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すくーぷっ!!  作者: 伽藍云々
1st Semester
28/91

Long or Short?


物語もようやく五月です。四月はノロノロやってすみませんでした、これからはもう少しペースアップしたいと思います。



 


 パコーンっ。


 空気に響く、乾いた音が心地良く耳に残る。

 見上げれば5月になりたての夕暮れが橙に染め広がり、目を閉じれば爽やかな風が肌を優しく撫でるのを感じる。瞼の裏側には視界いっぱいで感じた蒼が残り、風はいよいよ耳元で囁くようにかすめてくる。


 パコーンっ。


 再び反響するその音に、グランドを歩く足は少しだけ早まっていく。目の前に広がってきたのは鮮やかな緑、人工芝を白いラインで囲うテニスコートだ。


 グランドに隣り合うテニス場、三つずらりと並んだコートの様子がフェンス越しから窺える。


「香織っ、お願い! 」


「任せてっ」


 真ん中にあるコートで一つの試合(ゲーム)が行われていた。

 飛び交うボール、反響する打球音、ネットを揺らすそよ風。

 白いテニスウェアを(なび)かせる女子生徒が四人、ラインで区切られた四角の中で舞っている。


 その内の一人、穂坂香織を自然と目は追っていた。


 ヒラリと舞う白いスカートから覗くのはスラリと伸びた綺麗な生足。芝の緑を蹴り軽やかに跳躍。白く細い腕に握られた赤いラケットが鋭く振り抜かれ、ガットのスイートスポットにボールを捉える。


 刹那、鋭い打球はネットを越えて対角線のラインぎりぎりを掠めていった。際どいラインイン、しかもかなりのスピードだ。

 

「やった! 」

「ナイスッ、香織! 」


 香織とペアの女の子が互いに駆け寄って軽くハイタッチ。どうやらこの試合、ダブルスは香織達のペアの勝ちらしい。


 と、香織がこちらの視線に気付いたのか、振り向けばピタリと視線が合う。

 嬉しそうに微笑んでVサイン、『勝ったから何か奢ってね』と瞳が語っているように思えた。



 今、このテニス場では三つあるコートではそれぞれ様々なウェアを身に付けた女子生徒達。

 活動しているのはテニス部では無く、テニスサークルだ。女子テニスサークル、同好会とも言う。


 我が明条学園には大学のように体育会の部活とサークルに分かれたものが幾つかある。本気で競技に取り組みたい人は部活へ、掛け持ちや時間はあんまり作れないけど競技を楽しみたい人はサークルへ、といった感じだ。

簡単に言えば部活は厳しく、サークルは部活よりはゆるい。


 で、現在香織はその女子テニスサークルに来ている訳だが。彼女は別にサークルに正式に所属している訳では無い、でも放課後たまに─月に数回あるかないかくらいだけど─活動に参加したりしているんだ。

 そもそも、このサークルは基本的に“誰でも来たい時に来ればOK”なスタンスだから、正式に入るとかそんな概念自体も曖昧なんだけど。

『定期的に運動しないと太っちゃうから』とか何とかよく宣っているから、ふと運動したくなった時に行く感じだ。それはテニスサークルに限った話でも無いんだけどね。


 彼女のテニス経験はたまに行くこのサークルだけなのだが、持ち前の運動神経の良さから彼女より長くテニスをたしなんでいるサークルの女子生徒達─無論、サークルなので初心者もいるが─にも負けないプレーをしているのだ。

 



 あー、因みに。

 俺は今、こうしてフェンス越しに“女子”テニスサークルを眺めているが、別にやましい目的があって来た訳じゃ無い。まぁ、さっきから翻る様々なスカートが気にはなってるけど、それは不可抗力である。

 

「なぁなぁ、穂坂の、今見えたよな?」

「スカートの中もアンダーウェアだろ、俺はあの生足の方が……」

「バカッ、どっちも良いんだって」


 ………丸聞こえだっての、いや気持ちは分かるけれども。

 すぐ隣、同じようにフェンス越しでこそこそやっている学ランの男子生徒が三人。胸元のエンブレムから同学年だと分かる。

 彼等が誰をどんな目で見ていたのかは会話から明らか。視線の先には今度は違うペアと試合をしている香織が、打球を返す度にヒラリと危なげに揺れるスカートにスラッと伸びた太ももが露になる。


