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第83話  午後のお茶会⁉エリオスの恋心!

 猫耳ハウスでの騒動が収まり、リリカ、エリオス、レオン、セルフィの四人は穏やかに午後のお茶会を楽しんでいた。セルフィが特製のハーブティーを用意し、リリカが温かい笑顔でそれを皆に振る舞った。ほっとした空気が漂う中、リビングには心地よい香りが広がり、チャチャとシスもリビングの片隅で眠っていた。


「やっと落ち着いたわね。さっきは大変だったけど、チャチャとシス、仲良くなってよかった」とリリカが笑顔で言い、みんなも笑いながら頷いた。


「それにしても、リリカ様の力…さっきは本当に驚きました。あの瞬間、生きた心地がしなかったです」とレオンが真剣な表情で話し出す。


「そうよ、リリカ様、猫耳ハウスの消滅の危機でしたよ」


 とセルフィが言うと、リリカは申し訳なさそうに笑いながら頭をかいた。


「だって、チャチャもシスも暴れて止められなかったから…でもごめんなさいね、みんなを驚かせちゃって」


 とリリカは恐縮しながら言った。


 エリオスは穏やかな笑みを浮かべながらリリカを見つめ


「でも、リリカの力は本当にすごいと思うよ。僕は初めて見たけれど、あの場の全てを一瞬で収めたなんて、やっぱり猫耳魔法使いの力は特別だ」


 と感心した様子で言った。


 リリカは少し照れながらも、その言葉に感謝を込めて微笑んだ。そして、話題が自然とエリオスの最近の仕事に移る。


「ところで、エリオスは最近、どんなお仕事してるの?」


とリリカが尋ねると、エリオスは少し身を乗り出して答えた。


「最近は、いろいろな町を視察して回っているんだ。王国全体の状況を確認するのも僕の役割だからね。特に最近は、魔石の封印が弱まっている影響か、各地で小さな異変が起きているみたいなんだ」


 とエリオスが語る。


「へぇ…やっぱり魔石の影響が広がっているんだね。どんな異変があったの?」


 とリリカがさらに興味津々に尋ねる。


「そうだね、たとえば北の町では突然気温が下がったり、南の村では植物が異常に成長して人々が困っていたり。魔石が関与しているかはまだはっきりしてないけど、これまでにはなかった現象が起きているんだ」とエリオスは丁寧に説明した。


「それってやっぱり危ないんじゃない?もし魔石の力がもっと強くなったら、どうなっちゃうんだろう…」リリカは少し心配そうな表情を浮かべた。


 エリオスは真剣な表情で頷き


「だからこそ、僕たちはしっかり準備して、どんな状況にも対応できるようにしなきゃいけないんだ。リリカたちが魔石の封印を成功させることが、今の状況を改善する鍵になる」


 と力強く言った。


 その言葉にリリカも改めて気を引き締め、「私たちも頑張らなきゃね!でも、チャチャが変身できるようになったから、魔石の封印はきっと成功するよ!」


 と笑顔で答えた。


「本当にチャチャの変身、すごかったです。あのメルヴィルさんが口を開けたまま呆然としてましたから!」


 とセルフィが言うと三人はお腹を抱えて笑った。


「まるでリリカ様の分身のようでしたし、これでルクス・マグナ遺跡の攻略も大きく前進しますね」


 と続けてセルフィが自身満々に言った。


 レオンもそれに頷き、


「僕も久しぶりにリリカ様の猫耳魔法使いの力を目の当たりにして、本当にすごいと感じました。でもあのままだったら猫耳ハウスどころか王宮が吹っ飛んでしまうかも…」


 と冗談交じりに言って、みんなで笑った。


「もう、レオンったら!」


 とリリカは笑いながらも、少し恥ずかしそうに返した。


 そんな会話の中、セルフィはふと気付いた。エリオスがリリカをじっと見つめている。その眼差しは、いつもの友人としてのものとは少し違うように感じた。セルフィは内心で「もしかして…」と感じながらも、あえて何も言わず、その様子を見守っていた。


 エリオスは、目の前で楽しそうに笑っているリリカを見つめながら、自分の心の中に芽生えていた感情に気づき始めていた。彼女との日々は何気ないものだったはずだが、最近は彼女を見るたびに胸が高鳴るようになり、その感情が以前とは違うことを感じていた。しかし、王子としての立場や、リリカが持つ特別な使命を考えると、その思いを表に出すべきかどうか迷っていた。


 リリカは変わらずに明るく、元気に会話を続けている。彼女の笑顔は、エリオスにとってどこか安心感を与えるものだった。今はただ友人として隣にいられるだけで満足しているはずだったが、その気持ちが徐々に強くなり、彼女を守りたいという思いに変わり始めていた。


