さて放課後に……え、部活?
地の文がだらだらしていてテンポが悪いです。すみません。
もっと読みやすく書けるように勉強したいと思います!
では、今回もよろしくお願いいたします。
「あー以上だ。これで今日のHRを終わりだが、来週から授業も始まるので、各自教科書の用意等をしっかりしておくように」
チャイムが鳴り響く一年C組の教室。
教卓に立っていた担任の男性が名簿を閉じると、そうまとめてそろそろと教室を後にしていく。そしてそれに続くように、周りの生徒達も荷物をまとめて立ち上がり始めた。
その光景をぼんやりと眺めながら、俺は少し前から開けていた目を今一度擦って眠気を退散させる。ようやくHRが終わったらしい。これで放課後、何だか少し元気が出てきた。
まだHRが終わっただけでお昼時ではあるが、今日はもう放課後になる。初日という事で進級式とHRだけ。更に明日、金曜日も授業は無くHRとオリエンテーションのみとなっている。後に控えた土日も見据えればまだ休み感覚は抜けそうにない。
本格的な学生再開は来週からとなるだろう。いや、来年くらいにならないかなぁ……
……帰るか。何にしても今日の学校はこれで終了だ。俺は鞄を肩に担いで帰路に着く……
「行くよ、俊也!」
筈だったのだが。
いきなり首根っこをギュッと絞め上げられる感覚。こんな事をする奴はこのクラスに、いやこの学園に一人しかいまい。取り敢えず俺のこのまま帰宅して自宅でのんびりするプランは無くなったらしい。
「んで、何処に行くんだ香織」
「決まってるでしょ。部室よ、部室!」
……仕方がない、諦めてため息をつく俺は無理矢理引っ張っていこうとする幼馴染みに訊ねる。すると、彼女は当然だとばかりに教室の窓の外を指差した。
彼女の表情を見れば分かるが、もう先程の事をさっぱり気にしていないようだ。彼女のその前向きな性格は長所だと思っている。
自分からしてみればそれは純粋に羨ましい。
が、今そんな事は置いておこう。
「その前に昼飯にしたいんだけど」
「だったら、部室で食べよっ。私も一緒に食べるから」
「ま、別にそれでも良いけどな」
時刻はもうお昼時だ。
部室に行くのは構わないが、先に昼食にしたい。そう申し立てをすると、彼女はやはり窓の外の向こうを指してそう言った。そんなに急がなくとも部室は逃げないと思うが。とはいえ、部室も比較的静かだしどのみち行くのならばそれも良いだろう。
それより、いい加減掴んでる手を離して欲しい。正直言って先程からクラスメートの視線をひしひしと感じる。注目されるのは非常に苦手だ。
「相変わらずだな、二人とも」
「あ、東堂君」
俺が魔の手から逃れようとしていると、後ろから呆れたようなそれでいて可笑しそうな声が聞こえてきた。振り返ると進一が肩に学生鞄を引っ提げてこちらに顔を向けてきた。
「ちょうど良かった。
進一、助けてくれ。魔の手に捕まってんだ」
「ちょっと、誰が魔の手よっ」
俺は信頼のおけるその友人に助けを求めるが直後、後ろからポカリと頭を叩かれた。その様子を見て進一は何か物言いたげな笑みを浮かべる。何だか妙に引っ掛かる表情だな。
「いやいや羨ましいねぇ、可愛らしい幼馴染みと二人でお昼とは。この果報者め」
「そうよね。もっと言ってやってよ東堂君!」
彼の誉め言葉─どうせお世辞だ─に香織はコクコクと嬉しそうに頷く。そんなに羨ましいのならば今すぐにでも代わってやりたいくらいだ。
「お前もこれから部活か。
ちょっと早くないか?」
「あぁ、まぁそうなんだが……その前に、ちょっと寄る場所があってな」
話題を変える為に尋ねると、進一は曖昧な顔付きで頬を掻いた。
彼は俺と違って体育会系の部活に所属している。剣道部、それが彼の活動する部活動だ。運動神経は随一、部活内でもかなりの腕だそうだ。自身も部活にはいつも積極的だが、今日は妙に歯切れが悪いな。彼がこういう表情をする時は至って場合が決まっている。