「………」


 見られているのが香織だと考えると、何故か気分が悪くなるように感じて彼等から離れた。

 いや、近くに居て周りから同類視されたら堪ったもんじゃないからだ。俺はサークルを覗いている訳じゃ無い、単に香織を待っているだけ………あの茶髪のポニーテールの娘可愛いな。おっ、今ウェアのスカートがフワリと浮かび上がって。ああ、なるほど。下はかなり短いウェアだけど、それが逆に良いのかもしれない。太ももなどがより強調されるというか、簡単には手に入らないからこそ魅力が光輝くというか………コホン、えー、つまり覗きとか全然全くこれっぽっちもしていない訳だ。棒読みなんかでは決して無いぞ、うん。


「で、俊也はどの娘が好みなんじゃ? 」


「うーん、私的にはあのポニーテールの娘とか……」


「あぁ、確かに可愛いな。藤咲はあの娘がタイプなのか? 」


「いや、別にそういう訳じゃ無いけど……」


 って、俺は一体誰と話しているんだ。

 ハッと気付けば両隣には見知った顔が一つずつ、俺を挟むようにしてフェンスの向こうを眺めていた。


「お前らいつの間に……」


「たった今だよ」

「つい今しがたじゃ」


 右側はクラスメートの弦、左には剣道部の田中。全く気配を感じなかった、いや別にどこぞの暗殺者のように気配に敏感な訳じゃないけどさ。


「しかし、放課後に堂々と覗きなんて、流石だな藤咲」


「あのな、俺がそんなサークル敵に回すような真似出来る訳ねーだろ」


「けど、あのポニーテールの娘見てただろ? 」


「………」


 まぁ確かに目に入ってはいたけどそれはあくまでも偶然というか、何というか。ともかく故意じゃない……と思う。

 なんて考えて黙っていたら弦がポンポンとやや強めに肩を叩いてくる。


「カッカッ、男の(さが)でもあるからの。恥ずかしがる事もなか」


「だから違うって。

俺は香織を待ってるだけだよ」


 田中がハッとしたような表情になってこちらに振り返ってきた。


「え、穂坂?テニスサークルに? 」


「あぁ、たまにだけど参加したりしてんだよ」


 ほら、と親指を向けた先には楽しそうにダブルスの試合をこなす幼馴染みの姿。田中は勿論、弦も真ん中のコートを見て。


「本当じゃ!凄いのぉ、香織はサークルも掛け持ちしてるんか」


「掛け持ちっつーか、たまに遊びで来てるだけだけど」


「おぉ、上手いもんじゃのぅ! 」


 鋭いストロークがラインぎりぎりのボールを捉える。

 打球を返す度に、サファイア色の髪が揺れて夕日に光り、白いスカートがふわりと浮かぶ。素早くボールを捉える瞳と真剣な表情は純粋にカッコイイと思う。


「………」


 田中の視線は暫くフェンスの網目の向こう側、真ん中のコートに熱心に向けられていた。

 やっぱり好きなんだなと、こうして見ると改めて感じる。近々の宣言通り、田中は本当に告白をするつもりなんだろうか。したとして、香織(あいつ)はどんな返事をするんだろうか。