「エリオス?どうしたの?」リリカが不思議そうにエリオスを見つめた。


「え?あ、いや、なんでもないよ」とエリオスは慌てて顔を背けたが、リリカに気づかれないように必死に平静を装った。


 セルフィはそんなエリオスの様子に気づいていたが、リリカがまだそれに気づいていないことを確認すると、心の中でクスリと笑った。「これは面白いことになりそうね」と密かに思いつつ、あえて話題を変えずにお茶を楽しんでいた。


「エリオス、そういえば次に行く町はどこなの?」リリカが話を戻した。


「次は、王都から少し離れた東の町かな。そこでも魔石の影響が懸念されていて、視察の依頼があったんだ。町の人たちはまだそれほど大きな異変を感じていないみたいだけど、予兆はあるみたいだからね」とエリオスは答えた。


 リリカは頷きながら


「やっぱり魔石の封印が急務だね。私たちが早く遺跡を攻略して封印しないと、もっと大変なことになりそう…」


 と心配そうに言った。


「そうだね。でも、リリカたちがいれば大丈夫だよ。君の力はすごいし、きっと成功するよ」


 とエリオスは励ましながら、リリカの顔を見つめた。彼の言葉には、いつも以上に優しさがこもっていた。


 リリカはその言葉に少し照れくさそうに笑って、


「ありがとう、エリオス。あなたがそう言ってくれると、なんだか心強いよ」


 と返した。その無邪気な笑顔が、エリオスの心をさらに揺さぶった。


 エリオスはふと、彼女がいなかったら自分はどうなっていただろうと考える。彼女との出会いが、エリオスにとっては人生を変える大きな出来事だった。リリカはただの友人や仲間以上の存在になりつつある。しかし、その気持ちをどうやって伝えたらいいのか、彼はまだその答えを見つけられずにいた。


 セルフィはそんなエリオスの内心を察し、静かにお茶を飲みながら二人のやり取りを見守っていた。彼女は恋愛感情に敏感な性格であり、エリオスがリリカに対して特別な感情を抱いていることを早くから感じ取っていたのだ。だが、今は二人の関係がどう進むのかを見守る時だと判断し、口を挟まずにいた。


 レオンは何も気づかず、相変わらず自分の特訓の話を続けていた。「僕もリリカ様のように強くなりたい!騎士団に入って、もっともっと成長してみせます!そしたら、一緒に遺跡攻略に参加させてくださいね!」


「もちろん、レオンなら大丈夫だよ。みんなで一緒に頑張ろう!」


 とリリカが励ましの言葉を返す。レオンもその言葉に大いに元気づけられた様子だった。エリオスはリリカのその無邪気な優しさと力強さに、改めて感動を覚えていた。彼女はただ明るく元気なだけでなく、仲間や大切な人々を守るために全力で戦う強い心を持っている。それこそが、彼女に対する特別な思いを抱く理由の一つでもあった。


「ねえ、リリカ。もし今後、もっと大きな試練が待っていたとしても、君なら乗り越えられると思う。君は強いし、僕もずっとそばで支えたいと思ってる」


 と、エリオスは意を決して口を開いた。


 リリカは少し驚いた表情を見せたが、すぐに笑顔に戻って


「ありがとう、エリオス。」


 と優しく答えた。その言葉に、エリオスの胸の中で小さな希望が生まれた。


 セルフィはそのやり取りを見て


「やっぱりね…エリオス様、リリカ様に気持ちを伝えたいんじゃない?」


 と心の中で呟いたが、あえて何も言わなかった。


 お茶会は和やかに進み、話題はどんどん広がっていった。エリオスはこれまでの視察で感じたことを話し、リリカたちは彼の話に真剣に耳を傾けた。レオンは騎士団の入団試験について語り、セルフィは彼にアドバイスを送った。


 そして、エリオスの心の中では、リリカへの思いがますます膨らんでいった。


「いつか彼女にこの気持ちを伝えたい。けれど、今はまだその時じゃない。彼女の側にいて、彼女を守り続けることが、今の僕にできることだ」


 と彼は心に誓った。


 リリカはそんなエリオスの思いに気づかないまま、仲間たちと楽しい時間を過ごしていた。彼女にとって、エリオスは信頼できる友人であり、頼りになる存在だった。しかし、彼女自身もまた、心の中で少しずつエリオスに対する特別な感情を感じ始めていたのかもしれない。


 その日の午後、お茶会が終わり、エリオスとレオンが猫耳ハウスを後にする時、エリオスはリリカの方を振り返り、しばらくその姿を見つめていた。リリカも彼に向かって手を振り、笑顔で見送る。


「また会おうね、エリオス!」


 とリリカが言うと、エリオスは微笑んで


「うん、またすぐに」


 と答えた。


 こうして、エリオスの心に芽生えたリリカへの特別な思いは、まだ言葉にはならなかったが、彼の中で確かに成長しつつあったのだった。彼がその気持ちをリリカに伝える日は、そう遠くない未来に訪れるかもしれない――。

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