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17話

12月24日。

今日は、クリスマスイブ。

そして、累くんの、誕生日。

私は、体を起こしてファンとしてひと言。


「……お誕生日おめでとう、累くん」


リビングに行くと、まだ累くんは起きていないようだった。

昨日、マネージャーさんと考えた、サプライズの内容は頭の中にしっかり入っている。

5歳の体にしては、考えることが多すぎる日だ。


「めごたん?」


背後から声がした。

振り返ると、部屋着のままの累くんが立っていた。

髪は少し寝癖がついていて、目はまだ半分眠そうなのに、どこか落ち着いていない。


「おはよ」

「……おはよう」


声が、少し低い。


「お兄ちゃん、どうしたの? まだねむいの?」

「……ううん」


累くんはそう言って、私の頭を撫でる。

いつもより、少し強め。


「今日は、寒いから。ちゃんと着込んでね」


それだけ言って、キッチンへ向かってしまった。

……おかしい。

とても、おかしい。

きっと、いつもの彼なら

「今日は何の日だと思う?」

とか

「めごたん、サンタさん来るかな?」

とか、絶対に言うのに。


朝ごはんの時間も、累くんは、どこか上の空だった。

トーストを食べながら、スマホを何度も確認して、ため息をついている。


「お兄ちゃん」

「ん?」

「今日、元気ない?」


私がそう聞くと、

累くんは一瞬だけ、目を見開いた。


「……そんなことないよ」


でも、その返事は、すごく速くて。

嘘っぽかった。


「めごたん、ごめんね。今日は朝からレッスンなんだ。お留守番、できる?」

「……できる」


そう答えながら、私は思う。

この人、自分の誕生日は、あんまり嬉しくないんじゃないか。

動きやすい服装に着替えた累くんは、玄関で靴を履きながら、少しだけ立ち止まった。


「……めごたん」

「なに?」

「今日は……早く帰ってくるから」


それだけ言って、累くんは、家を出ていった。

ドアが閉まる音が、いつもより、大きく聞こえた。


「……うまく、いくよね」


誰に言うでもなく、そう呟いた。

今日は、私が「祝う側」だ。

たとえ、5歳でも。

たとえ、妹でも。

今日は、ちゃんと累くんを、笑わせたい。

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