 俺にはそんな光景自体が全く想像出来ない。彼女と恋愛とが、今までの俺の中で結び付いた事が無いから。それを考える事に違和感にも似た感情が先行してしまう。

 でも、もし彼女が告白を受け入れたら……


 そこまで考えて、反射的に内心で首を振った。それについてどうこう言える義理なんて俺には無い。本人達の問題で、俺がいくら考えても仕方のない事なのだから。

 ただきっと、今まで喧しかった隣が急に静かになってしまうだけで……


「俊也、どうしたんじゃ? 」


「え? 」


 我に返ると、いつの間にか弦がこちらを覗き込んでいた。


「大丈夫かの? 」


「あ、あぁ。

悪ぃ、ちょっとボーッとしてた」


 柄にも無い、こんな事で考え込むなんて。まだ香織の事を見つめているであろう田中には構わず、一旦茜色を見上げて思考をリセットする。


「そういや、二人は何でまた一緒に? 」


「あぁ、さっき下駄箱で会って。剣道部までちょっと時間あったからちょっとぶらぶらとな」


 ようやくフェンスから視線を外した田中が後方にある校舎を指差す。そういえば今日は剣道部の練習時間が短いとか進一がぼやいてたな。


「部活は何時から? 」


「えーっと、後15分くらい」


 現時刻17時12分。という事は半から始まるのかな。


「だったら、もう武道場行に行くのか? 」


「あぁ、うーん……」


 田中は軽く頷きつつも、フェンス越しの視線を外す事はしない。

 やはりまだ見ていたいのだろうか、余計な事は言わずにそっとしておこう。


「ところで、俊也はここで何をしとるんじゃ、帰らんのか? 」


「あー、一応香織(あいつ)待ってるから。勝手に帰ると何か色々言われそうだし……」


「おー、二人は相変わらずじゃのぅ」


 さっきまでたった一人で部室にいたんだけど。ずっと数学の教科書とにらめっこして時間を潰してたな。


「そういえば、今日は部活はどうしたんじゃ? 」


「今日は休みだよ、今朝ようやく新聞も出せたしな」


 だから香織はあんなに楽しそうに運動しているんだ。まるで期末テストから解放された時のように。


「新聞……おぉ、確か今朝に出てたの。ワシはまだ見とらんが」


「ま、別に見なくたって困るもんでも無いけど。俺もまだ見てないし」


「それ、香織に言うたら思い切り怒られるじゃろ」


「………」


 

 なんてとりとめの会話を交わして時間を潰す。ともあれ、部活の時間が来てしまった田中は悔やみつつ武道場へ、弦ともその数分後に別れ、また一人フェンスの前でぶらぶら。

 結局サークル自体が終わったのは5時40分過ぎ、香織が部室から出てきた時には更に15分程経っていた。


「なんだ、着替えたのか」


「当然でしょ、汗かいちゃっただもん」


 それもそうか。

 制服姿に戻ってしまった彼女がこちらを不思議そうに見つめ返してくる。


「あれ、ウェアの方が良かったの? 」


「うーん、露出の高さという観点から言えば。制服より短いスカートは更にくるものがあるといえばあるような気が……」


「うわっ、俊也やらしいなぁ」


 ジョークの通じない奴だな。いや、あながち冗談でも無いんだけど。

 まぁそれはともかく、そのまま帰路には着かずに寄り道がてらに俺達は学食へと歩みを進める事にした。



「人居ないな、今日学食休みだったっけ? 」


「昼はやってたけど……でも何か良いよね、貸し切りみたいで」


「学食貸し切ってもなぁ」


 放課後にも関わらず学食はガラガラ状態、というか学食の受け付けは無人だった。


「帰る? 」


「ん、購買で何か買おうかな。ちょっとお腹空いちゃったから」


 ともあれ、取り敢えず真ん中にあるテーブルに座る。辺りを見回すとやはり人気は無い、つーか学食ってこんなに広かったんだなぁ。


「……俊也って、長い髪の女の子が好きなの? 」


「? 」


 唐突に何だコイツは。

 恐らく怪訝であろう表情を向けるも、彼女の方からはそれより更に訝しげな視線が返ってきた。


「さっきもポニーテールの娘とかばっかり見てたから」


「…………」


「ジーッと目で追ってたもんね、ちょっと嬉しそうだったし」


 あっさりバレていたではないか。やはり、10年来の付き合いは伊達じゃないという事か。


「愛華だって長い髪だし、それに東雲先輩だって長くて綺麗な髪だし」


 愛華はともかく、そこで何故東雲先輩が出てくるのか。頑なに俺に長い髪が好きと言わせたい、という風には見えないが。

 

