第98話 傷心のレオン⁉セルフィ恋のアドバイス!
セルフィが自らの壮絶な過去を告白した瞬間、ステラとリリカの目には大粒の涙が浮かび、次第に彼女たちはその場で泣き崩れてしまった。
セルフィの過去の痛みが、二人の心にも深く響いたのだ。彼女たちはセルフィの強さに感謝しつつ、その辛い過去を共有できたことに、言葉では表せないほどの感情が溢れ出していた。
その様子を見たメルヴィルは、静かに息を吐き、優しい声で告げた。
「今日の講義はもう無理ね。こんな日は無理をしないで、美味しい夕食でも食べて元気を取り戻しましょう。たまには、皆で一緒に作りましょう」
その提案に、リリカは驚いて顔を上げた。
「わあ! なんか楽しそう!」
と、リリカは嬉しそうに言い、ステラも頷き、少し元気を取り戻した様子だ。
その流れで、セルフィ、リリカ、ステラ、レオンも一緒に夕食の準備を手伝うことになった。
メルヴィルの家のキッチンは広々としており、みんなが協力して料理をするのにはぴったりの環境だった。
料理をすることで心も少し軽くなり、温かい雰囲気が漂い始めた。
食材を確認していたセルフィが、ふと思いついたように提案した。
「今日はスパゲッティにしましょうか?簡単で美味しいし、みんなで作るのにぴったりだと思います」
その提案に、メルヴィルはすぐに同意し、他の皆も笑顔で賛成した。
だが、ステラとリリカには一つ問題があった。それは料理の経験がほとんどないことだ。
ステラとリリカは、少し照れくさそうにメルヴィルとセルフィに打ち明けた。
「実は……料理ってほとんどやったことがないのよ」
リリカも恥ずかしそうに
「私も……」
と小声で告白した。
そんな二人に、メルヴィルとセルフィは優しく笑いかけ、安心させた。
「大丈夫、今日は私たちが教えます。失敗してもいいので、料理を楽しみましょう」
と、セルフィがにこやかに言うと、ステラとリリカはほっとした表情で頷いた。
まず、ステラとリリカはスパゲッティを茹でる役割を任された。メルヴィルとセルフィが教える通りに、二人は鍋に水を入れ、塩を加えて火にかけた。
「沸騰したらスパゲッティを入れて、茹で具合をちゃんと確かめるのよ」と、メルヴィルが優しく教えると、二人は真剣な顔で砂時計を確認しながら作業を進めた。
「これで本当に合ってるのかな……」
とリリカが不安そうに呟いたが、セルフィが笑顔で
「大丈夫、ちゃんとできてる」
と励ました。
一方で、メルヴィルとセルフィはソース作りに取り掛かっていた。
トマトベースのソースを作りながら、時折、ステラとリリカにアドバイスを送り、彼女たちの成長を温かく見守っていた。
「スパゲッティって意外と簡単?」
とリリカが楽しそうに言い、ステラも
「これなら私にもできそう」
と、少し自信を取り戻していた。
ついに夕食の準備が整い、スパゲッティの香りが部屋中に広がる。みんなでテーブルに座り、にぎやかな夕食が始まった。
セルフィの提案通り、簡単で美味しいスパゲッティは、全員の食欲を満たすこととなった。
「いただきます!」
と、メルヴィルが声をかけ、皆が一斉に食事を始めた。
「これ、本当に美味しい!自分たちで作ったなんて信じられない!」
とリリカは驚きの声を上げた。
ステラも頷きながら
「本当に美味しいわ!これ私の得意料理にしようかしら」
と笑顔で言った。
食事が進む中、ステラがふと、アレクシス王子のことを思い出し、口を開いた。
「アレクにもこのスパゲッティを作ってあげたいわ」
その瞬間、食卓の空気が一瞬固まった。レオンが驚いた顔でステラに問いかける。
「アレク?もしかして……アレクシス王子のことですか?」
メルヴィルは急いで話題を変えようとしたが、ステラは微笑みながらそのまま続けた。
「ええ、実はね……アレクシス王子とお付き合いすることになったの」
この発言に、レオンの表情は一気に崩れた。
まるで世界が崩れ落ちたかのように、レオンはショックで思わず
