14話
私の誕生日から、2日後。
今日は、累くんは学校、パパもお仕事。
その代わりに、マネージャーさんが家に来てくれた。
「おじさん、こんにちは」
「愛姫ちゃん、お誕生日おめでとう」
そう言って、手にしていた袋からプリンを取り出す。
なぜ、ケーキじゃなく、プリン??
後からそれとなく聞いてみたら
「ケーキは、累が散々食べさせただろ?」
という返事が返ってきた。
……ご名答である。
「愛姫ちゃん、お誕生日、楽しかった?」
「うん! あのね! まず、七夕祭りにお兄ちゃんと行ったの!」
プリンを頬張りながら、私は得意げに話す。
「それでね、お家に帰ってきたら、飾りがたくさんあって! パパも帰ってきたんだよ!」
「そっか。良かったね」
マネージャーさんは、なぜか少しほっとした顔をした。
その表情を見て、私はふと気づく。
あの日、累くんは、ずっと私につきっきりだった。
パパは、遅れて帰ってきた。
あの家の飾り付けができるのは、合鍵を持っている人だけ。
「……おじさん」
「ん?」
「ありがとう」
「……う、うん?」
突然のお礼に、マネージャーさんは少し戸惑った顔をした。
マネージャーって、大変だ。
私は、理由を説明しないまま、謎の感謝を伝えた。
「プレゼントは、なにをもらったの?」
「あのね、パパからは、ビデオ!」
パパは、いろんなアニメのDVDを買ってきてくれた。
お留守番の時間でも退屈しないように、という配慮らしい。
「お兄ちゃんからは、頭につけるリボン!」
ベージュ色の、クリップ式のリボン。
形がきれいに整えられていて、どんな服にも合いそうだった。
「……良かった。ちゃんと、普通の物をあげてた……」
マネージャーさんが、ほっとしたように小さく呟く。
「え?」
「いや……てっきり、アルバムとかかと思って」
「あ……」
「……え?」
私の表情を見て、マネージャーさんの顔が固まった。
「アルバムじゃなくて……ビデオだったよ」
「……え」
そう、ビデオ上映。
去年まではなかったそれは、生まれてから今までの私の写真を、スライドショー形式で流すものだった。
編集は見事。
でも、上映時間は……30分。
30分間、ひたすら自分の成長記録を見ることになった。
「……お兄ちゃん、頑張って作ってくれて良かったね」
引きつった笑顔のマネージャーさん。
全然フォローになっていない。
でも、そのスライドショーで、ひとつだけ気になったことがある。
私の写真の中には、累くんやパパはたくさん写っていた。
けれどママの姿は、ひとつもなかった。
そもそも、私はママの記憶がない。
アルバムを見たことはあるけれど、写真はなく、パパや累くんの口から、その話題が出たこともない。
私は、あえて触れないでいる。
いつか、もう少し大きくなったら、教えてくれるのだろうか。
そんなことを考えながら、私はマネージャーさんからもらったプリンを、きれいに完食した。




