールの笑顔。
なんでだろう、同じ笑顔なのにここまで差異を感じるのは……
ぐいいっ。また裾を引っ張られる感覚。最近よくされるけど何なの、直接触りたくはないっていう拒絶のアレ?うそやだ泣きたいんだけどどーしよ……てかさっきよりかなり強く引っ張られてんだけどこれは。
「……俊也さん」
「え? 」
愛奈ちゃんだ。いつの間にか隣にいた彼女が、それはもう冷え冷えとした声色で、ゆっくりと、声をかけてくる。
「兄さんに擦り寄ってるあの女……いえ、あの方はどなたですか? 」
「…………」
ニッコリと。それはそれは、綺麗な笑顔で……目だけが一切笑っていない、有無を言わせぬ笑顔で。
え……うそ?え?
これってアレ?まさかのアレ?……妹√?進一くんフラグ立ててたの?いや、マジかよ嘘だろマジだよコレ。
「俊也さん? 」
「は、はいっ」
普段の優しい天使のようなあの愛奈ちゃんはどこに行ってしまったの⁉︎
「あ、えーと……あの子は、ただの後輩……多分、うん」
「ただ、の……」
とか説明してる間にも、古湊はあれこれと楽しそうにアプローチを仕掛けている。終始困惑気味の進一だが、端から見ればいちゃいちゃしているようにしか……
「へぇ……」
妹フラグ立ってる‼︎(確信)
そんな俺の心労はつゆ知らず、集まったメンバーでどのように回るかを決めることに。
「何となく、自由な感じ的なので良いんじゃないんですかね〜」
「ざっくばらん過ぎるだろお前」
古湊のまるで中身のない意見についツッコんでしまうが、頬を膨らませた彼女に「良いんですー」とあっさり返されてしまう。
「そうですね……ね、兄さん」
「え、あぁ……うん? 」
しかし、愛奈ちゃんも、お兄ちゃんの裾をしっかりと掴んで離さない。
「………」
そして笑顔の古湊と愛奈ちゃんが互いに向かい合う。オイやべーってコレ、二人とも笑顔なのに笑顔じゃない!進一は進一で全く状況分かってないっぽいし!……てか何で俺がこんなに焦ってるの?
「ふふん、こんな事もあろうかと。私があみだくじをご用意しました! 」
と思ったら、古湊がいきなり折り曲げられた紙を取り出してみせた。
つーか絶対に不正されてるだろそれ!笑顔の裏にある打算が怖い!
「いえ、それだと時間がかかってしまいますから。携帯のアプリで分けるのはどうでしょう」
「む」
止めたぁーっ‼︎
愛奈ちゃんが防いだ!しかもアプリという一目瞭然な公平さで!流石才色兼備の妹代表!
「…………」
再び笑顔で睨み……向かい合う二人。
で、結局アプリで決めることになったのだが。
「…………」
その1:進一、香織
その2:霞、粋先輩
その3:火渡、向井
その4:僕、後輩、妹
あっれ〜?おかしいな、おかしいよねコレ。
「と、ととととと東堂君!わわわ私がいれば百人力だよ!」
「いや、怖いなら無理しなくても……」
「怖くない‼︎ 」
その1が出発。続いてその2は反対側へ。
「粋、例え霊が出ても手を出したりしてはダメよ」
「いやどんな状況だよ」
「あら、幼い頃にも肝試しで貴方確か……」
「だぁーっ‼︎」
……がんばって!先輩!
「火渡先輩は霊感とかありそうですね」
「霊感はないけど霊力ならある」
「る……ルーマニア」
「アンモナイト」
「トマホーク」
「く、く、クりゅセイダー」
「あ、噛んだ」
「噛んでない」
噛み合っているようで噛み合ってないその3を見送りつつ、俺たちその4は……
「残念だったね、お兄さんと一緒になれなくて……愛奈ちゃんの案なのに」
「いえいえ、香織さん“なら”安心です。あみだくじにしなくて正解でした」
うわぁ。凄まじいや。
「あみだくじってほら、決まるまでのワクワクがあるでしょ?作る時から色々考えて……」
「その分だけ故意の誤りも介在しやすいですよね? 」
「んー、どういう意味かな? 」
「さぁ? 」
進一ぃぃいい‼︎てめっ責任とれバカヤロー!
