第89話 夜更けの女子会⁉猫耳の極秘任務!
夜も更けて、猫耳ハウスのリビングにはゆったりとした時間が流れていた。ステラ、リリカ、セルフィの3人は夕食を終え、女子会とも言える時間を楽しんでいた。日常の雑談から最近の任務について、さらには未来の計画についてまで、話題は尽きない。リビングにある大きな窓からは、夜空に輝く星々が見え、外の静寂が彼女たちを包み込んでいた。
ふと、ステラが口を開いた。
「ちょっと大事な話があるの。大隊長として……二人にお願いがあるの」
ステラの真剣な表情に、リリカとセルフィは顔を上げて耳を傾けた。
「本格的な作戦を前に、もう一度ルクス・マギナ遺跡に行こうと思ってるの。あくまで調査というか偵察ね。今回は戦闘を避けるつもりで、前回黒騎士を倒した場所をもう一度確認したいのよ。何か手掛かりが残っているかもしれないから」
ステラの声には決意がこもっていた。遺跡での黒騎士との戦闘は衝撃的だったが、彼女たちはその後の研究や分析の中で、遺跡が黒騎士の復活や魔石の力に密接に関係している可能性を考えていた。特に、黒騎士が再び現れるという脅威が現実のものとなった今、何としてでもその秘密を突き止める必要があった。
リリカはステラの言葉にすぐさま反応し、楽しそうに声を上げた。
「そんなの、行くに決まってるじゃん!私たち、猫耳魔法大隊でしょ?偵察でも何でも、私たちも一緒に行くよ!」
その言葉にセルフィも同意し、少し笑いながらも、真剣な眼差しで頷いた。
「そうです、ステラ様。カッコよく命令してください。私も六光の騎士、隠密剣士として、しっかりお役に立てるように頑張ります!」
二人の反応に、ステラは少しだけほっとした様子を見せながら微笑んだ。
「ありがとう。二人が一緒なら、きっとどんなことでも乗り越えられるわ。さっそく明日、メルヴィルさんに転移魔法の準備をお願いしておくわ。これからは猫耳魔法大隊の極秘任務よ!」
ステラがこう言うと、リリカもセルフィも気持ちが引き締まるのを感じた。彼女たちが向かうルクス・マギナ遺跡は、ただの遺跡ではなく、魔石や魔獣など、強大な魔力を秘めた場所だ。簡単な任務ではないことは、全員が十分理解していた。
「でも、今回もまた戦いになる可能性があるんでしょ?」
リリカがふと不安げに尋ねた。
ステラは少し考えてから答えた。
「前回は遺跡の通路の中心地点に巨大な魔石があったわ。そこで黒騎士が現れた。でも、今回はあくまで偵察が目的。戦闘は避けるつもりだけど、何が起きるかは分からない。魔石がどうなっているか確認しないとね。この短期間で復活している可能性は否定できないし、もし近くに魔石が残っていれば、黒騎士が再び出現するかもしれないわ」
セルフィもその話に真剣な表情を浮かべた。
「つまり、魔石が再び力を取り戻していれば、いきなり黒騎士や魔獣に出くわす可能性もあるということですね……」
「そういうことね」
ステラは深く頷いた
「でも、私たちは戦闘を避けつつ、できるだけ慎重に偵察を進めるつもりよ。どうしても戦わなければならない状況になった時は、全力で対処するわ。みんな、しっかり準備しておいてね」
ステラは真剣な表情になって言った。
リリカは少し緊張しながらも、やる気満々で笑顔を見せた。
「任せてよ、ステラ!前回みたいに黒騎士なんてやっつけてやる!」
セルフィも笑みを浮かべながら、真剣な表情で言った。
「私も、隠密行動を駆使してサポートします。敵に見つからないように行動できれば、戦闘を避けることもできるはずですから」
セルフィの言葉に、ステラは突然ハッと目を見開いた。まるで何か重要なことに気づいたかのようだった。
「それよ!」