「別に、そういう訳じゃ無いけど……」


「そう? 」


 寧ろ、どちらかと言えば短めの髪の方が好きかもしれない。そもそも髪型で好みを決めるなんてあまり考えた事が無いのが正直なところだけど。


 香織はどこか釈然としないような表情で、自分の髪に軽く触れながら指でそっともてあそぶ。


「……ねぇ、私が昔みたいにポニーテールとかにしたらどうかな? 」


「は? 」


 また唐突な質問を。偶々ポニーテールの話が出たからふと思い出したとかそんな程度の理由だろうけど。


「………」


 しかし、ポニーテールか。かなり印象は変わりそうだ、まぁ田中とかは喜びそうではあるけど……


「あー、はいはい。

どうせ私には似合いませんよっ、悪かったわね変な事聞いて」


「まだ何も言ってないだろ」


「……そういう顔してるもん」


 正直、彼女は今の髪型が一番似合ってると思う。それがずっと見てきた慣れなのか、髪を伸ばした彼女をイメージしにくいという理由もあるけど。それよりもっと直感的な部分の話で……


「でもまぁ、長いと大変だから私もこのままが良いけどさ」


「なら良いだろ」


「……けど、何か俊也に言われるとムカっとくる」


 俺が何をした。


「でも確かに、小さな頃は長かったんだよな」


「この間も話した」


「あぁ、そうだけど……」


 何故か先程から機嫌が芳しくない方向にいっている気がするけど、まぁこの際それはさておいて。俺は今疑問に思った事を口にする。


「何で? 」


「え? 」


「何で短くしたんだっけか」


 数年前といえば最近と捉えるのが一般的だが、それにしたって小学生の、しかも低学年の時の話だ。そうそう覚えているものでも無いだろう。


「はぁ……」


 何て自分を納得させていると、やや大袈裟にため息をつく幼馴染み。表情には残念そうな色が見て取れる。


「ま、俊也だもんね……

期待する方が間違いだったかも」


「預かり知らぬ事についてとやかく言われてもな」


「思い切り当事者なのっ!ばかっ」


 らしい。

 まさか俺が切ったとか言い出すんじゃ無いだろうな。


「だから何の? 」


「それは……」


 途端に言い淀んでしまう香織。

 俺としては残念ながら覚えている事が無いので、答えを促すしか術が無い。


 とか思っていたら、突然むんずと頭部に圧力がかかってきた。


「なーに堂々とラブコメってんだぁ藤咲……」


 ほぼ同時に、真後ろからえらく聞き覚えのある声が。心なしか少し怖い意を含んだ声色で。


「ど、どーも、藍さん」


「どーも、じゃないだろ全く」


 振り返るまでもまでも無い、というか頭を押さえつけられて振り返れない。かと思えば、視界には不貞腐れた表情をなさる藍さんが。


「人が暇してる前でイチャイチャしてからに……

それはアレか、独り身の私に対する当て付けか? 」


「いやいや……」


 挨拶もそこそこに、いきなり勘違いも甚だしい。


「そんな事一言も言って無いって。ただ話してただけだよ」


「あぁ、あぁ、何とでも言ってな。後々分かるのさ、今の時期が一番輝いていたんだって」


「はは………」


 というか、そんな事ばかり言ってたらどんどんおばさん臭くなってしまうと思うのだが。


「藤咲、今思ってた事、そのまま口に出してみな」


「すみません何でもありません勘弁して下さい」


 即謝罪。

 ギロリと、普段以上に鋭い目付きでこちらを捉えられては堪ったものではない。


「ほぉ、謝るような事を思ってたってか」


「い、いやいや!!

