第87話 王立図書館の秘密⁉猫耳書庫の誕生！
ステラは黒騎士の再出現について、メルヴィルにも意見を聞きたいと思い、彼女の研究所へと向かっていた。黒騎士が蘇ったという異常事態を前に、これまで以上に警戒が必要だと感じていた。メルヴィルは大魔法師として王国に長年貢献しており、その知識は誰もが頼りにしている。彼女の知識と洞察力ならば、何か重要な手がかりを得られるかもしれないと考えた。
ステラが研究所のドアをノックすると、メルヴィルはすでに彼女の訪問を予期していたように、すぐにドアを開けた。
「ステラ、よく来たわね。黒騎士の件ね？」
メルヴィルはいつも通り冷静な表情を浮かべていたが、少しだけ眉間に皺が寄っていた。
「ええ、昨夜、また黒騎士が現れました。倒したはずの存在が再び姿を現すなんて、何かもっと大きな陰謀が動いている気がしてならないの。メルヴィル、あなたの知識を借りたくて来ました。黒騎士について……」
ステラは切実に問いかけた。
しかし、メルヴィルは少し残念そうに首を横に振った。
「残念ながら、黒騎士について私が知っていることはほとんどないの。以前に聞いた話や文献でも情報を得ていないのよ。今のところ、私もこの状況を完全には理解できていないの」
ステラは少し肩を落としたが、メルヴィルはすぐに続けた。
「でもね、ステラ。私たちは手がかりを全く持っていないわけじゃないの。実は、王立図書館に保管されている猫耳メイド魔法使いの伝記が何冊もあるんだけれど、もしかしたらそこに黒騎士に関する何かが記されているかもしれないわ」
「あ！そういえば王立図書館のあの書庫ね」
ステラは思い出して叫んだ。メルヴィルが頷きながら
「ええ、以前入ったあの書庫よ。実はこの書庫、その存在が確認されたのは、あなたがこの国に来たのとほぼ同時期だったの。まるであなたが来るのを待っていたかのように、突然、王立図書館の壁に扉が現れたの」
「そうだったんですか⁉」
ステラびっくりして思わず叫んだ。メルヴィルもすかさず答える。
「そうなの、しかも強力な結界で私ですら入れなかった」
「え？じゃあ、どうして？」
ステラは聞き返す。
「突然、鍵と鍵穴が現れたの。これもリリカの出現と同時期に。偶然とは思えない」
メルヴィルは少し神秘的な笑みを浮かべながら続けた。
「これまで、私もその書庫を何度か調べたけれど、そこに保管されている猫耳メイド魔法使いの伝記には、まだ解明されていない秘密がいくつも隠されているように思うわ。黒騎士に関する手がかりも、もしかしたらその中にあるかもしれない」
ステラはその話を聞いて、思わず身を乗り出した。
「伝記の中に、黒騎士やその秘密についての記述がある可能性が高いんですね？」
「そうね、可能性はあるわ。特に、猫耳メイド魔法使いは光の力を扱うことで知られているでしょう。あなたやリリカが使う光魔法の力が、かつてこの国を守った歴史が記されている。その時、同じく闇の力を操る敵と戦ったという記録があれば、それは黒騎士に繋がるかもしれない」
メルヴィルは真剣な表情で、ステラに資料の束を見せながら続けた。
「私も今、これらの文献を解析している最中なの。特に、最近発見された猫耳魔法使いに関する古文書には、何か重大な手がかりが隠されている可能性があるわ」
ステラは頷きながら、メルヴィルの言葉を心に刻んだ。
「やはり、黒騎士の正体を知るためには、あなたの分析が不可欠です。そして、ルクス・マグナ遺跡での探索も。あそこで初めて黒騎士に遭遇したということは、何かの鍵があそこにあるはず」
メルヴィルも同意し
「私もそう思うわ。黒騎士たちが再び現れた以上、何かが彼らを動かしている。その背後にある力が何なのかを解明しなければならないわね。特にルクス・マグナ遺跡で、あなたたちが最初に黒騎士に遭遇した場所は、何かしらの重要な意味を持っているはず」
「ルクス・マグナ遺跡……」
ステラは、以前の戦いの記憶が蘇ってくるのを感じた。あの時は、リリカと共に魔石の封印を行うために遺跡を探索していた。しかし、そこで出現した黒騎士は彼女たちにとって予想外の脅威だった。
「封印の儀式を成功させるためにも、黒騎士たちが再び出現しないよう、もっと迅速に対応しなければなりません。三ヶ月後に予定されている魔石の封印の儀式を前倒しして準備する必要があるかもしれませんね」ステラは真剣な眼差しで言った。
メルヴィルも頷いて言った。
「ええ、黒騎士たちの脅威が強まっている今、計画を早める必要があるわ。遺跡の探索も、魔石の封印も、すべて同時進行で行うべきよ。もちろん、訓練も加速させる必要があるわね」
ステラは静かに息を吐き、決意を固めた。
「わかりました。リリカや他の仲間たちと共に、早急に準備を進めます。魔石の封印こそが、王国を守る鍵です。そして、メルヴィル、あなたの分析と知識が、黒騎士の正体を解き明かすための最大の武器です」
「ええ、全力を尽くすわ。私も王立図書館のあの猫耳書庫でさらに調査を進め、猫耳メイド魔法使いに関する記録を深く調べてみるわ」
メルヴィルは自信に満ちた表情を浮かべながら、ステラに頷いた。
「え？猫耳書庫？」
ステラはは思わず聞き返した。
「とりあえずね、ただの書庫だと分からなくなってしまうもの。正式名称は『猫耳メイド魔法使い書庫』略して『猫耳書庫』よ！」
メルヴィルは得意げに言った。
ステラは研究所を後にし、ルクス・マグナ遺跡への準備を進めるために、リリカたちと合流することを決めた。魔石の封印が成功しなければ、黒騎士たちの脅威は拡大し続けるだろう。ルクス・マグナ遺跡には、光の魔法がかつて闇の力を封じ込めた記録が残っている。光と闇、二つの力の均衡が崩れた今、その均衡を再び保つための鍵は、彼女たちの手に委ねられている。
「リリカ、私たちの戦いはこれからが本番よ」
ステラは小さく呟きながら、未来への不安と共に、強い決意を胸に秘めていた。黒騎士たちが再び現れた意味を解き明かし、王国を守るための戦いが、今始まろうとしていた――。