「ラブレター、か」
「う……」
そう言うと進一は痛い所を突かれたように眉をひそめる。そして少し困惑したように肩を落とした。
「あ、また貰ったんだ。
流石東堂君ね〜」
「相変わらずだな。
剣道部のエースだし」
感心したように呟く香織に俺も同意してみせる。女子から人気なのはルックスや性格から言うまでも無いのだ。
てか、いい加減手を離せ。
「で、どうすんだ?受けるのか?」
「いや……」
告白を受け入れるのか、進一は力無く首を振るとジッと俺を見つめる。そして思わぬ言葉を口にした。
「俺には心に決めた人がいるんだ……」
「え?誰、誰?」
それを聞いた香織は目を輝かせて身を乗り出す。女子は大概恋愛話が好きだというが、コイツも例外では無いようだ。おかげでようやく手が離された。ああ、首が痛い。
「それは勿論……」
その間に進一はスッと人差し指を俺の前に出し、一言。
「お前だ、トシ」
「止めんかっ!!」
冗談でも止めて欲しいセリフだった。
見ろ、周りの生徒が今ので更に注目し始めたではないか。ほれ見ろ、女子生徒からこう、敵意のような視線を感じるような気が……あれ、目輝かせてない?ちょっと?「私の進一くんを奪って……‼︎」的な視線じゃないの?何で期待してるような眼してるの、皆さん?
「そうだったのね俊也……
でも大丈夫。例え貴方にそんな趣味があったとしても、私は幼馴染みとしてそれを受け入れるわ」
「じゃあ今から赤の他人になるな」
香織までわざとらしく瞳を潤ませてポンポンと肩を叩いてくる。コイツら、高等部一日目にして一体どんな状況を作り出そうというのか。
「アッハッハ、冗談だ冗談!相変わらず面白いな、二人とも」
彼はひとしきり笑った後、くるりと背を向けてサッと右手を挙げてみせた。少しギザなその行動も彼がやると様になっているな。
「んじゃあな。
また明日、トシ、穂坂」
「うん、またね東堂君!」
大きく手を振る香織と一緒に教室を出ていく後ろ姿を眺める。結局ラブレターの返事をどうするのかは聞いていないが、それは後日にでも聞くとしよう。
「ふふ、今日も賑やかだね」
「あ、桜さん」
と、愛華が優しく微笑みながらこちらに向かって歩いてきた。彼女とも同じクラスだが、何分席が離れているのが残念でならない。俺は真ん中列、彼女は窓側の列なのだ。
「でも、東堂君って告白を受け入れた事は無いんだよね?どうしてかな?」
「さぁ、実は本当に好きな人がいたりしてな」
先程までの話を聞いていたのだろう、不思議そうに小首を傾げる愛華。確かにその意見には同意するが、それより彼女の仕草の可愛らしさの方が重要だ。是非にでも写真に収めておくべきだと、冷静を装いつつ激しく思った。
「これはスクープの予感ね。今度取材を組んでみようかしら、『若き剣道部エースに女性の影あり!?』とか」
「十中八九デマになるからな、それ」
「分かってないわね、火のない所に煙りは立たない。疑わしきは調べるべきなのよ!」
「そもそも煙り立ってないから」
目を光らせる香織には何をツッコんでも無駄だろうが。
やれやれと視線を隣の愛華に向けると彼女も同意見なのか少し困ったように微笑んでみせた。
さて、教室を出た俺達は愛華と別れを告げて部室へ向かう事にした。階段を登り二階にある長い渡り廊下へ。木々の周りに円状の椅子がいくつも並び、麗らかな木漏れ日が射し込む中庭が窓の外に見える。
「うーん、中庭で食べていっても良い気はするけどなぁ……」
すると何を思ったのか、いきなり香織が俺の腕に両手を絡めてきたではないか。わざとらしく口元を緩めながら。
彼女の胸だろう、年相応な柔らかい膨らみが腕に当たった。大きさは大体Cカッ……止めておこう、モノローグとはいえぶっ飛ばされそうだ。確かにその柔らかさを感じられるこの状況は得した気分になってしまうが。しかしまた、一体何のつもりなんだコイツは。
「だったら、中庭で二人きりで食べる?
