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第80話  甦るチャチャの記憶⁉夢と現実の狭間で!

 再びルクス・マグナ遺跡の攻略に向け、猫耳魔法大隊が本格的に動き出した。以前、ステラたちが挑んだルクス・マグナ遺跡。だが、黒騎士との戦いで全ての魔石の封印は完了できず、その魔石たちは再び復活の兆しを見せ始めていた。猫耳魔法大隊には再度、遺跡の魔石封印という重要な使命が課され、皆は再び過酷な訓練を始めた。


 リリカもまた、チャチャとの連携を成功させようと日々焦りを感じていた。チャチャは、リリカにとってかけがえのない存在だが、その力を完全に引き出し、戦いの中で発揮することは容易ではなかった。特に、リリカ自身の魔力をチャチャに的確に注ぎ込み、彼女と一体となって戦うのは、今まで以上に難しい挑戦だった。


「どうして上手くいかないんだろう…」


 リリカはチャチャに魔力を注ぎながらも、焦りを隠せなかった。どれだけ訓練を重ねても、チャチャは力を十分に発揮することができず、リリカは無力感に苛まれていた。


「もっと集中しなきゃ…でも、どうしても何かが足りない…」


 リリカは訓練場で独り言を呟きながら、再びチャチャに魔力を送るが、変化はほとんどなかった。彼女の焦りは日増しに強くなり、ついにはそのプレッシャーに押し潰されそうになっていた。


 その夜、リリカは不思議な夢を見た。夢の中、彼女は黒騎士に追い詰められていた。何体もの黒騎士が彼女を囲み、迫り来る恐怖にリリカは戦慄していた。魔力がうまく使えず、彼女はその場に立ちすくんでいた。


「もうダメだ…」


 そう言ってうつむくと足元にチャチャが現れた。


「チャチャ?…どうしてこんなところに?危ないじゃない!」


 焦るリリカ。その時だった。


 チャチャの体が真っ赤な炎に包まれたかと思うと、渦を巻き込きどんどん大きくなっていく。そして炎の渦が消えた瞬間。変身したチャチャの姿がそこにあった。それはリリカが知っている可愛らしいチャチャではなく、まるで別の存在だった。チャチャは炎を宿した赤い瞳を輝かせ、体は黒く巨大な姿に変わっていた。額の水晶は真っ赤な炎の角となり、尻尾は何もかも切り裂く剣のようだった。そして全身から燃え盛るような熱気を放っていた。チャチャはリリカを守るため、咆哮を上げると、オレンジ色の眩い閃光を発した。


 その閃光は瞬く間に黒騎士たちを飲み込み、彼らを跡形もなく消し去った。リリカはその圧倒的な力に驚愕した。

そしてフラッシュバックのように過去の記憶を思い出した。あの日チャチャにはじめて出会った日の事を。野良猫だったチャチャはまだ子猫で毛並みは汚れ瘦せ細っていた。リリカの目を真っ直ぐ見つめ必死で鳴くチャチャ。リリカは思わずチャチャを抱きしめていた。


「チャチャ…」リリカは呟くと、目を覚ました。


 目が覚めた後も、夢の中の光景は鮮明に記憶に残っていた。


 リリカはいつものように枕を抱えてステラの寝床に潜り込むと、そのまま深い眠りに落ちた。


次の日も訓練場では、リリカが訓練に励んでいた。チャチャの額に手を当てて魔力を注入する。その時ふと夢の中で見たチャチャの姿が彼女の脳裏をよぎる。


「チャチャ…夢の中のチャチャはすごかった…」


 リリカはそう呟くと、夢の中のチャチャの姿を思い浮かべていた。


 夢の中で見たチャチャの赤い瞳、黒く鋼のような体、剣のような尻尾を思い描きながら、さらに強く魔力を注ぎ込んだ。その時、チャチャの体が突然眩しい光と炎を放ち始めた。


「えっ…なに?」


 リリカは驚きと共にその変化を見つめた。


 周囲で見守っていたステラとメルヴィルも、何か異変を感じ取り、目を見張った。チャチャから放たれる光と炎の魔力は、今まで感じたことのないほど強大で、訓練場全体を包み込むような力だった。


「危ない!みんな下がって!」


 メルヴィルが叫び、急いで全員に指示を出した。


 あまりの膨大な魔力に、訓練場は一瞬で緊張感に包まれた。ステラは瞬時に反応し、水の防御魔法を発動してメルヴィルとセルフィを呼び寄せる。ステラの周囲に張り巡らされた防御の水壁は、チャチャの暴走するかもしれない魔力を何とか抑え込もうとしていた。


「リリカ、危ないわ!これ以上は!」


 ステラが必死に叫ぶが、リリカは全く動じない。


 リリカ自身もチャチャに連動するように、全身から炎と光の魔力を発っしはじめた。赤くなった瞳が炎を宿していた。


 リリカは振り返るとステラ達に語りかける。


「大丈夫だから…そこで見てて」


「リリカ…」


 ステラが今にも消えそうな声で呟く。赤い瞳のリリカは無表情で、まるで別人格のようだった。



 チャチャの体はますます大きくなり、その赤い瞳がさらに鋭く光を放っていた。


 メルヴィルは冷静に状況を見守りながら、リリカに対して指示を出し続けた。


「リリカ、もう十分よ!これ以上続けるとあなたの体が持たないわ!一旦止めなさい!」


 だがリリカは動じる事もなく魔力を注ぎ込み続けている。チャチャの体は光と炎の塊となり、さらに渦を巻き始めた。


「リリカ、もう無理よ!止めて!」


 ステラは再び叫び、リリカに魔法の力を注ぎ込むのをやめさせようとした。


 その時、チャチャの体から強烈な光が放たれ、ステラ達は眩しさにおもわず目をつぶった。その瞬間、ステラは訓練場全体に漂っていた魔力が波が引くようにすっと消えていくのを感じた。張りつめた空気が和らぎ場内は静まり返る。やっとのことで目を開けたステラ。しかし目の前の光景を見て愕然と立ち尽くすだけだった。


 夢でみたチャチャを思い出すリリカ。すると突然リリカとチャチャに異変がおこる。炎と光を宿したチャチャの体は、彼女自身の魔力と連動するかのように強大になり、訓練場全体を包み込んだ。リリカの限界を超えた挑戦の果てに、彼女とチャチャが共に目指す力はついに覚醒の兆しを見せるのだろうか?――。

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