表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

98/196

第98話  傷心のレオン⁉セルフィ恋のアドバイス!

 セルフィが自らの壮絶な過去を告白した瞬間、ステラとリリカの目には大粒の涙が浮かび、次第に彼女たちはその場で泣き崩れてしまった。


セルフィの過去の痛みが、二人の心にも深く響いたのだ。彼女たちはセルフィの強さに感謝しつつ、その辛い過去を共有できたことに、言葉では表せないほどの感情が溢れ出していた。


 その様子を見たメルヴィルは、静かに息を吐き、優しい声で告げた。


「今日の講義はもう無理ね。こんな日は無理をしないで、美味しい夕食でも食べて元気を取り戻しましょう。たまには、皆で一緒に作りましょう」


 その提案に、リリカは驚いて顔を上げた。


「わあ! なんか楽しそう!」


 と、リリカは嬉しそうに言い、ステラも頷き、少し元気を取り戻した様子だ。


 その流れで、セルフィ、リリカ、ステラ、レオンも一緒に夕食の準備を手伝うことになった。


 メルヴィルの家のキッチンは広々としており、みんなが協力して料理をするのにはぴったりの環境だった。


 料理をすることで心も少し軽くなり、温かい雰囲気が漂い始めた。



 食材を確認していたセルフィが、ふと思いついたように提案した。


「今日はスパゲッティにしましょうか?簡単で美味しいし、みんなで作るのにぴったりだと思います」


 その提案に、メルヴィルはすぐに同意し、他の皆も笑顔で賛成した。


 だが、ステラとリリカには一つ問題があった。それは料理の経験がほとんどないことだ。


 ステラとリリカは、少し照れくさそうにメルヴィルとセルフィに打ち明けた。


「実は……料理ってほとんどやったことがないのよ」


 リリカも恥ずかしそうに


「私も……」


 と小声で告白した。


 そんな二人に、メルヴィルとセルフィは優しく笑いかけ、安心させた。


「大丈夫、今日は私たちが教えます。失敗してもいいので、料理を楽しみましょう」


 と、セルフィがにこやかに言うと、ステラとリリカはほっとした表情で頷いた。


 まず、ステラとリリカはスパゲッティを茹でる役割を任された。メルヴィルとセルフィが教える通りに、二人は鍋に水を入れ、塩を加えて火にかけた。


「沸騰したらスパゲッティを入れて、茹で具合をちゃんと確かめるのよ」と、メルヴィルが優しく教えると、二人は真剣な顔で砂時計を確認しながら作業を進めた。


「これで本当に合ってるのかな……」


 とリリカが不安そうに呟いたが、セルフィが笑顔で


「大丈夫、ちゃんとできてる」


 と励ました。


 一方で、メルヴィルとセルフィはソース作りに取り掛かっていた。


 トマトベースのソースを作りながら、時折、ステラとリリカにアドバイスを送り、彼女たちの成長を温かく見守っていた。


「スパゲッティって意外と簡単?」


 とリリカが楽しそうに言い、ステラも


「これなら私にもできそう」


 と、少し自信を取り戻していた。


 ついに夕食の準備が整い、スパゲッティの香りが部屋中に広がる。みんなでテーブルに座り、にぎやかな夕食が始まった。


 セルフィの提案通り、簡単で美味しいスパゲッティは、全員の食欲を満たすこととなった。


「いただきます!」


 と、メルヴィルが声をかけ、皆が一斉に食事を始めた。


「これ、本当に美味しい!自分たちで作ったなんて信じられない!」


 とリリカは驚きの声を上げた。


 ステラも頷きながら


「本当に美味しいわ!これ私の得意料理にしようかしら」


 と笑顔で言った。


 食事が進む中、ステラがふと、アレクシス王子のことを思い出し、口を開いた。


「アレクにもこのスパゲッティを作ってあげたいわ」


 その瞬間、食卓の空気が一瞬固まった。レオンが驚いた顔でステラに問いかける。


「アレク?もしかして……アレクシス王子のことですか?」


 メルヴィルは急いで話題を変えようとしたが、ステラは微笑みながらそのまま続けた。


「ええ、実はね……アレクシス王子とお付き合いすることになったの」


 この発言に、レオンの表情は一気に崩れた。


 まるで世界が崩れ落ちたかのように、レオンはショックで思わず