と、天に叫びたい気持ちを抑えつつ
「あの……俺らも行かないと」
「あ、す、すみません!」
ハッとしたように顔を赤らめて、慌てて頭を下げる愛奈ちゃん。ここだけ切り取れば可愛いんだけどなぁ……
「は〜い、じゃあせんぱいっ!行きましょ! 」
全く悪びれなく、きゃるるん☆スマイルでいきなり裾を掴んでくる後輩。ここだけ切り取ってもわざとらしいわぁ……
「ほら、はやくー」
「あ、あぁ……っ⁉︎ 」
古湊に引っ張られるようにして連れてかれそうになったかと思うと、今度は愛奈ちゃんが反対の裾をギュッと掴んできた。
そして再び相見える二人。何、君たち前世が聖◯戦争でも起こしてるの?
「あの……ホント、そろそろ行かないと」
俺が死んじゃう。心労で。
以前調べた時とほとんど変わりはない。それが印象的だった。
入り口から、4組がそれぞれ二つある建物を調査する。霞と向井達四人は本棟を、進一と俺たち5人は別棟を。俺たちの範囲は別棟の3階から5階の担当だ。
「うーん、エレベーター動いてないですねぇ」
「当たり前だろ」
動いてたら別の意味でホラーだ。
「つか、お前ってこういうの平気なんだな」
「え? 」
「いや、全然怖がってるように見えねーから」
むしろ興味津々に辺りを見回ってるようにすら。中々どうしていい度胸をしているようだ。
「なんですか、怖がって抱きついて欲しいとか考えてるんですか?」
「お前に限ってそれは──」
「いやらしいです」
「ねーよッ‼︎ 」
相変わらずペースが握られてしまう。色んな意味でやりづらい相手だ。
「あ、でも。無理して強がりながらも、本当は怖くて不意にそれを見せるとかポイント高くないですか? 」
「お前は一生打算で生きてろ」
こいつはまぁ置いといて良いだろう。一方、愛奈ちゃんの方はというと……
「……っ」
「えっと、愛奈ちゃん? 」
「ふぇ⁉︎は、はい……‼︎大丈夫です!」
物凄く怖がっていた。声をかけただけで飛び上がる程度には。例に漏れず、服の裾を握りしめながら。
「気分が優れないみたいだし、一旦ここから出ようか? 」
「平気です!怖くなんて……」
無理することなんてないのだが……仕方ない、ここは原因である進一のヤローを呼び……
ガタッ。
風のせいだろうか、不意に窓が鳴った。目を硬く閉じた愛奈ちゃんが、ギュッと裾が引っ張ってきた。やっぱりこんな調子じゃ先行きが思いやられるな……
「きゃ!せんぱい怖〜いっ☆」
と、何を思ったのか、反対側からトンとぶつかってくる衝撃。
「……何してる? 」
見れば、先程まで平然としていた後輩がさも楽しそうに腕に抱き付いていた。テヘペロとばかりに舌を出して。
「いやー、びっくりしちゃった時のスキンシップですよぅ」
「やる相手が違うだろ」
「練習だからいいんです、東堂先輩の為の予行練習です」
東堂先輩、というワードにピクリと肩を震わせる愛奈ちゃん。そして二人は三度向かい合う。笑顔で。
「………」
ナルホドネ。二人のお陰で俺は冷静でいられる訳か。さて、携帯携帯……と。
「大丈夫かトシ? 」
「テメーよくもこんな状況作りやがって、来てくれてありがとう友よ‼︎ 」
「……ホントに大丈夫か? 」
救世主來たる。
原因を作ったのもこいつだが、この状況を打開出来るのもこいつしかいない。
という訳で説明。
「つー訳で、愛奈ちゃんが限界っぽいんだ……出口まで連れてってあげてくれないか? 」
そう言って後ろにいる愛奈ちゃんを親指で指す。
「そうか?随分と楽しそうに見えるけど……」
「え? 」
愛奈はニコニコと笑顔で、古湊と談笑なさっている様だった。うん、遠目から見れば談笑だな、遠目から見れば……
「つか、頼みたかったのは俺の方なんだが」
「は? 」
「穂坂が限界っぽくて……」
進一の後方では、壁に寄りかかった香織の姿が。憔悴し切っているのか、目が死んでいて今にもお経が流れてきそうだ。……取り憑かれてないコレ?