藍さん、まだまだ若くて綺麗だなぁって! 」


「………」


 ただならぬその迫力に気圧される俺はまさに(へび)に睨まれた(かえる)。ここで頷く勇気は流石に持ち合わせていない、誰だって命は惜しいだろ。


「ま、そういう事にしといてやるか……」


 間一髪、危機的状況だったが何とか一難が去った。


「で、何だか不機嫌そうだな穂坂」


「……別に、そんな事は無いですけど」


「その顔見てりゃ藤咲の事ってのは何となく分かるけどさ」


 何故俺だ。


「ま、藤咲にそういう事期待するのは難しいだろ」


「はぁ……やっぱり、そうですよね」


「コイツはアレだからな」


「分かってはいるんですけど……何か癪というか」


 既に分かり合ったかのように頷き合う藍さんと香織。女というのは言葉以外の意志疎通手段を多分に持っているのだろうか。

 話題の中心にいるにも関わらず蚊帳の外である俺はお冷やを啜って暫し時間の経過を待つ。


「そういえば藍さん、今日何でこんなに空いてるんですか? 」


「あぁ、明日からゴールデンウィークだからね。

大方、家で明日からの予定とか立ててんじゃないのか」


「あぁ!ゴールデンウィーク!! 」


 今思い出した、とばかりに立ち上がり声を上げる香織。言われてみれば明日からだと俺もぼんやりと頭の片隅に浮かんできた。


「俊也っ、明日からだよゴールデンウィーク!! 」


「今聞いた」


「どうしよう、何にも予定とか立てて無かった……」


 それは俺も同じだ。


「アンタ達、ゴールデンウィークの記事書いてたろーに……」


「あはは……

新聞作るのにいっぱいいっぱいで、肝心な事忘れちゃってました」


「ったく、社会人じゃあるまいし……学生時代からそんなんでどうすんだか」


 ゴールデンウィークは明日からの四連休だ。ゴールデンというからにはドーンと七連休くらい欲しい所だけど。


「そういや、藍さんは何か予定あるの? 」


「あたし?

まぁ、旅行とか行こうって話はあるけど……」


「やっぱり一人で? 」


 ピシリっ、大気に亀裂が入ったような気がした。


「藤咲……

今すぐ謝るなら(あご)砕くのは勘弁してやるが? 」


「全面的に俺が悪かったと思ってます」


 下手な軽口は控えた方が良さそうだ。


「ね、俊也。

皆の予定ってどうなってるのかな? 」


「さぁ、家の予定とか入ってるって話は聞いてないけど。ただ、進一はゴールデンウィーク全部部活とか言ってたな」


 部活の為だろうが何だろうが、四連休全部返上なんて俺にしてみれば拷問にも等しい。


「あ、だったら皆誘って遊びに行こうよ!」


「何処に」


「それは……今日中に決めるって事で」


 『愛華、つぐみちゃん、かすみん、後弦くんとか』と指折りメンバーの案を出してゆく。


「その前にちゃんと確認しろな」


「うん、今日聞いてみるつもり」


 大分行き当たりばったりっぽいなぁ。彼女らしいと言えば彼女らしいけど。


「何だぁ穂坂、ホントは藤咲と二人きりで出掛けたりしたいんじゃないのか? 」


「え?

