第88話 猫耳とお風呂⁉セルフィの妄想！
メルヴィルとの話し合いを終え、ステラは夕方の空を眺めながら、猫耳ハウスへと向かって歩いていた。
ルクス・マギナ遺跡や黒騎士の謎について、メルヴィルと意見を交わしたことで、新たな方向性が見えたものの、疲労感がじわじわと彼女を包み込んでいた。
「そういえば、朝も昼も何も食べてないわ」
ステラは自分の空腹にようやく気づき、少し笑いながら独り言を呟いた。
「家に戻ったら、セルフィに何か作ってもらおうかしら。きっと彼女なら、美味しいものを用意してくれる」
ステラは猫耳ハウスが見えてくると、どこかホッとした気持ちになった。ハウスの近くに来ると、すでにキッチンから漂ってくる美味しそうな香りが、空腹感をさらに刺激してきた。
「いい匂い……」
ステラは思わず鼻をクンクンとさせながら、家の扉を開けると、リビングからセルフィが顔を出した。
「ステラ様、おかえりなさい！」
セルフィは明るく声をかけると、ステラの顔を見るなり、心配そうな表情に変わった。
「お疲れのようですね。今日は朝からずっと働きづめだったんじゃないですか？すぐに何か食べられるものを用意しますね。」
「ありがとう、セルフィ。朝から何も食べていないから、何か軽いものでもいいわ」
とステラは微笑みながら、キッチンの方へ向かった。
セルフィはすぐにお昼に作った野菜スープを温め直し、パンと一緒にテーブルに運んできた。セルフィの作るスープは、いつも優しい味わいがあり、栄養バランスも抜群。メルヴィルの指導を受けたセルフィは、料理に関してもその腕を見せつけていた。
「どうぞステラ様、セルフィ特製野菜スープです。疲れを癒してくれますよ」
とセルフィがスープをテーブルに置いた。
ステラはスープを一口すすると、その味わい深い香りとともに体がじんわりと温まるのを感じた。心までほっとさせるこのスープに、彼女は感謝の気持ちを抱いた。
「ありがとう、セルフィ。とても美味しいわ。本当にあなたの料理は最高！」
ステラはスープを飲み干し、満足げに息をついた。
そのままリビングのソファーに腰を下ろすと、ステラの体は自然とリラックスし、目が徐々に重くなっていった。気づけば、彼女はそのまま深い眠りに落ちてしまった。
ステラが眠りに落ちた頃、リリカとチャチャは散歩を終えて猫耳ハウスに戻ってきた。リリカは玄関のドアを開け、リビングに入ると、そこにはソファーで気持ちよさそうに眠るステラの姿があった。
「あ！ステラ、帰ってたんだね……」
リリカは小さく呟くと、セルフィに向かって尋ねた。
「セルフィ、ステラ寝ちゃったの？」
セルフィは優しく微笑んで答えた。
「ええ、今さっき。今日は一日中動き回っていたみたいですし、夕食の時間までそっとしておきましょう。」
リリカは少し残念そうな顔をしながらも、ステラの隣に座り、そっと手を握る。リリカに甘えたい気持ちが募って我慢できなくなった。
リリカはステラの寝顔をじっと見つめながら、その可愛らしい姿に心を打たれていた。普段はしっかり者で、みんなを引っ張っていくリーダーとしてのステラ。しかし、今は穏やかで、何も気にせず深い眠りに落ちているその姿は、リリカにとってとても愛おしく感じられた。
「ステラ、本当にお疲れ様……」
とリリカは優しく耳元で囁いた。まだ眠っているステラは微動だにしないが、リリカは彼女の温もりを感じ取りたくて、さらに近づいた。まるで母親に甘える子供のように、そっとステラに体を寄せ、彼女の胸元に顔を埋めた。
「やっぱり、ステラの温もりって安心する……」
リリカは心の中でそう感じながら、ステラの柔らかな胸に顔を押しつけ、さらに甘えるように頬ずりをした。ステラの淡い香りがリリカの鼻をくすぐり、彼女はそのままもっと近づきたくなった。
リリカはそっとステラの猫耳に手を伸ばし、指先でそのふさふさの毛を撫で始めた。触れるたびに柔らかな感触が手に伝わり、リリカはその感触に夢中になっていた。
ステラの猫耳はいつもリリカにとって特別な存在だった。戦闘中の厳しい顔つきとは全く違う、この可愛らしい一面に触れることで、リリカは心の奥底から満たされるような幸福感を感じた。
「ふふ、ステラの耳、ふさふさして気持ちいい……」
リリカはさらに猫耳を撫で、ステラの無防備な寝顔を見つめながら微笑んだ。そして、今度はその下に伸びているステラの尻尾にも手を伸ばした。
ステラの尻尾は、リリカにとっても特別なもので、触れるとふわふわとした感触が手に心地よく伝わる。リリカはそれをゆっくりと撫でながら、時折クスッと笑みを浮かべた。
「ステラ、尻尾も本当に素敵ね……」
リリカはまるで大切な宝物に触れているかのように、丁寧にその毛並みを整えながら撫で続けた。
それでも、ステラは眠ったままだったが、リリカの優しい仕草にどこか安心しているように、ほんの少し体がリリカに寄り添った。リリカはその変化を感じ取ると、ますます愛おしさが込み上げ、彼女をもっと抱きしめたくなった。
