10話
今日は、高校はテスト期間で休みらしい。
累くんは高校生になってから、一気に授業が難しくなったらしく、テストの度にずっと勉強している。
今回も、朝からリビングの机には、問題集、ノート、プリントが山みたいに積まれている。
「……ふぅ」
累くんは腕を組んで、真剣な顔。
……のはずなのに。
「めごたん、寒くない?」
「のど痛くない?」
「ちゃんと朝ごはん食べた?」
邪魔をしないよう静かにしているのに、累くんは数分に1度、私に声をかけてくる。
その言動は、テスト前の人のものではない。
私の存在が、彼の集中力を妨げている気がする。
……集中してほしい。
その時。
「……ごほんっ」
思わず咳が出てしまった。
これは、まずい。
「めごたん!?」
即反応した累くんは、問題集を閉じ、体温計を持ってくる。
しまいには、温かい飲み物を作りはじめる。
「めごたん、大丈夫?無理しなくていいからね。この間、風邪引いたばっかりだし」
成績より妹の咳を優先する兄なんて、この世にいるのだろうか。
「大丈夫だよ。お兄ちゃん、それより……これ!見て!」
話を変えようと、私は折り紙を累くんへ渡す。
累くんは、白紙の面を見て、目を見開いて固まった。
折り紙には、私のへたくそな字で
【がんばれ、おにいちゃん】
と応援メッセージを書いたのだ。
「おうえん、した!」
次の瞬間、思いきり、抱きしめられた。
「……これがあるなら、100点じゃなくてもいいかも」
あれ。
応援をするつもりが、逆効果だった気がする。
彼の生活の中心は、完全に妹の私なんだよな……。
多分、テストの点数より、私が笑ってるかどうかの方が、ずっと大事なんだろう。
━━━━
翌週、テストの採点が終わり返却された答案用紙には
【100点】や【90点】など
どれも85点以上の高得点を記録していた。
「めごたん!凄いでしょ!褒めて褒めて!」
あの状況でも、頭に全て入っていたのが凄い。
(そうだった)
ふと、転生前を思い出した。
将来、LU:CENTの冠番組内で、メンバーとゲストが学力テストをするコーナーが定期的に実施されていた。
累くんは、確か、不動の学力王と呼ばれていた。
(さすが、私の最推し……)
私は、目の前の妹にデレデレな兄の前で、オタクとして誇りに思うのであった。




