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婚約破棄したら、俺が一番問題でした

作者: 黒の課長
掲載日:2026/10/23

「お前とは婚約破棄だ、メアリー!」


 大勢の貴族が見守る中、第一王子アルフレッドは公爵令嬢メアリーを指さした。


「何故ですの……? アルフレッド様」


メアリーが儚げに尋ねてくる、だが騙されない。


「決まっているだろう! 夕方になるとうっすら青いヒゲが生えてくるからだ! お前、男だろう!?」


「そんな……! 私は貴方の為に、毎朝一生懸命シェービングを……っ!」


 努力の方向性がおかしい!

 俺は溜め息をつき、壇上に座る両親を振り返った。


「父上、母上、流石にこれはダメですよね? 男とは結婚できません!」


すると、国王である父上が重々しい口調で告げた。

「アルフレッドよ、実は……お前の母上は男なのだ」


「……はい?」


「そして、お前は………私の子供ではない」


「どういうことだよっ!?」


 思わずタメ口で叫んでしまった、父上は何を言っているんだ?


「静まるのだアルフレッド。お前の母上は……元魔王なのだ。そして私は……元勇者だ。かつて死闘を繰り広げる中で性別を超え、私は魔王を愛してしまったのだ」


「おい待て、ツッコミどころが多すぎる!! 母上が魔王で父上が勇者!? っていうか男同士なら俺は誰の子なんだよ!!」


その時、しとやかに微笑んでいた母上(元魔王)が口を開いた。

「お前はね、私の口から『卵』で産まれたのだよ」

「卵ぉぉぉーーーっ!?」


「そう、お前は魔王の血を継ぐ者……真の魔王なのだ!」

「なななな、なんだってーーー!?」



会場が騒然となったその瞬間、騎士団長が剣を抜いて飛び出してきた!

「魔王の生き残りだと!? 世界の平和の為、生かしてはおけん! 死ねぇ、アルフレッド!」


「ひえっ……! 助け――」


 殺気立った騎士団長の剣が迫った……その瞬間!

死の恐怖によって、俺の中に眠る『魔王の血』が暴走を始めた。

『グオォォォオオオッ!!』

「ぬああああっ!?」


 王子の体から溢れ出た『邪悪な魔力』が暴発し、騎士団長は吹き飛ばされ壁に激突した。

 

全身が黒いオーラに包まれ、意識が闇に呑まれかける。

(や、やばい……身体が勝手にっ……! 人間を滅ぼしたい……衝動……が……っ!)



……その時だった!

「目を覚ましなさいッ!! このおネエ令嬢を忘れたのですかーっ!!」


 ドガァァァン!!!


「ぶはぁぁっっ!?」


 メアリーの渾身の右ストレートが俺の顔面に直撃した。

 重戦車のような重みである。


「目を覚ませ我が息子よ! 元勇者パンチ!!」

「愛のムチだよ! 元魔王パンチ!!」


ドカァッッッ!!  バキィッッッ!!


「ぐえええぇぇぇーーーっ!?」

父上と母上の容赦ない一撃が叩き込まれ、魔王の力は一瞬で鎮火した。



……しかし、威力が高すぎた。

「あ……アルフレッド様……? 返事をしてください……アルフレッド様ぁぁぁ!」


 膝から崩れ落ちる王子、視界が真っ白に霞んでいく。

 (あれ……は……三途の川………?)

 あ、これ死んだわ……身内の物理攻撃で死んだわ。



 そこに泣いてるメアリーの涙のしずくが、俺の頬にぽたり……と落ちた。

 その瞬間! 奇跡の光が王子を包み込んでいく!!


『シャキーン』


「……はっ! 俺は……い、生きている!?」


「アルフレッド様! おネエの涙(愛の力)で蘇られたのですネ!」



 光の中から立ち上がった俺の耳に、どこからともなく軽快なオーケストラの重奏が聞こえ始めた。


 照明が落ち、スポットライトが王子とメアリー、そして国王夫妻を照らし出す。


「♪〜(ジャジャーン!)」

メアリーがドレスの裾を翻し、ステップを踏み始めた。

「男だって〜 卵産みだって〜 愛があれば〜 関係ないわ〜♪」

「勇者と魔王が手を取り合って〜 世界は今日も平和〜♪」


父上と母上も腕を組み、華麗にタップダンスを踊る。

「婚約破棄から〜 始まるハーモニー〜♪」

「さあ皆で歌おう〜 家族のカタチは無限大〜♪」


王子もつられて手を広げ、歌い始める。

「俺の母上男だけど〜 卵で産まれた魔王だけど〜 今日も我が家はハッピーエンド〜ッ!!」


 最前列の騎士団長達が、涙を流しながら叫ぶ。


「「「「ブラボーーーーッ!!!」」」」



 舞台に響き渡る、拍手とカーテンコール。

こうして、よく分からないが全ての問題は歌と踊りで解決し、私達は幸せに暮らしましたとさ。



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― 新着の感想 ―
 黒の課長さん、こんにちは。 「婚約破棄したら、俺が一番問題でした」拝読致しました。  婚約者が、男。そりゃ、婚約破棄だわ。  え? 母上が、実は男?  俺って、父上の子供じゃないの?  勇者と魔…
婚約者である公爵令嬢だけではなく、国王夫妻も第一王子本人も様々な秘密を抱えていたのですね。 とはいえ無事にまとまれば、極めて多様性に寛容なロイヤルファミリーの出来上がりですね。
私の想像の中にあることは1つもありませんでした(笑) こういう勢いだけでもっていくお話は結構好きです(^^) 新鮮で楽しいお話ありがとうございました!
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