1話
横断歩道。
青信号。
スマホの画面。
次の瞬間、視界いっぱいに迫ってきた白いライト。
(ああ、私、死ぬ)
そう理解するのに、時間はかからなかった。
感情も後悔もほとんどなかった。
ただ1つだけ。
(今日の配信、見逃したな)
━━━━
次に意識を取り戻した時、私は知らない天井を見ていた。
「……ここ、どこ……」
そうだ、わたし、ジャングルジムから落ちて……。
いや、それもそうなんだけど、車にもぶつかって……?
ってことはココは病院?
事故にあったせいなのか記憶が混乱している気がする。
「めごたんっ……!」
突然、呼ばれた名前に心臓が跳ねる。
そこに立っていたのは、信じられないほど見覚えのある人だった。
見た目は15歳前後。
深く暗みのある赤い髪は少し遊んだようにセットされている。
顔は整っていて、切れ長な深紅の瞳。
これから大人になるにつれ、イケメンになると言っているのが分かる。
そして……
私は彼を知ってる。
彼は今にも泣きそうな顔で、私の頭をそっと撫でた。
「……よかった。起きた」
「お兄ちゃん……」
そうだ、目の前にいるのは私のお兄ちゃん。
いや、違う。
いや、違くない。
お兄ちゃんなんだけど……。
え?
待って待って待って。
「どうした? まだ眠い?」
彼が私を見つめながら首をかしげた。
違う。
眠いんじゃない。
「……るい、くん……?」
小さな声でそう呼ぶと、彼は一瞬きょとんとして、すぐに笑った。
「そうだよ。めごたんの、兄ちゃんだよ」
そう
彼は私のお兄ちゃん。
そして、彼は私の推し。
記憶が混乱しているものの、察してしまった。
私は5歳の女の子に転生してたのだ。
しかも……“推しが兄になってる”
この日から私の人生は、推しの“妹”としての人生がスタートした。




