言動と心が一致しないメスガキさん ~バレンタインデー編~
二月十四日。
教室は朝からざわざわしていた。
「チョコ、何個もらった?」
「え、まだゼロなんだけど……」
「うわ、かわいそ〜」
そんな会話が飛び交う中──
透は、机に突っ伏していた。
(……関係ない。僕には関係ない。どうせ今年もゼロだし。
そもそも期待するだけ無駄だ……)
そこへ、足音が近づく。
「おっはよ~、ザコくん」
(おはよう透くん!! 今日こそ渡す!! 絶対渡す!! 昨日の夜、三時間かけて作ったんだから!!)
「……おはようございます、蓮菜さん」
(なんでこいつはいつも通りなんだよ……バレンタインだぞ……少しは空気読めよ……)
萌留は、透の机の横に立ち、ちらっとカバンの中を見た。
(今!! 今渡す!? いやでも朝イチは重い!? でも他の女子に渡される前に渡したい!!
どうしよどうしよどうしよ!!)
「……なにしてるんですか」
「べっつに~? あんたにチョコなんて渡すわけないじゃん?」
(渡す気満々です!! むしろ渡したくて死にそうです!!)
「言ってないですよ……」
(なんでわざわざ否定するんだよ……期待しちゃうだろ……)
萌留はそわそわしながら、透の机に肘をつく。
「ねぇ透くん、今日さ──」
(言え!! “チョコ作ってきたよ”って言え!!)
「──放課後、購買のパン奢ってよ」
(なんでそうなるの私の口ぃぃぃぃぃぃ!!!
違う!! チョコ!! チョコだってば!!)
「……なんで僕が奢るんですか」
(なんでバレンタインに僕が奢る流れになってるんだよ……)
「いいじゃん別に~。ほら、あんた友達いないし?」
(奢らなくていいから!! むしろ私が奢るから!! だからチョコ受け取って!!)
「……余計なお世話です」
(友達いないのは事実だけど言われたくない!!)
萌留は、カバンの中の小さな包みをぎゅっと握りしめた。
(あぁもう……どうしよ……渡したいのに……渡せない……透くん、誰かにチョコもらったりするのかな……)
「……蓮菜さんは、誰かにチョコ渡すんですか」
透が何気なくそう言った瞬間──萌留の心臓が跳ねた。
(きた!! きたこれ!! 今言えば自然に渡せる!!“実は透くんに……”って言えば……!!)
「は? あんたに関係ないし?」
(めちゃくちゃ関係あるよぉぉぉぉぉぉぉ!!!!
むしろあんたにしか関係ないよぉぉぉぉぉぉぉ!!!!)
「……そうですか」
(なんで聞いたんだ僕……期待してるみたいじゃん……)
萌留は、透の横顔を見つめながら、唇を噛む。
(……渡したい。渡したいのに……素直になれない……)
そして、昼休み。
透が席を立とうとした瞬間──
「ちょ、ちょっと!!」
萌留が袖をつかんだ。
「……なんですか」
「べ、別に……その……」
(言え!! 言え私!! “これ、あげる”って!!)
「……購買、行こ」
(なんでえええええええええええええええ!!!!
違う!! 違うの!! チョコ渡したいの!!)
「……はいはい」
(なんで僕、バレンタインにパン買いに行ってるんだ……)
萌留は、透の後ろ姿を見つめながら、胸の中で叫んだ。
(放課後こそ絶対渡す!! 絶対!! 絶対だから!!)
──そして放課後。
萌留は、透の机にそっと小さな包みを置いた。
透が戻ってきて、包みに気づく。
「……誰のですか?」
萌留はぷいっと顔をそらす。
「し、知らないし!!
勝手に置かれてただけだし!!」
(私です!! 私が置きました!!
透くんにあげたくて震えながら置きました!!)
透は包みを手に取り、少しだけ笑った。
「……ありがとうございます」
(絶対蓮菜さんだろ…………なんで素直に言わないんだよ……でも……嬉しいな)
萌留は顔を真っ赤にしながら、そっぽを向いた。
「はぁ?? 私じゃないってば!!! きっもきっも!!!!!!!!」
(それ私の本命ですよ~~!!!!!!!!)




