3話
退院したその日の夜。
パパは仕事で、もう家を出ていた。
「ごめんな、今日は一緒にいられなくて」
そう言って頭を撫でてくれたけど、これはいつもの事だ。
そして、リビングには私と累くんだけ。
テーブルの上には、どーんと大きな箱。
「じゃーん!!めごたんの退院祝い」
箱を開けると、中にはホールケーキが入っていた。
いちごが沢山乗った、白くてかわいいケーキ。
真ん中にはチョコプレートで
【めごたん、おめでとう】
と書かれていた。
まさか店員さんも、これが退院祝いだとは思うまい。
「めごたん、今日は特別だからね。いーーっぱい食べていいよ」
「わあ……!」
とりあえず5歳児として完璧なリアクションをしておく。
「嬉しい?めごたんが嬉しいなら、お兄ちゃんも嬉しいよ」
そう言うと累くんは、私の年齢の5本だけロウソクを立て、火をつけた。
いや、だから、誕生日じゃないんだけど……。
「いい?めごたん、息をふぅ〜ってするんだよ?でも強すぎないでね?火傷したら危ないからね?」
そんなに言わなくても、中身は30歳のBBAだから大丈夫だよ。
私はふぅーっと息をかけ、ロウソクの火を吹き消す。
累くんは、ほっとしたように笑った。
「よし。じゃあ、切り分けてくるね!」
数分後、切り分けられて出されたケーキは、1人分にしては、明らかに大きい。
「……私の分、おおきいね……」
「だって今日はめごたんが主役だからね!」
そう言い切ると、累くんは私の向かいの席に座り、じっと見ている。
推しにここまで見られてると、流石に恥ずかしい。
そんな雑念のせいかフォークが手から滑り落ちた。
「めごたん、危ない……!」
累くんの手が伸びて、フォークをキャッチした。
(累くん……フォーク落としても危なくないよ)
そんな事を思っていると、彼はキャッチしたフォークを使い、私のケーキを切り分けた。
ひと口サイズのケーキが私の口元へ運ばれる。
「フォークはまだ、めごたんには早かったのかな〜。はい、あーん」
「え……!? 」
「また落としたら危ないでしょ?ほら、お兄ちゃんがあーんしてあげる」
ちょっと過保護な気もするけど……。
推しにあーんされる日が来るなんて……。
神様ありがとう。
私は、累くんにあーんしてもらったケーキを頬張った。
「おいしい?」
「うん、おいしい!」
「そっか。よかった」
その表情が完全に保護者。
その時だった。
ー―ピンポーン。
インターホンが鳴った。




