婚約破棄したら、俺が一番問題でした
「お前とは婚約破棄だ、メアリー!」
大勢の貴族が見守る中、第一王子アルフレッドは公爵令嬢メアリーを指さした。
「何故ですの……? アルフレッド様」
メアリーが儚げに尋ねてくる、だが騙されない。
「決まっているだろう! 夕方になるとうっすら青いヒゲが生えてくるからだ! お前、男だろう!?」
「そんな……! 私は貴方の為に、毎朝一生懸命シェービングを……っ!」
努力の方向性がおかしい!
俺は溜め息をつき、壇上に座る両親を振り返った。
「父上、母上、流石にこれはダメですよね? 男とは結婚できません!」
すると、国王である父上が重々しい口調で告げた。
「アルフレッドよ、実は……お前の母上は男なのだ」
「……はい?」
「そして、お前は………私の子供ではない」
「どういうことだよっ!?」
思わずタメ口で叫んでしまった、父上は何を言っているんだ?
「静まるのだアルフレッド。お前の母上は……元魔王なのだ。そして私は……元勇者だ。かつて死闘を繰り広げる中で性別を超え、私は魔王を愛してしまったのだ」
「おい待て、ツッコミどころが多すぎる!! 母上が魔王で父上が勇者!? っていうか男同士なら俺は誰の子なんだよ!!」
その時、しとやかに微笑んでいた母上(元魔王)が口を開いた。
「お前はね、私の口から『卵』で産まれたのだよ」
「卵ぉぉぉーーーっ!?」
「そう、お前は魔王の血を継ぐ者……真の魔王なのだ!」
「なななな、なんだってーーー!?」
会場が騒然となったその瞬間、騎士団長が剣を抜いて飛び出してきた!
「魔王の生き残りだと!? 世界の平和の為、生かしてはおけん! 死ねぇ、アルフレッド!」
「ひえっ……! 助け――」
殺気立った騎士団長の剣が迫った……その瞬間!
死の恐怖によって、俺の中に眠る『魔王の血』が暴走を始めた。
『グオォォォオオオッ!!』
「ぬああああっ!?」
王子の体から溢れ出た『邪悪な魔力』が暴発し、騎士団長は吹き飛ばされ壁に激突した。
全身が黒いオーラに包まれ、意識が闇に呑まれかける。
(や、やばい……身体が勝手にっ……! 人間を滅ぼしたい……衝動……が……っ!)
……その時だった!
「目を覚ましなさいッ!! このおネエ令嬢を忘れたのですかーっ!!」
ドガァァァン!!!
「ぶはぁぁっっ!?」
メアリーの渾身の右ストレートが俺の顔面に直撃した。
重戦車のような重みである。
「目を覚ませ我が息子よ! 元勇者パンチ!!」
「愛のムチだよ! 元魔王パンチ!!」
ドカァッッッ!! バキィッッッ!!
「ぐえええぇぇぇーーーっ!?」
父上と母上の容赦ない一撃が叩き込まれ、魔王の力は一瞬で鎮火した。
……しかし、威力が高すぎた。
「あ……アルフレッド様……? 返事をしてください……アルフレッド様ぁぁぁ!」
膝から崩れ落ちる王子、視界が真っ白に霞んでいく。
(あれ……は……三途の川………?)
あ、これ死んだわ……身内の物理攻撃で死んだわ。
そこに泣いてるメアリーの涙のしずくが、俺の頬にぽたり……と落ちた。
その瞬間! 奇跡の光が王子を包み込んでいく!!
『シャキーン』
「……はっ! 俺は……い、生きている!?」
「アルフレッド様! おネエの涙(愛の力)で蘇られたのですネ!」
光の中から立ち上がった俺の耳に、どこからともなく軽快なオーケストラの重奏が聞こえ始めた。
照明が落ち、スポットライトが王子とメアリー、そして国王夫妻を照らし出す。
「♪〜(ジャジャーン!)」
メアリーがドレスの裾を翻し、ステップを踏み始めた。
「男だって〜 卵産みだって〜 愛があれば〜 関係ないわ〜♪」
「勇者と魔王が手を取り合って〜 世界は今日も平和〜♪」
父上と母上も腕を組み、華麗にタップダンスを踊る。
「婚約破棄から〜 始まるハーモニー〜♪」
「さあ皆で歌おう〜 家族のカタチは無限大〜♪」
王子もつられて手を広げ、歌い始める。
「俺の母上男だけど〜 卵で産まれた魔王だけど〜 今日も我が家はハッピーエンド〜ッ!!」
最前列の騎士団長達が、涙を流しながら叫ぶ。
「「「「ブラボーーーーッ!!!」」」」
舞台に響き渡る、拍手とカーテンコール。
こうして、よく分からないが全ての問題は歌と踊りで解決し、私達は幸せに暮らしましたとさ。