二人より皆の方が楽しいと思いますけど……」


「……相変わらずからかい甲斐の無い反応だな」


 やれやれと呆れとも似つかないため息をつく藍さんとは対照的に小首を傾げる香織。

 あらぬ誤解だな、自分は敢えて黙っている事にした。


「ま、何でも良いか。

それで?何か買ってく? 」


「あ、じゃあ私は……」



 結局、藍さんの購買でテキトーに小腹を満たすと、30分程度話して香織と学食を後にした。


「くしょんっ!! 」


「俊也、風邪? 」


 不意にくしゃみ。直後、足元から来る悪寒に堪らず身震いをした。


「いや、そんな事は無いと思うけど……」


「もしかしたら、誰かが噂してるのかもね」


「例えば? 」


 うーん、と腕を組んで思案に拭ける香織。噂でくしゃみをするなんて迷信一体誰が考えたんだろうか、良い噂と悪い噂で反応が違ったりするのか。


「……で、結局俊也って長い髪と短い髪、どっちが好きなの? 」


「………」


 ついに思い付かなかったのか、早々に諦めて学食での話にいきなり切り替えていた。話を振った以上もう少し考えてくれても良さそうなものだが。


「だから、んな事聞いてどうすんだよ」


「分からないけど、何か気になるんだもん……幼馴染みとして」


 その幼馴染みは何故か不満気に頬を膨らませる。その仕草にちょっと可愛いと思ってしまったのは内緒だ。


「ずーっと長い髪の娘ばっかり見てたし……

あ、でも俊也の持ってるエッチな本には短めの女の子ばかり載ってるよね」


「なっ」


 その件に関してはノーコメントとさせて頂きたい。つーか、エロ本の所在がモロバレなのはいかがなものか。


「さ、先行くぞ」


「ちょっと待ってよ! 」


 質問は無視、ちょっと慌てて一人正門前の坂道を下る。桜もすっかり散った並木は新緑の壁が徐々に形成されつつあった。橙色の木漏れ日はどこか幻想的に坂道を彩り、いつもよりちょっとだけ贅沢な下校時間を演出している。


「……くしょんっ!! 」


「あ、二回だから良くない噂かも……」


「………」


 何故かお前が本気で心配そうな顔をするんだ、たかがくしゃみで。

 

「俊也、今日は外に出ちゃダメだからね」


「何だよいきなり」


「誰かが俊也を狙ってるかも知れない。もしかしたら、世界を裏で支配する組織が動き出して……」


 その後、彼女お得意の陰謀論を永遠聞かされながら帰路に着く事に。頭が痛くなった、色んな意味で。




5月に入りました。本当にノロノロやっていてすみません、もう少しテンポを上げていきたいと思います。

さて、今回ですが。

香織がテニスサークルにいましたが趣味がテニスという訳では無く、気軽に運動出来る団体というのが女子テニスサークルだったという話ですね。

運動神経は極めて良い彼女なので、大抵の事はある程度数をこなせばすぐに上達しちゃいます。

羨ましいですね、自分は運動が苦手なので(体育会のくせに)


そんな彼女だって髪型を変えてみようかな、なんて思うお年頃。それは一体何の為か……

昔はポニーテールという設定ですが、今の肩にかかるかかからないくらいの長さ(ToLoveるのモモが彼女の髪型がイメージ)になったのはちょっとした昔話があったりです。

『彼女との思い出3』くらいでやるかと思います。




余談ですが。

ちょっと『すく〜ぷっ!!』メンバーのイメージCVを個人的に考えてみました。

あくまで一時的で個人的な見方なので、今後考えはいくらでも変わるかもしれませんが、現時点でのイメージはこんな感じかなと。


ついでに、以前活動報告で載せたキャラクターの外見イメージも載せてみようかと思います。




藤咲俊也

・外見イメージ:長瀬準一(あかね色に染まる坂)

・イメージCV:木村良平さん(ロボティクスノーツ:八汐海翔)



穂坂香織

・外見イメージ:モモ・ベリア・デビルーク(ToLoveる)

・イメージCV:喜多村英里さん(CHAOS:HEAD:咲畑梨深)



桜愛華

・外見イメージ:呉羽冬華(シャイニングウィンド)

・イメージCV:堀江由衣さん(シャイニングウィンド:呉羽冬華)



成條霞

・外見イメージ:白石なごみ(あかね色に染まる坂)

・イメージCV:芽原実里さん(D.C.Ⅱ:白河ななか)



白ノ宮妃希

・外見イメージ:藤堂リリシア(紺碧学園生徒会シリーズ)

・イメージCV:能登麻実子さん(生徒会の一存:藤堂リリシア)



東雲明日菜

・外見イメージ:東雲皐月(恋と選挙とチョコレート)

・イメージCV:高本めぐみさん(WHITE ALBUM:澤倉美咲)



取り敢えず主人公と主要女子陣のイメージを考えてみました。前述した通り主観的な感覚なので、また変わったりするかもです。


では、次回はゴールデンウィークになりますが……主人公に地味な災難です

よろしくお願いいたします!

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