カップルみたいに♪」
聞くまでも無かった。相変わらず阿呆だな。
「部室で決まりだ」
「うわっ、酷い反応⁉︎ 」
「酷いのはお前の頭な」
あれこれと喚く幼馴染みに構わず、俺は向かい側にある校舎へそくさくと足を進める事にした。
新聞部の部室は第二校舎の最上階、四階に位置している。第一校舎の渡り廊下を使い第二校舎へと移動して、階段を二階分登って四階へと足を運べば、後は廊下を真っ直ぐ行った一番端っこに部室の扉が姿を現す。
「おはよー!」
「だから一々大声を上げるな、小学生か」
新聞部と書かれた木製のプレート。それが掛かった扉を大きな挨拶と共に開ける香織。相変わらず無駄に元気な奴だ。
扉を開けると、教室一つ分程の室内が視界に飛び込んできた。中央に四角い長テーブルが置かれており、机やテレビ、棚やその他色々と
「あ、かすみん!
おはよー!」
「香織、今はお昼。挨拶は『こんにちは』よ」
その室内の一角、机に一人の少女が本を片手に座っていた。翡翠色の髪はショートヘアに、小柄な身長が特徴的だ。香織がその少女に挨拶をすると、彼女は無表情で振り返った。その綺麗な顔立ちはクールさも垣間見える。
「あ、そっか。こんにちは、かすみん」
「えぇ、こんにちは」
しかし、香織がそう言い直すと一転してニッコリと表情を綻ばせてみせた。それを見た香織も嬉しそうに両手を併せてみせる。
「霞、お前も来てたのか」
「……俊也も居たの」
「ご挨拶だな、相変わらず……」
同じように、俺が少女に挨拶をすると彼女は再び無表情、というか寧ろ無愛想にやれやれとため息をついてそう返してきた。
この失礼極まりない少女の名前は成條霞。俺達と同学年で中等部からの新聞部のメンバーだ。背丈は結構低めだから同学年というより後輩という感じもするが、皮肉な事に成績はかなり優秀だ。
「当然。背は低くても、俊也なんかより頭はずっと良いわ」
「他人のモノローグを勝手に読むな。後“なんか”とか言うな」
「貴方は単細胞だから、すぐ顔に出るの」
「ご忠告どーも。以後気をつけます」
「俗物には無理」
ご覧の通り、中々口は悪い。特に俺に対する物言いは容赦が無かったりする。
というかその呼び方は止めろ、泣くぞ。
「俊也、失礼だよっ!
かすみんはこんなに可愛くてチャーミングなのに!」
「苦しい……」
香織は霞に飛び付くようにして抱き着いた。言葉通り霞は少し苦しそうにするも、何処か嬉しそうな表情だ。
皮肉な事に、この元気全開の女も成績は優秀だったりする。こういう性格の場合、明るく前向きだが成績は芳しくないというのがセオリーなポジショニングだというのに、全く分かっていない世の中である。
「ちょっと、何失礼なモノローグしてるのよ!」
「お前も読むな」
エスパーかコイツらは。
まぁいいか。それより時計を見ると時刻は既に1時前になっていた。
「なぁ、そろそろ飯にしないか?」
「あ、そうだった!
