第七章:紅蓮の証明、あるいは永遠の檻
今回は大半がセンシティブな表現となっております。
苦手な方は回れ右の方よろしくお願いいたします。
リリアナは自室で、震える手で荷物をまとめていた。
(ここに来る時も、追い出される時も、私は一人なんだわ……。でも、閣下を苦しみから解放できるなら、それでいい)
涙が溢れて前が見えない。その時、背後で扉が、壊れるような音を立てて開いた。
「……何をしている」
地を這うような低い声。振り返ると、そこには返り血も拭わず、狂気を宿した赤い瞳を爛々と輝かせたゼノスが立っていた。
「閣下……。お約束通り、すぐに出ていきますから……」
「どこへ行く。誰が、ここを離れていいと言った」
「だって、私がいると苦しいって……!」
リリアナが叫んだ瞬間、ゼノスは彼女が認識するよりも早く距離を詰め、彼女の腕を掴んでベッドへと押し倒した。
「……違う。お前がいない世界で息をすることの方が、よっぽど苦しいんだ」
ゼノスはリリアナの上に覆いかぶさり、その細い手首を頭上で組み伏せた。
「嫌いなら、いっそ殺してください!」と泣き叫ぶリリアナの言葉を、彼は熱い口づけで強引に封じ込めた。
鉄の匂いと、彼の荒い吐息。
何度も角度を変え、唇を噛み切らんばかりの深い接吻。リリアナの肺から空気が奪われ、思考が白く染まっていく。
「……殺すだと? ……無理だ。お前を失うくらいなら、俺は国ごとすべてを焼き尽くす」
ゼノスはリリアナの首筋に顔を埋め、獲物の急所を確かめるように深く、熱い歯を立てた。
「嫌いだと言ってほしかったのか? ……なら、今から教え直してやる。俺がどれほど、お前に狂っているかを」
彼は荒々しい手つきで、彼女のドレスの襟元を裂いた。白い肌に、彼の血に汚れた指先が触れる。その対比はあまりにも残酷で、官能的だった。
「閣下……っ、あ……」
「見ろ、リリアナ。お前の肌に、俺の汚れがついていく。……お前も同罪だ。もう、清らかな令嬢には戻れない」
ゼノスは彼女の肌に、点々と紅い痕を刻んでいく。それは愛の告白というにはあまりに重く、所有の刻印というにはあまりに切実だった。
彼の大きな手が、リリアナの柔らかな曲線に触れ、熱を注ぎ込む。言葉足らずな彼が、指先だけで「行かせない」「俺のものだ」と必死に語りかけていた。
リリアナの震えは、いつしか恐怖から、彼から与えられる猛烈な熱への悦びへと変わっていく。
「……嫌いじゃ、ないんですか……?」
「……馬鹿な女だ。嫌いな相手を、こんな風に抱く男がいるか」
ゼノスは自らの衣類を脱ぎ捨て、剥き出しの欲望を彼女に突きつけた。
二人の肌が密着し、混ざり合う。リリアナの柔らかな熱が、ゼノスの凝り固まった孤独を溶かしていく。
彼はリリアナの脚を割り、その最深部へと、躊躇いなく自身を沈めた。
「……ぁ……っ!!」
リリアナの口から、甘い悲鳴が漏れる。
内側から突き上げられる衝撃に、彼女はゼノスの広い背中に爪を立て、縋り付いた。
「……お前が、証明しろと言ったんだ。……だったら、一生忘れるな。お前を貫いているのは、この化け物の腕だ」
激しく、そして執拗な律動。
ゼノスはリリアナを壊すかのように強く抱き締め、何度も、何度も彼女の名前を呼びながら奥深くを突いた。
リリアナの瞳からは涙がこぼれ、視界が揺れる。だが、その瞳に映るゼノスの顔は、苦痛に歪みながらも、今までで一番情熱的に彼女を求めていた。
「閣下、……ゼノス、様……っ。あ、ぁ……っ!」
「……逃がさない。死ぬまで、俺の檻の中で鳴いていろ」
深夜、嵐のような情事が一段落しても、ゼノスはリリアナを離さなかった。
結合したまま、彼女の耳元で熱い吐息を漏らす。
「……リリアナ。お前が笑うと、胸が苦しいと言ったな」
「……はい……」
「……あれは、お前を愛しすぎて、心臓が壊れそうだったからだ。……言葉を間違えた。すまない」
リリアナは、彼の胸に顔を埋め、静かに泣いた。
それは悲しみの涙ではなく、ようやく彼の「重すぎる愛」に触れられた安堵の涙だった。
「……もう、どこへも行きません。閣下が『もういらない』と言っても、離れませんから」
「……当たり前だ。……許さない」
ゼノスはそう言うと、まだ潤んだ瞳のリリアナを再びベッドに沈めた。
「夜はまだ長い。……お前が、俺を拒絶したことを後悔するまで、何度でも証明してやる」
言葉足らずな男が選んだ、唯一にして最強の愛の伝え方。
翌朝、リリアナが腰を痛めて起き上がれなくなるまで、その熱烈な「証明」は何度も繰り返された。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
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次は、最終話ですね。
ではでは、また次の話でお会いしましょう。