「えええ! 本当ですか……?」
レオンは信じられないという顔でステラを見つめ、口元が震えていた。
メルヴィルはため息をつき、頭を抱えた。
「しまった……ステラに口止めしようと思っていた矢先に、黒騎士の侵入事件があってすっかり忘れてたわ」
レオンはショックを隠せず
「アレクシス王子がステラ様に……」
と呟きながら、俯いて肩を落とした。
そんなレオンに、セルフィがからかうように慰めた。
「ここはファンクラブの会員として応援しましょう。元気を出して、レオン」
リリカもレオンの手を握り、
「そうだよ、レオン。元気出して」
と励ました。
レオンはリリカの言葉に少し元気を取り戻し
「これしきのことでへこたれません!」
と強がって答えたが、その顔にはまだ少し戸惑いが残っていた。
夕食が終わり、みんなでハーブティーを飲みながら、温かな時間を楽しんでいた。
リリカはティーカップを手にしみじみとした表情で言った。
「この国に来てから、本当に色んなことがあったよ。アイドルになって、王様にも会って、猫耳魔法師になって、チャチャと再会して……六光の騎士や黒騎士とも対決して。でもね……ここでみんなに会えたことが、私にとって一番かな」
その言葉に、ステラとセルフィも心から同意し、静かに頷いた。
「私もそう思うわ。これからもずっと、みんなで一緒に頑張りましょう」
とステラが優しく言い、セルフィも笑顔でティーカップを手にした。
夕食が終わり、セルフィとレオンは二人で洗い物を片付けていた。
片付けが終わると、セルフィがレオンに軽く声をかけた。
「レオン、ちょっと夜風にあたりに行かない?」
レオンは少し驚いたが、笑顔で頷き、二人はそっと裏口から抜け出した。
外の冷たい夜風が心地よく、二人はしばらく無言で歩いていたが、やがてセルフィが口を開いた。
「ステラ様のこと、残念だったわね」
レオンは少し苦笑いを浮かべ
「茶化すなよ、セルフィ。俺はただ……アイドルのステラ様が好きだっただけだ。しょうがないよ」
と、どこか寂しげに言った。
セルフィはその言葉に微笑みながら、彼の気持ちを理解するように頷いた。
「確かに、ステラ様の美貌には女の私でもくらっと来るものがあるわ。あなたの気持ちも分かる」
すると、レオンは急に真剣な表情になり、ポツリと呟いた。
「でも……俺には、ずっと心に決めた人がいるんだ。俺は一途なんだよ」
「あら、そう? そんなに魅力的な方?」
と、からかい気味に言った。
レオンは少し顔を赤くしながら、真剣な顔で答えた。
「ああ、俺にとっては世界一だよ」
セルフィは彼の真摯な言葉に少し照れくさそうに笑い
「そう……それなら、振られないようにしっかり頑張りなさいよ。恋はタイミングが大事だから、ここぞという時に最高の告白をしなさい。分かった?」
と助言した。
レオンは顔を真っ赤にしながら頷き
「おお、分かった……頑張るよ」
と、力強く答えたが、その顔はすでに照れくささでいっぱいだった。
セルフィも思わず笑って顔を伏せた。
二人の間には、心地よい静けさが漂っていた。
一方、家の中ではリリカがふと疑問に思い、
「あれ? セルフィとレオン、どこに行ったんだろう?」
と、首をかしげていた。
ステラは笑いながら
「ふふ、あの二人も分かりやすいわね」と、意味深に答えた。
メルヴィルも微笑んで
「本当にレオンは不器用な子でね。昔からそうなのよ」
と言いながら、二人の関係を楽しむように見守っていた。
リリカはそのやり取りに少し不思議そうな顔をしていたが、ステラとメルヴィルはただ笑うしかなかった。
アレクとステラの関係を知り愕然とするレオン。セルフィはレオンをからかいながらも励ます。レオンが心に決めた相手への強い想いを口にした時、セルフィもアドバイスをする。二人の間に芽生える感情が、これからどのように進展していくのか、非常に気になるメルヴィルとステラだった――。