「えええ! 本当ですか……?」


 レオンは信じられないという顔でステラを見つめ、口元が震えていた。


 メルヴィルはため息をつき、頭を抱えた。


「しまった……ステラに口止めしようと思っていた矢先に、黒騎士の侵入事件があってすっかり忘れてたわ」


 レオンはショックを隠せず


「アレクシス王子がステラ様に……」


 と呟きながら、俯いて肩を落とした。


 そんなレオンに、セルフィがからかうように慰めた。


「ここはファンクラブの会員として応援しましょう。元気を出して、レオン」


 リリカもレオンの手を握り、


「そうだよ、レオン。元気出して」


 と励ました。


 レオンはリリカの言葉に少し元気を取り戻し


「これしきのことでへこたれません!」


 と強がって答えたが、その顔にはまだ少し戸惑いが残っていた。


 夕食が終わり、みんなでハーブティーを飲みながら、温かな時間を楽しんでいた。


 リリカはティーカップを手にしみじみとした表情で言った。


「この国に来てから、本当に色んなことがあったよ。アイドルになって、王様にも会って、猫耳魔法師になって、チャチャと再会して……六光の騎士や黒騎士とも対決して。でもね……ここでみんなに会えたことが、私にとって一番かな」


 その言葉に、ステラとセルフィも心から同意し、静かに頷いた。


「私もそう思うわ。これからもずっと、みんなで一緒に頑張りましょう」


 とステラが優しく言い、セルフィも笑顔でティーカップを手にした。


 夕食が終わり、セルフィとレオンは二人で洗い物を片付けていた。


 片付けが終わると、セルフィがレオンに軽く声をかけた。


「レオン、ちょっと夜風にあたりに行かない?」


 レオンは少し驚いたが、笑顔で頷き、二人はそっと裏口から抜け出した。


 外の冷たい夜風が心地よく、二人はしばらく無言で歩いていたが、やがてセルフィが口を開いた。


「ステラ様のこと、残念だったわね」


 レオンは少し苦笑いを浮かべ


「茶化すなよ、セルフィ。俺はただ……アイドルのステラ様が好きだっただけだ。しょうがないよ」


 と、どこか寂しげに言った。


 セルフィはその言葉に微笑みながら、彼の気持ちを理解するように頷いた。


「確かに、ステラ様の美貌には女の私でもくらっと来るものがあるわ。あなたの気持ちも分かる」


 すると、レオンは急に真剣な表情になり、ポツリと呟いた。


「でも……俺には、ずっと心に決めた人がいるんだ。俺は一途なんだよ」


「あら、そう? そんなに魅力的な方?」


 と、からかい気味に言った。


 レオンは少し顔を赤くしながら、真剣な顔で答えた。


「ああ、俺にとっては世界一だよ」


 セルフィは彼の真摯な言葉に少し照れくさそうに笑い


「そう……それなら、振られないようにしっかり頑張りなさいよ。恋はタイミングが大事だから、ここぞという時に最高の告白をしなさい。分かった?」


 と助言した。


 レオンは顔を真っ赤にしながら頷き


「おお、分かった……頑張るよ」


 と、力強く答えたが、その顔はすでに照れくささでいっぱいだった。


 セルフィも思わず笑って顔を伏せた。


 二人の間には、心地よい静けさが漂っていた。


 一方、家の中ではリリカがふと疑問に思い、


 「あれ? セルフィとレオン、どこに行ったんだろう?」


 と、首をかしげていた。


 ステラは笑いながら


 「ふふ、あの二人も分かりやすいわね」と、意味深に答えた。


 メルヴィルも微笑んで


「本当にレオンは不器用な子でね。昔からそうなのよ」


 と言いながら、二人の関係を楽しむように見守っていた。


 リリカはそのやり取りに少し不思議そうな顔をしていたが、ステラとメルヴィルはただ笑うしかなかった。


 アレクとステラの関係を知り愕然とするレオン。セルフィはレオンをからかいながらも励ます。レオンが心に決めた相手への強い想いを口にした時、セルフィもアドバイスをする。二人の間に芽生える感情が、これからどのように進展していくのか、非常に気になるメルヴィルとステラだった――。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