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第1話 カケタル彼ら

とあるオフィス街…21時を過ぎても電気が消えていない部屋が多いのは、彼らの社畜精神の成せる技なのか、それともただの消し忘れなのか。

 もし消し忘れならギャップがあって可愛い。

 この時間の夜景は彼らのおかげでできていると考えるとブラック企業も悪い存在でないのか。


「オイこら!リーダーのてめえがボケッとすんな!そっち逃げてんぞ!」


 ポケットの小石が割れんばかりの音量で叫ぶ。

 ビルの隙間の死角になった窓からぶら下がったまま下を見下ろすと、地雷系の女に追われる緑の犬みたいなやつが見えた。


 「あれか、そんなに怒鳴らなくても…おじちゃん怖くて泣いちゃうぞ。」

 「あ?なんか言ったか?無駄口か?話せないようにしてやろうか?」

 「いえいえ何でもございません!リーダー行きます!」


 壁に引かれたチョークの線に触れるとリーダーは十階の窓から勢いよく飛び降りた。



 「待って待って〜〜私のことどれくらい好きか教えて〜」


 甘ったるい声でテレンパレンと緑の犬を追う地雷女はやる気のない走り方とは裏腹に、着実に犬を追い詰める。

 まるで性格の悪い陸上選手が、全くの素人相手の勝負に手を抜いて、尚、追いついて勝つという構図そのものだ。


 「きゃ〜受け止めて〜♡」


 地雷女が高々と飛び上がり、犬に向けて落下した。

犬は間一髪!横に飛び退いて躱す。

地雷女の膝が地面に触れた時、地面は1トンの鉄球が落ちたように陥没した。


 「…私のこと嫌いなの?許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない!」

 「バカこのゴスロリ!街壊すなって何回言えばわかんだ!壊せないようにしてやろうか?」

 「え〜でも?タテちゃんなら直してくれるでしょ?私のこと好きだから♡」

 「うおえ!直してやるからそのキモい声をやめろ!吐く!」

 「は?今キモいって言った!タテちゃんでも許せない!」


 今日の飯の事しか考えていない馬鹿な海猫のように小石とギャアギャア罵り合う地雷女を横目に二つの影が飛んでいく。


 「いはーーー!やはり、この世界一美しいEMLイムルちゃんと!そのマッチョで忠実な従者のヒゲダン勝るコンビ………いや、もはや夫婦!は!存在しません!」


 人形のような体で空を舞うヒゲダンの手の指全てに糸のついた指輪がはめられており、その先にはEMLちゃんと呼ばれた西洋人形のように美しい少女が繋がっていた。その表情は暑苦しいヒゲダンとは対照的に、月の光を受けて一層の美しさと冷たさを湛えている。


 「ヒゲ!ダン!パンチ!」


 ヒゲダンの拳が地面を穿つ。犬はその威力にたまらず吹き飛んだ。


 「今ですぞ!EMLちゃん!」


 EMLちゃんが手を握ると犬は光の輪に縛られた。


 「追いついた〜。ヒゲダンちゃんが壊した地面はタテちゃんが直してくれるって〜。私にタテちゃんが惚れててよかったね〜♡」

 「みんな早いねー、おじちゃんびっくりしちゃった。」

 「いはーー!結婚してEMLちゃん!」

 「……………」


 小石は喋らない。別のことに必死なんだろう。こうなるとツッコミ不在で混沌とする。

 緑の犬は転げ回る。


 「はいはい動かない。」


 リーダーは犬を掴んで口に手を突っ込んだ。引き抜いた手には金色の針が握られていた。


 「やっぱあったね針。」

 「じゃあ帰るか。」


 4人は撤収しようと踵を返す。


 「おっとちょい待ち。大人しくその針を返さないとこの子が死ぬよ。」


 4人がギョッとして振り返るとそこには奇妙なマスクをつけた男が1人の少年の首にナイフを突きつけて笑っていた。

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