ステラが急に声を上げたことで、リリカもセルフィも驚き、彼女を見つめた。
「セルフィ、あなたの隠密剣士としての技術や魔法、それを私やリリカが学ぶことができれば、もっと有利に動けるんじゃないかしら?」
ステラの瞳は輝き、明らかに新しいアイデアが頭に浮かんでいるようだった。
セルフィは一瞬戸惑ったが、すぐに考え込み、少しずつ頷き始めた。
「たしかに…隠密行動や目立たない動きは、戦闘を回避するために非常に有効です。私の技術は基本的には剣士向けですが、魔法と組み合わせることも可能です。ステラ様やリリカ様が私の技を身に付ければ、もっと効率的に敵に気付かれずに行動できるかもしれません」
「そうよ、セルフィ!あなたの隠密剣士としての技術や魔法、何か私たちがすぐにでも取り入れられるものはないかしら?」ステラが興奮気味に問いかけた。
リリカもすっかりその気になり、「そうだよ、セルフィ!あんたの動き、いつもすごくて見てても勉強になるんだ。ぜひ教えてよ!」と目を輝かせて言った。
セルフィは少し恥ずかしそうにしながらも、真剣に考えを巡らせ始めた。
「まず、私がよく使うのは風魔法と隠密技術の組み合わせです。風を使って自分の存在感や足音を消すのは基本技術です。これを二人にも応用できるかもしれません。ステラ様は水と光の魔法、リリカ様は火と光の魔法が得意ですから、それぞれの魔法を使って敵に気づかれないように工夫することができるはずです」
ステラはセルフィの言葉を聞きながら、自分の得意とする魔法にその技術をどう取り入れるかを考えていた。
「光魔法なら、周囲を明るくするだけでなく、逆に自分たちの姿を光で隠すような応用もできるかもしれないわね。光を屈折させて、私たちが目立たなくなるようにする技術…それをセルフィの隠密技術と組み合わせるのはどうかしら?」
リリカもすっかりやる気になり
「私の火魔法で敵の視界を一時的に遮る方法もありかも!瞬間的に煙や光を発生させて、その間に隠れることができれば、セルフィみたいに素早く動けるかも!」と興奮気味に提案した。
セルフィは二人の意欲的な反応に驚きつつも、内心嬉しそうに笑みを浮かべた。
「二人とも、すぐに実戦に役立てそうですね!それじゃ、さっそく簡単な訓練を明日から始めましょうか。まずは風魔法や隠密の基本技術から、私の動きを覚えてもらいます。それをもとに、それぞれの魔法に応用していけば、もっと効果的な戦術が生まれるかもしれません」
ステラはセルフィに感謝の気持ちを込めて言った。
「セルフィ、本当にありがとう。これで私たちが遺跡で黒騎士や他の敵に遭遇しても、もっと有利に動けるかもしれないわ」
リリカも嬉しそうに
「セルフィ、すごいよ!私も早く覚えて、次の任務でバッチリ使えるようにするからね!」
と拳を握りしめてやる気満々の様子を見せた。
三人はそれぞれの役割を胸に刻み、作戦の準備に心を集中させた。ルクス・マギナ遺跡への再訪は、猫耳魔法大隊の次なる試練となることは間違いなかった。彼女たちが直面するであろう新たな危険、そしてその先にある真実に向けて、三人は決意を新たにした。
ステラはふと窓の外に目を向けた。夜空には無数の星々が輝いているが、その美しさの中に潜む闇もまた、彼女たちの未来に立ちはだかるだろう。
「勝負ね……」
ステラは心の中でそう呟き、星々を見つめ続けた。
猫耳魔法大隊の次なる極秘任務が始まる。
こうして、セルフィの隠密技術をステラとリリカに伝授するための特別な訓練が始まることになった。猫耳魔法大隊は、さらに強化されたチームワークと新しい戦術を手に入れ、次のルクスマギナ遺跡への極秘任務に向けて着実に準備を進めていくのだった――。




