婚約破棄と追放聖女〜どちらが人気?
よくあるゆるふわ設定です。
温かい目で読んで下さると嬉しいです。
「ねぇねぇ、アリッサ!文化祭に出す小説書き終わった!?」
まだ書き終わってないわよ、サリー。顔を見たら分かるでしょ?
目の下に隈があるの見えないのかしら。
「まだ。何とか2つに絞ったんだけど、どっちがいいか悩んでて…」
「えー!読ませて読ませて!アリッサのお話面白いし、高い本買う余裕無いから助かるんだもん〜!」
欲望と生活感がダダ漏れね。そんな所が好きだけれど。
「こっちは、聖女様が何故か不当に貶められた上に婚約者とか家族に追放される話。何故か不当に貶められるって所の説得感がなかなか難しすぎて難航しているの。国外に追い出された後、周りに愛されるのよ。
でも、本物の聖女を追放した国はその後、大変な目に合うわ。でもハッピーエンド確定よ」
試行錯誤して完成させたノートを渡す。
「おぉ~。有り難や〜!」
大袈裟に喜ばれると少し嬉しくなっちゃうわ。
「こっちは、完璧なのになぜか婚約破棄されちゃう貴族女性の話」
鞄からもう一冊のノートを取り出した。
「浮気相手の女の子と浮気者の婚約者のイチャイチャを書くのにストレスが溜まるし、浮気相手も男に頼りっきりで書くのが難しいわ。婚約破棄される令嬢を美人で完璧にしすぎたせいなのかしら。見せ場はパーティー会場での婚約破棄なんだけど、その場面でさらに素敵な男性から…要は王子様ね。彼からプロポーズされるの。流石に都合良すぎよねぇ」
ご都合主義すぎて何度も書き直したノートもサリーに渡した。
でも、これで人気が取れると思えないわ。
「アリッサ!どうせならこの2つで人気投票すればいいんじゃない?」
そして、サリーのこの提案は色々と波紋を呼んだのだ。
※ ※ ※
「貴女はもちろん、聖女様がお好きよね!?生まれながらに虐げられてきたのに、さらに追放される不憫な身の上!そして、そこでたまたま出会った親切な方が王子様なんて素敵じゃない!聖女様を追い出した家族のその後も悲惨でスッキリして最高よ!」
「いいえ!初恋の為に何年も努力してきたのに婚約破棄されたご令嬢の方が格好良いわ!元婚約者の浮気男も、見るからにハニートラップ地雷女も地獄に落とすあの瞬間!とても震えましたわ!それに婚約破棄の場面で、彼女に求婚する王子様。正に運命です!」
――狙ったわけじゃないのよ?
サリーが、私の書いたノート書き写し各所に配った。
そこから火が着いたようだ…。女の子達の派閥が真っ二つに割れていた。
聖女と貴族令嬢。
そして都合よく現れる王子様。
どっちの話も、パターンは同じなんだけどなぁ。
ここまで派閥が割れてしまうとは。
「アリッサ、学園中で大人気だな!」
ポンと私の頭を叩く、朗らかに笑った男の子。
誰だっけ?あ〜八重歯がチャームポイントなクラスメートの…なんとか君だ。明らかにモブな、ちょっと名前をど忘れした彼だ。
「王子様の人気は凄いよね。実際には王子様になんて出会えないのに」
「聖女もご令嬢も会えないだろう?俺たちとは違う世界の話だよなぁ」
「モブには絶対、聖女様とご令嬢の恋人役は無理だし、もんろん主役は張れないわよね。まぁ、私と君には関係無い話よ。で、君の名前何だったっけモブ君」
「うわ、流石に酷いわ〜」
前から馴れ馴れしいが、彼の八重歯は嫌いじゃない。
それはそう。私に王子様と縁がある筈がない。私なら近くでちょっと光っている、私だけの物がいい。
因みにモブ君の笑った時に覗く八重歯にはちょっとした価値があると思う。無愛想ってよく言われる私にも優しいしね。
「君もお姫様や聖女様に会ってみたい?」
ちょっと聞いてみる。まぁ、男の子って意外とロマンティストだから美少女との劇的な出会いなんて想像しているかもしれないわね。
「俺は、近くの可愛い子が一番いいな!」
ニカッて感じの笑顔で笑う彼。
なるほど。これは思ったよりも…。
文化祭が終わるまでには、聖女 VS 婚約破棄の対決が終わっていると有り難いなぁ。
一緒に文化祭をまわってみようか?って八重歯な彼を誘ってみたいからね。




