第78話 超常現象猫神おろし⁉猫耳の謎!
翌日も、猫耳ハウスでは早朝からリリカが目を覚まし、訓練に向けて準備を整えていた。昨日の訓練では、光と炎の混合魔法がうまくいかず、思うような成果が出せなかったことに悔しさを感じていた。今日はどうにかして一歩でも前に進みたいと、リリカは決意を新たにしていた。
「さあ、今日も頑張るわよ!」
リリカは自分に言い聞かせるように、チャチャの額の水晶に向けて手をかざした。
チャチャはリリカの魔力を感じて、静かに目を閉じ、彼女の魔力を受け入れる準備を整えていた。しかし、リリカがどれだけ集中して魔力を注ぎ込んでも、光と炎がうまく融合せず、魔法の力が分散してしまう。チャチャの姿が少し変わりかけるが、すぐに元の姿に戻ってしまう。
「くっ…また失敗…」
リリカは悔しそうに呟き、額に浮かんだ汗を拭った。
「焦らないで、リリカ。私も最初は光と水をうまく混ぜるのに時間がかかったわ。まずは感覚をつかむことが大事よ」
とステラが穏やかにアドバイスをした。
「そうですよ、リリカ様。まだ2日目ですから、焦ることはないです。私たちがついていますから!」
セルフィも元気づけるように励ますが、リリカの顔にはまだ焦りの色が消えない。
その様子を見かねたメルヴィルが近づき、リリカに落ち着いた声で言った。
「リリカ、焦りは禁物よ。まだ2日目なんだから、そんなに急いでもうまくいかないわ。少し深呼吸して、心を落ち着けてみなさい。あなたの魔力はステラに引けを取らないはず。ただ、まだ何かのきっかけが必要なだけよ。」
メルヴィルの言葉にリリカは少しだけ心が軽くなり、深呼吸をして気持ちを整えた。そして再び集中し、ステラが光と水の混合魔法を行い手本を見せる。リリカはその動きをじっくりと観察した。
ステラの手の動きや、魔力の流れを丁寧に追いながら、リリカは自分に同じことができるのかを模索した。ステラの指先から放たれる青白い光が、チャチャの額の水晶に吸い込まれていく。チャチャの体がすぐに青白く輝き始め、彼の姿は瞬く間に変わっていった。ステラの魔法は完璧に機能しているのがわかる。
「やっぱり、ステラはすごい…」リリカは心の中で感心しながらも、どうにか自分もこの技を習得しようと奮闘するが、今日も完全に成功することはなかった。
「今日はここまでにしましょう」
メルヴィルが訓練の終了を告げ、リリカはがっかりした表情を浮かべた。
「…ダメかぁ~…」
リリカは悔しそうに言葉を漏らした。
「焦らなくていいのよ、リリカ。毎日少しずつ進んでいけば、必ず成果が出るわ」
とステラが優しくリリカの手を握り励ました。
その後、三人は午後の勉強会に向かい、リリカは集中しながらも心の中に残る疑問をふいにメルヴィルに投げかけた。
「メルヴィルさん、私たちは一体どこから、どうやって来たんですか?どうしてこの世界にいるのか、何か知ってますか?」
リリカの問いかけに、メルヴィルは少し間をおいてから答えた。
「そうね、それについてはいずれ話すつもりでいたけど、確かなことはわからないわ。ただ猫神古文書の解読を元にした私の推測だけど、話してあげるわね。」
ステラとリリカは真剣な表情でメルヴィルの話に耳を傾けた。
古文書にの一文に
「猫神おろし」「光陰の矢伝説」
という言葉があるの。
「私たちが今いるこの世界、エルフェリア王国がある『ラテス』という星も、無数に存在する宇宙の中の一つよ。宇宙はとても広大で、その中に数え切れないほどの星や天体が存在しているの。その宇宙同士が膨張して他の宇宙と接触した時、そこで歪みが生じることがあるわ。その歪みの中に引き込まれてしまった存在が、光魔法の矢に導かれてこの世界にやってくる…つまり、あなたたちのようにね。」
「歪み…?」リリカは戸惑いを隠せなかった。
「ええ。猫神おろしのような現象が、この世界では実際に起きているの。宇宙のエネルギーを吸収し、異なる次元からこの世界に引き込まれてくるの。あなたたちはその影響で、強大な魔力を手に入れ、猫耳の姿になったというわけ。」
「それじゃあ、私たちは猫神おろしにあって、この世界に来たと…? そしてその影響で猫耳に?」
ステラが驚いた表情で確認すると、メルヴィルはゆっくりと頷いた。
「そう。もちろん、これはあくまで仮説だけれどね。でも、その力のおかげであなたたちは今ここにいる。そして、その力を持って、この世界で生きていく使命があるのよ。」
二人は言葉を失った。別の宇宙からこの世界に来て、猫耳になったという仮説は、あまりにも壮大で、受け入れるのに時間がかかるものだった。
「そうか!私、知ってるかも?」
リリカが突然叫んだ。
「神隠しって言ってね・・・。人が突然消えてしまう現象。それだ!私、神隠しにあったのかも」
リリカは曖昧な記憶を必死に思い出した。
メルヴィルは少し考えてから答えた。
「神隠し?・・・。そうね、神隠しと猫神おろしは同じ現象かもしれないわね」
「メルヴィルさん。私たち、また急に元の世界に戻ったりするのかな?」
リリカが申し訳なさそうに質問する。
「可能性がないわけではないわ。ただ、それには多くの力と時間が必要になるでしょう。この世界であなたたちが持っている力が、宇宙のエネルギーによって変わっている以上、元の世界に戻ることは非常に難しいことだと思うの。」
リリカは少し考え込んだが、やがてふっと笑みを浮かべた。
「でも、猫耳になれてよかった。ステラやメルヴィルさん、セルフィ、アレク…たくさんの大切な人に出会えたし、、ここで頑張るしかないもん!」
リリカの言葉に、ステラは胸が熱くなり、彼女を強く抱きしめた。
「本当に立派よ、リリカ。私も同じよ。猫耳になれたおかげで、あなたに会えたんだもの。だから、後悔はしていないわ。」
その言葉に、メルヴィルも優しい微笑みを浮かべながら、二人を見て思った。
「そうね。あなたたちにはまだ多くの試練が待ち受けているけれど、きっと乗り越えられるわ。」
こうして、リリカは自らの力と向き合い、ステラやメルヴィル、そして仲間たちと共に新たな挑戦に立ち向かう決意を固めたのだった。自分がどこから来たのか、その謎はまだ完全には解けていない。しかし、今ここで出会った人々との絆が、リリカにとって何よりも大切なものであり、これからも力となることは間違いない。彼女は未来に向かい、強く前進していくのだった――。