お昼ご飯まだだったよね」
香織はポンと手を打つと鞄からお弁当を取り出した。俺もそれに倣って今朝受け取った青色のナプキンに包まれたお弁当を
「かすみんはお昼食べた?」
「えぇ、さっき」
近くに手頃な席を見つけると、俺と香織は向かい合うように腰を降ろす。
「頂きます」
「はい、召し上がれ」
手を併せて礼を言うと彼女は微笑んで返してきた。蓋を開けると彩り豊かな弁当の中身。その中の卵焼きを一つ、箸で口に運んで咀嚼する。
「ね、ね?美味しい俊也?」
「あぁ、美味い美味い」
「もう!心が込もってない、もう一度!」
毎回の事だと言うのに、何故彼女はいつも同じ事を聞いてくるのか。
「あー、最高に美味いなぁ。やっぱり料理の天才だな香織は」
「やーね、俊也ったら。
それ程でもあるわよ♪」
何だこの茶番は。
尤も、わざわざおだて無くてもこのお弁当は本当に美味しいのだが。味、バランス、見た目、どれも申し分無いと思う。あまり公言して認めるのは癪だが。
俺は適当に返事をすると再び箸を進める事に。
うん、美味い。
「香織のお弁当、俊也なんかには勿体無いわね」
「“なんか”って言うな」
「俊也“程度”には」
「言い直すな」
机に腰掛けて本を読んでいた霞が視線を横に俺と弁当に向けて、やれやれとあからさまに肩を竦めてみせた。
しかし、彼女は何を読んでいるのだろうか。ふとその本の表紙に目をやると。
『黒占い』
コイツは占いとかそう言った類いの事が好きだったな。しかし、黒占いってのは一体何なんだ。
「知りたい?」
「いや、遠慮しとく」
怪しげな笑みを浮かべる霞を見て、軽く首を振ると弁当に戻るのだった。
*
「ふぅ……」
お昼を終えた俺は部室にあった急須でお茶を入れて一服していた。
静かな部室で優雅な一時を満期してい……
「だーかーら!!
絶対に宇宙人は居るわ!絶対に居る!」
「どうしてそう思うの?」
し、静かな部室で優雅な一時を……
「そ、それは……ともかく居るわ!!私達だって他の星から見たら宇宙人だものね!」
「生物の生息出来る惑星は地球以外だと無いというのが常識とされているけれど」
「常識は時に弊害よ。
もしかしたら、地球と全く違う構造の生態系がいくつもあるかもしれない。
ジャーナリストとして、時に当たり前の事も疑わないとね!」
「なるほど」
静かな部室で……
「ねぇ、俊也もそう思うわよね?
ちょっと、ねぇってば!!」
「だぁ!!
少しは静かに出来ないのかオメーはっ!!」
無理な注文とは分かりつつ、そう叫ばずにはいられなかった。が、立ち上がった俺に霞がジト目を向けてきた。
「俊也が一番五月蝿いわ、死んで」
「そうそう!俊也の方がうるさいよ」
彼女の言葉に香織もそうだそうだと頷いてみせるではないか。
未だ嘗て香織にうるさいと言われる事程屈辱的なことがあっただろうか。
いや、ある筈が無い。
つーか、霞さん。『死んで』は無くね?
少なからずショックを受けつつも、俺は香織達が隣り合って座る机に置いてある雑誌に気付いた。
先程からこの二人はこれについて話していたのか。
『週刊 宇宙人』
どんな雑誌だよ
「あ、皆。もう来てたんだね〜」
「「?」」
と、その時。
再び部室の扉がガチャリと開く。そうして顔を出したのは人の良さそうな青年だった。
「あ、先輩。やっほー!」
「島先輩、こんにちは」
優し気な細い目に掛けてある四角い眼鏡は少しばかりズレている。
学ランはきっちりと第一ボタンまで閉めてあるものの三番目のボタンは開いている事から、真面目そうだが少し抜けている印象が彼からは窺える。
彼を見た香織はヒラヒラと手を振り、霞は立ち上がって会釈をしてみせた。
「うん。こんにちは、穂坂さん、成條さん」
挨拶を返したこの人の良さそうな青年は島孝太郎。
明条学園三年生で俺達の二つ先輩に当たる。
見ての通りとにかく人の良い性格で人並み以上のお節介焼なのが特徴だろう。
「俊也君もこんにちは。
今日も賑やかだったね、外まで声が聞こえてたよ」
「すみません、コイツが馬鹿みたいに騒ぐもんだから」
「ちょっと!」
あははと笑う先輩に俺は頭を下げて謝罪をする。喧しい香織の無礼は幼馴染みである俺がせねばなるまい。