リリカはステラを抱きしめながら、自分の顔を彼女の胸元にさらに埋め、柔らかな呼吸の音を聞きながら満足げに微笑んだ。そして、リリカも自然とその安心感に包まれ、まるで自分の居場所を見つけたかのように、心からリラックスしていった。
「やっぱり、ステラといると安心する…ずっとこうしていたいな……」
リリカは心の中でそう思いながら、まるで子供が母親に甘えるかのような仕草を繰り返し、ステラの温もりに身を委ねていった。
やがて、リリカはステラの隣でそのまま眠りに落ち、チャチャも二人の横で丸まって寄り添うように寝てしまった。
セルフィは、リビングのソファーで仲良く眠る二人と一匹の様子を見て、やれやれと肩をすくめながら微笑んだ。
「本当に仲のいい姉妹みたいね……」
夕食を終えた三人は、久々に一緒にお風呂に入ることにした。猫耳ハウスには広々とした大浴場があり、三人でもじゅうぶんににつかれるほどの広さがあった。
ステラ、リリカ、そしてセルフィの三人は、ゆっくりと温かいお湯に浸かり、今日の疲れを癒していた。
「はぁ…本当に今日は疲れたわ……」
とステラが目を閉じてお湯に浸かりながら呟く。
リリカも
「でも、こうやって一緒にお風呂に入れるのって、やっぱり楽しいよね」
と嬉しそうに笑った。
一方、セルフィはというと、二人の魅力的な姿に思わず目を奪われていた。彼女はふと妄想の世界へと入り込み、頭の中で勝手にステラ派とリリカ派にわかれて評論会を始めた。
「まずはステラ様…白くて輝く肌、時折、光魔法をまとっているかのようにきらきらと光って見える。最近、表情も豊かになってきて、白くふさふさした猫耳が本当に可愛らしいわ。そして、何と言ってもあの抜群のプロポーション！スレンダーで無駄のない体型、形の整った豊満なバスト、スラリと伸びた長い脚、キュっとしまった足首……ああ、まさに女神ね！」
セルフィは心の中で興奮しつつ、ステラの魅力に圧倒されていた。しかし、すぐに彼女の視線はリリカに移った。
「でも、リリカ様も負けてないわ。日焼けした健康的な小麦色の肌も、また違った魅力があるし、金色の瞳がキラキラと輝いているあの無邪気な笑顔…最高にキュートよ！それに黒く輝く尻尾！まだ若いからプロポーションはステラ様に劣るけれど、あどけない魅力がそそるのよ。いずれはステラ様に並ぶほどの逸材！まさに女神ね！」
セルフィは、二人の違う魅力を心の中で比較し、ますます興奮していった。
「いやいや、ステラ様のあの銀色の長いまつ毛は反則よ！あの透き通った水色の瞳も、まるで澄んだ湖のよう、見つめられたら、誰だってひとたまりもないわ……それにあのさらさらの水色のロングヘアー、どうやったらあんなに美しい髪を保てるのかしら…」
セルフィは次第に頭の中で、ステラとリリカの美しさを競わせる妄想を膨らませていった。
「でも、リリカ様の黒髪だってすごいわ。まるでキューティクルの塊みたいな黒髪は、まるで絹糸みたいに滑らかで、目を奪われずにはいられない。もう、二人とも完璧すぎて…」
セルフィは心の中で、二人の美しさに心酔し、勝手に「どちらが美しいか」を想像しながら、その時間を楽しんでいた。
「こんなに美しいお二人を毎日間近で見られるなんて、私は本当に幸せ者だわ……」
セルフィは心の中でため息をつき、ふと現実に引き戻された。
「セルフィ？何ニヤニヤしてるの？」
リリカが首をかしげながら尋ねた。
「あ、いえ、何でもないです！お湯加減がちょうど良くて、ちょっとボーッとしていただけです！」
セルフィは慌てて答え、にこやかに笑った。
「そう？でも、なんだかセルフィ幸せそうだったよ」
とリリカが言うと、ステラも微笑んで
「本当に、セルフィって時々変な妄想してるわよね」
と冗談めかして言った。
「うう…何も考えてません！」
とセルフィは顔を赤らめ、二人の笑い声に加わった。
三人はゆっくりとお風呂を楽しんだ後、リビングで再びリラックスしながらそれぞれの時間を過ごしていた。温かいお風呂に入ったことで、ステラの疲れもかなり癒されていた。
「ふぅ…今日は本当に疲れたけれど、みんなと一緒に過ごす時間が一番の癒しね」
とステラは言いながら、リリカに微笑みかけた。
リリカも嬉しそうに微笑み返し、
「私もステラやセルフィと一緒にいるのが一番楽しいよ」
と優しく声をかけた。
セルフィはそのやりとりを見て、内心でまた妄想を膨らませていたが、今回は静かにその思いを心の奥にしまい込み、二人の幸せな時間を見守ることに決めた。
リリカ、ステラ、セルフィが猫耳ハウスで過ごす穏やかな時間。リリカがステラに甘える姿を見て姉妹のような深い絆を感じるセルフィ。戦いの合間にある癒しの瞬間。三人は穏やかな夜を過ごしながら、お互いの絆の深まりを感じるのであった――。
