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5話

お風呂場の電気がついた瞬間、私は悟った。

湯気とせっけんの匂い。

そして、当たり前みたいに浴室へ入ってくる兄。


「よし、先に体流そうね、めごたん」


いや、待って。

待って待って待って。


私:前世三十路・現世5歳・中身ヲタク

相手:推し・血縁上は兄


……あ。

これ、詰んだ。


「……お、お兄ちゃん」

「なあに?」


にこにこして顔を覗き込んでくる、累くん。

その顔は完全に疑いゼロの保護者状態。


「わたし、じぶんで……あらえる、よ?」

「え?ダメだよ、転んだら危ないよ?」


即却下。

累くんは私の目線までしゃがみこんで、真剣な顔で言った。


「めごたん、頭打ったばっかりでしょ?滑ったらどうするの?お湯も熱かったらどうするの?」

「だ、大丈夫だよ?」

「だーめ、今日はお兄ちゃんが全部やる日」


その“全部”が怖い。

私はそっと逃げようとしたが軽々と抱き上げられてしまう。


「はい、捕獲〜。もう暴れない暴れない。危ないからね〜」

「だいじょうぶだから!」

「今日のめごたん、なんかおかしいよ?お兄ちゃんが洗ってあげるからね〜」


……神様。

これは、一体なんの試練ですか?


結局、私は累くんの腕の中で洗われるという状態に陥った。


「ほら、冷えないように。顔に泡つくよ、目閉じて〜」


その距離で話をしないでほしい。


「めごたんが大きくなるまでは、お兄ちゃんが守るって決めてるから」


その言葉は優しくて、少しだけ重かった。

国民的アイドルになる男の覚悟が、全部、私に向いてる。


「……はーい」


私が観念し返事をすると、累くんは心底安心した顔で微笑んだ。

私はこの先、“推しの妹”として生きていけるのか……。

色んな意味で、先が思いやられた。

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