うるさいのが抗議の声を上げるが聞こえない振りだ。
「俊也!ちゃんと聞きなさい!」
「………」
知らん、聞こえない振りだ。
「俊也、大人しく死になさい」
「おい」
聞き捨てならない恐ろしいセリフが今度は霞から聞こえてきた。それは流石に聞こえない振りは出来ないぞ。
「あはは。皆、いつも通りだね」
先輩はニコニコと人懐っこい笑みを絶やさずに室内の中央、長テーブルの席に腰を降ろした。
「じゃあ、部活を始めようか」
「だとさ。とにかく座れ香織」
「むー」
部長の言葉に俺はさっさと座るように香織に促す。彼女は物凄く不本意そうな顔をしながらも長テーブルに移動して席に着いた。
それに倣うように霞も彼女の隣に席を移した。
部長を中心に、俺達三人は中央のテーブルに着く。
「まずは書く記事の確認と振り分け、出来たらレイアウトも考えよう」
先輩の言葉を俺達は新聞部の活動を始めるのだった。
*
「何とか間に合いそうね、新聞」
「あぁ、貴重な土日をむざむざと返上すりゃぁな」
橙色が上空一帯を鮮やかに彩り、薄く伸びた白い雲すらも茜色に染め上げている夕方。
部活を終えた俺と香織は住宅街を並んで歩いていた。
良い空だな。晴れの夕暮れは特に綺麗だ。
「新聞部なら土日くらい潰すのは当然よ!」
「はぁ……」
来週の月曜日。
それが締め切り、のようなものだ。
新聞部は二週間に一度の月曜日に朝に各クラスへ一枚ずつ新聞を出すのが目標である。
“非公式”の新聞部には締め切りなんて本当は無いのだが、今までそうやってきていつの間にかそれが決まりのようになっていた。
とはいえ、今日はまだ話し合いだけだったので完成率は無いに等しい。
幸い今日は木曜日。
明日だけでは厳しいが、そして今週土日を使えば何とか終わるだろう。
「とにかく、土曜日までに記事を仕上げれば大丈夫ね。よし、頑張るわよ!」
グッとガッツポーズを作ってやる気を見せる香織。
無駄な元気さもこういう自分を鼓舞する時とかには便利かもしれない。正直全く羨ましく無いが。
「でも、あの人数だとやっぱり少な過ぎるよな……」
明条学園新聞部。
現在の部員数は島先輩、俺、香織、霞を併せた四人だ。
たったの四人なのである。
毎年ほとんど部員が入らないような部活だ、こういった現象は珍しくない。
それでも昨年までは毎年、まだ何とか人数はいた。
昨年だってまだ合わせて7名、三つ上の代が三名も居たのだ。
しかし、その先輩方も皆この春に卒業してしまった。そして昨年の新入部員がゼロだった為、人数は減るだけとなり。
結果、部として活動を維持出来るギリギリの人数で、今の部は運営されている事になるのだ。
しかし香織はそんな自分の言葉も全く気にせずに首を横に振った。
「大丈夫!何とかなるって!」
「はぁ……」
彼女の根拠の無い『大丈夫』を聞いて俺はため息を一つ。
そうだった。
こういう事は彼女に言っても無駄だった。
まぁ確かに、自分達は部の再興や繁栄(?)を目指している訳では無い。
この物語は某野球ゲームのように潰れかけのチームを復活させて全国大会制覇を目指すようなサクセスストーリーとは程遠いのだから。
やりたい事も書きたい事もバラバラの奇妙でテキトーな部活である。
多分何とかなるだろう。
俺は迷い無く鞄からデジカメを取り出した。
風に乗った桜の花びらが茜色の空を舞ってゆく。
「ほら、空なんか撮って無いで帰って記事書くわよ!この空オタク」
「だからオタク言うな」
「じゃあ、空オタ!」
「略すなっ」
とはいえ、だ。
散々それっぽい事を述べておいて今更言うのもアレだが。
やはり一人か二人くらいは新入部員を増やした方が良くないだろうか。
無理矢理引っ張られて帰路に着く俺は、これから先の事を考えてそう思い直すのだった。
部員はこれから増やしていくつもりです。
とはいえ、サクセスストーリーでは無いので全国大会制覇とかは目指しません(笑)
俊也
「新入部員、絶賛募集中です。出来ればあの元気娘(香織)や毒舌娘(霞)の相手が出来る方だと大歓迎。
詳しくはこちらまで」
テロップなんて出ないからっ!
香織
「次回もよろしくお願いします♪」




