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第84話  剣術訓練⁉ステラ恋の告白!

 エリオスとレオンが猫耳ハウスを訪ねている頃、ステラはメルヴィルの研究所で訓練に励んでいた。その日の訓練は特別だった。六光の騎士であり、騎士団の副団長ラウルが特別講師として招かれていたのだ。


 メルヴィルがステラに言った。


「今日は魔法の使用を一切禁止します。体術だけで勝負よ。ステラ、上に立つ者として、魔法以外の力も示さなければならないわ。特に、魔法を妬む者たちもいるのだから、体術で強さを見せることも大切よ。」


 ラウルはその言葉に頷きながら、ステラに向かって言った。


「剣術の基本から教えます。構え方、踏み込み、足のさばき方などです。よろしくお願いします」


 訓練が始まり、ラウルは剣の持ち方や構え方、攻撃の仕方をステラに丁寧に教えた。ラウルはこれまで数多くの騎士を指導してきたが、ステラの吞み込みの速さには驚かされた。


「あなたは本当に優秀ですね。これほど早く基礎を理解し技術を習得するとは…今まで教えた誰よりも速いかもしれません。」


 と、ラウルが感嘆の声を漏らした。


 メルヴィルは微笑みながら答えた。


「それは当然よ。ステラは私の教え子だもの。彼女はアイドル活動で学んだダンスのステップや振り付けを、一度見ただけで完全にトレースできるんだから。それに、アレンジも加えて、初めてのリハーサルの次の日には完璧なパフォーマンスをするのよ。」


 ラウルはさらに驚き、少し冗談めかして言った。


「大隊長は化物ですね。剣術においても、もう勝てる気がしません。」


 メルヴィルはステラに目を向けて言った。


「さあ、次は実戦形式でラウルと対決してもらうわ。もちろん、魔法は使わないこと。純粋な体術と剣術だけで戦いなさい。」


 こうして、ステラとラウルの剣術試合が始まった。剣は木製とはいえ、当たればかなりの痛みを伴う。試合は体の急所を先に三回突いた方が勝利するというルールだ。メルヴィルが審判を務める。


「準備はいい?始め!」

 

 とメルヴィルが合図した。


 その瞬間、ステラは一気に姿を消したかのように速い動きでラウルの背後に回り込んだ。目を疑うメルヴィルは、一瞬の出来事に驚きを隠せなかった。ステラはメルヴィルにウインクしながら、剣を静かに鞘に収めた。


「何が起きたの?」


 とメルヴィルは内心で思ったが、次の瞬間、ラウルが足元から崩れ落ち、気を失ってしまった。


「大丈夫よ、メルヴィルさん」


 ステラは軽く手をかざすと治癒魔法を施した。ラウルの額にできた小さな傷がみるみるうちに消え、彼はすぐに目を覚ました。


「ステラ様、ありがとうございます。完敗です…」


 とラウルは悔しそうにしながらも、ステラに感謝の意を示した。


「わたしの勝ちね」


 とステラは微笑みながら言い、二人のやりとりを見ていたメルヴィルも微笑みを浮かべた。


 午前中の訓練が終わり、ラウルは着替えを済ませてから提案をした。普段の騎士の装備を脱いだラウルは、その長身と精悍な顔立ちで、さらに魅力的に見えた。


「実は、妻が焼いたパンを持ってきたんです。よろしければ、昼食に一緒にどうでしょうか?庶民的な食事ですが、これがなかなか美味しいんですよ。」


 メルヴィルはその提案に興味を示し


「それは素晴らしいわね。じゃあキッチンへ行きましょう。温かいミルクも用意するわ」


 ステラもお腹が空いていたこともあり


「ラウルさんの奥様が焼いたパンなら、とても美味しそうですね」


 三人はキッチンに移動した。メルヴィルは鼻歌を歌いながらミルクを温めている。ラウルが持ってきた袋からパンを取り出すと、焼きたての香ばしい香りがキッチンに広がった。準備が整うとメルヴィルが嬉しそうに


「いただきましょう。ラウルさんの奥様に感謝して」


 ステラはパンを一口かじると


「美味しい!ぜひ作り方を教えてほしいわ」


「もちろんです。妻に伝えておきますよ。彼女も喜ぶでしょう」


 ラウルは嬉しそうに答えた。


 ステラはふと呟く。


「アレクにこのパンを持って行ったら喜ぶかしら?」


 その言葉に、メルヴィルとラウルは顔を見合わせた。


「アレク?アレクシス王子のことかい?」


 メルヴィルは驚いた表情で尋ねた。


「そうよ、他に誰がいるの?」


 ステラは軽く肩をすくめて答えた。


「でも、いつの間にそんなに親しくなったの?」


 とメルヴィルは興味津々で聞いた。


 ステラは恥ずかしそうに笑いながら


「この前、牧場でデートをして、その日にアレクに『大好き』って伝えたの。次の日にはわざわざ来てくれて、『恋人になってくれ』って言われたから、私もすぐにOKしたのよ」


 とさらりと言ってのけた。


「えっ!恋人同士になったの?!」


 メルヴィルは驚きの声を上げた。


「そうよ。次のデートも楽しみだわ。」


 ステラは笑顔で話した。


 ラウルは話の急展開に完全に取り残された様子で、口を開けたまま呆然としていた。


「これは…大変なことになったわ…」


 メルヴィルは頭を抱えながら言った。そして、ラウルに向かって指示を出した。


「ラウル!この話は他言無用よ!わかっているわね?」


 ラウルは真剣な表情で頷き、「はい、メルヴィル様、もちろんです。」


 メルヴィルはため息をつきながら、「どうしたものかね…頭痛の種がまた一つ増えてしまったわ。」とぼやいた。


 ステラはそんな二人のやりとりにクスッと笑い、「でも、アレクは優しいし、私がしっかり支えるつもりよ。」としっかりした口調で言った。


 ステラは剣術の訓練で圧倒的な実力を見せ、ラウルに完勝した。そして彼女がアレクシス王子と恋人になったことをさらりと告白し、メルヴィルとラウルを驚かせた。恋に対しては天真爛漫なステラに振り回される二人であった――。

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