19話
クリスマスが終わり、年末前の少しだけ街が落ち着いた頃。
愛姫は累くんの部屋で、くるっと一回転していた。
ふわっと広がる、白いワンピース。
「どう? お兄ちゃん」
「……うん。すごく似合ってる」
カメラを構えながら、累くんは少し照れたように笑う。
クリスマスにもらった“ちゃんとしたお洋服”は、今の愛姫にとっては、少しだけお姉さんの服だった。
さすが、芸能界を生き残っているだけのセンスだ。
「じゃあ、次はこっち向いて〜」
「えへへ!」
シャッター音が、何度も部屋に響く。
ポーズを変えるたびに、累くんはその一瞬一瞬を逃さないよう丁寧に切り取っていった。
これは、きっと、ずっと残る時間だ。
「ところで、お兄ちゃん」
「うん?」
「あれ、使わないの?」
私が指を指したのは、壁の一角。
小さな額縁の中には、色鉛筆で描かれた紙が入っている。
《おにいちゃんの
おねがい なんでも きいてあげるけん》
少し歪んだ文字。
端っこには、ハートと星の落書き。
私が、誕生日プレゼントにあげた券だ。
5歳児らしいプレゼントだと思う。
「うん。きっと一生、使えない」
「えぇー! 使ってよー!」
「嫌だ〜。よし、めごたん、そろそろご飯の用意しようか」
頬を膨らませて拗ねる私を、累くんはそのままリビングへ誘導する。
「……ありがとう、めごたん」
小さな声で、累くんが何か言った気がしたが、よく聞こえなかった。
「? なにか言った?」
「ん? なにも?」
累くんは、部屋を出る前にもう一度だけ、その額縁を見てほんの少し微笑んだ。