「はぁ………」
ダメだこりゃ。
という訳で。東堂班と一緒に玄関へ。行動不能になった幼馴染と友人の妹の回復させなくては。
とはいえ、女子だけをここに残していくわけにもいかないので、進一にも残ってもらう事にする。
「じゃ、俺は行くから。なんかあったら連絡くれ」
「……ホントに一人で大丈夫か?」
「大丈夫大丈夫」
「彼女達送ったらまた戻ってくるけど……」
……いや、ホントはちょっと怖いけど。男には、見栄を張らねばならない時もある。
「あ、私へーきですから、せんぱいにお付き合いしますよ」
「本当かい、古湊さん。そうしてくれると助かるけど……」
「はい! 」
と、何故かいきなり手を挙げた古湊。
……なるほど、ここでアピールして好感度を上げる作戦か。しかし、甘い。そんな姑息な手が進一に通じるとでも思っているとは……戦いとは、常に二手三手先を読んで行うものだ。青いな、小娘。
で。
「………」
訳わからん後輩と一緒に回ることになった。
「あんなんじゃ進一へのアピールにはならないぞ? 」
「む、どんだけ私のこと打算めいた人間にしたいんですかねぇ……」
「違うの? 」
「それもちょっとはありますけど……」
あるのかよ。
「でも、今回の事をお願いしたのは私ですから。それを途中で抜けるのはちょっと違うと思いますし……」
へぇ……意外にも律儀なんだな。
少し感心していると、抗議するようなジト目をこちらに向けてくる。
「なんですか……そのムカつく顔は」
「ムカつくって、仮にも先輩に向かって……」
ガタッ。
「⁉︎ 」
多分また窓が鳴ったのだろうが。
あまりにも不意を突かれて、思わず一歩を引いて後ずさってしまう。
「……くくっ」
見れば、生意気極まりない後輩が肩を震わせてる。
「……んだよ? 」
「いや、せんぱいも意外と怖がりだなーって」
「いやいや、ねーから。ビビビッてねーからさ、単に驚いただけ」
「それを世間一般ではビビってるって言うんです……あとビが一つ多い」
「ぐぬぅ……」
くっ……思わず驚いてしまったが、何だか目の前で弱みを握られたようで何故かとてつもなく悔しい。
「そーゆー所が先輩っぽくないというか、なんかそんな感じですねー」
「はッ、ぬかせ。お前のような頭がお花畑な奴に言われたかねーんだよ」
「なっ、誰がお花畑ですか!誰がっ!……大体せんぱいだって──」
あーだこーだと言い合ってる間に、一体どれくらい移動したのか。そもそもどこを移動していたのか。あまり記憶にないが気が付いたら、なんかヤケに暗い廊下の続く場所に出ていた。
「あれ、どこでしょう? 」
「なんかやけに気味悪いなここ」
あれだ、窓がないから……月明かりがほとんど入らずに……
クスッ……
「⁉︎」
ひっそりと、だが。辺り一体静かだからそれは響いてきた。
今度は窓じゃない、これは……確実に人の声だ。廊下の奥から、そっと、笑い声のような……
「ちょっ、せせせせんぱい!」
先程まで余裕をかましていた後輩も、慌てて右腕にしがみついてきた。
「今んな予行練習してる場合か!」
「違いますっ、ていうか今声聞こえましたよ‼︎声が‼︎」
「あ、あぁ……聞こえたよ確かに」
「つかお前、こーいうの大丈夫じゃなかったか? 」
「こんな状況で大丈夫な女の子なんていませんよ……‼︎ 」
そりゃそうだ。……そうか?
「い、行くんですか……? 」
「……嫌なら、帰っても良いんだぞ? 」
明かり一つないその暗闇は、まるで獲物を誘き寄せるかのように不気味に蠢いている。地獄へ引きずりこもうというかのよつに。
裾を引いて恐る恐るといった様子の古湊。流石にこれは恐ろしいらしい、やはり女の子なのだろう。
「いえ、でも……」
「無理すんなよ、」
「分かりました帰ります!」
「ごめん嘘待って帰らないで‼︎ 」
逃げだそうとした古湊の手を何とか掴む。
「何でですか‼︎言ってることと違いますっ」
「そーゆのはアレ、形式美だよっ」
「そんなことばっか考えてるから先輩はアレなんですよ! 」
ぐうの音もでない。が、怖いもんは怖いのだ。
「せんぱい!ここは男らしく一人で行って下さい!その方が好感度上がります! 」
「んな好感度いるかっ」
「ダブルアップです、大チャンスですよ……っ」
「お前さっき依頼したのは自分だとか言ってたろーがっ‼︎ 」
廊下に叫び声が反響しても、廊下は一向に明るく感じられない。いや、当たり前だが。心持ちすら少しも明るくならなかった。
クスッ……
再び聞こえてきた声に、嫌だと思いつつも視線が暗闇の奥へ向いてしまう。怖いという思いもそうだが、しかし好奇心の方が僅かに勝ってしまった。
「せ、せんぱい……? 」
古湊の腕を掴んでいた手を離し、俺の足は自然と導かれるように、その果ても分からぬ廊下の奥を目指して、おもむろに、踏み出されたのだった。
……死亡フラグになってねコレ?
一応次回で廃墟もおしまいです。長々とすみませんでした!もう少しだけお付き合い頂ければと……
では、次回もよろしくお願いします!




