第73話 メルヴィルの猛特訓⁉ステラの実力！
リリカはチャチャを第一形態に変身させることに成功し、その場の緊張が一気に解けた。見守っていたステラとセルフィも手に汗を握りながらその瞬間を待ち、リリカがやり遂げたことに思わず拍手を送った。
「リリカ、よくやったわ！」
ステラは微笑んで、リリカの健闘を称えた。
セルフィもリリカの手をとり
「すごいわ、リリカ様！本当によく頑張りましたね！」
と感嘆の声を上げた。
リリカは二人の言葉を聞き、ホッとした表情を浮かべる。しかし、そのまま地面にへたり込んでしまい、肩で息をしていた。
「もうダメ…疲れちゃったよ…」
リリカは弱々しく笑いながら、息を整えようとしていた。
チャチャも同時に元の姿へと戻り、その場に小さくうずくまった。訓練は過酷で、リリカは体力的に限界を迎えていた。
メルヴィルはそんなリリカに近づき、優しく声をかけた。
「リリカ、よくやったわ。今日の訓練はここまで。」
「ありがとう…でも本当にもう動けないよ、メルヴィルさん…」
リリカはぐったりとした様子で力なく笑った。
しかし、メルヴィルはすぐにステラに目を向け
「それでは、ステラ。次は見本を見せてあげて」
と言った。
「え？私？」
突然の指名に、ステラは驚いた表情を浮かべた。
「そうよ。チャチャに光魔法を注いでみて。リリカにも参考になると思うわ」
とメルヴィルは指示を出した。
「わかりました」
とステラは少し緊張しながらも、落ち着いた表情でチャチャに向き合った。彼女は人差し指をチャチャの額の水晶に向け、深呼吸をしてから、ゆっくりと魔力を集中させた。
「いきます！」
ステラは力強く言い放ち、彼女の指先から青白い光が放たれた。その光はまるで一本の糸のように、チャチャの額にある水晶へと真っ直ぐに繋がった。
次の瞬間、チャチャの体が青白い光を放ち始め、その光はますます強烈になっていった。リリカとセルフィはその眩しさに思わず目を閉じてしまった。
「すごい…」
リリカは小声でつぶやきながら、恐る恐る目を開けると、そこにはさらに大きく成長したチャチャの姿があった。
チャチャは先ほどの第一形態を超え、さらに大きく美しい第二形態へと変身していた。体全体が青白い光で輝き、水色の瞳はステラの瞳のよう。白く美しい毛並みと細い足が特徴的で、周囲には優雅に漂う数匹の水龍が姿を現していた。
「まるで、チャチャにステラが乗り移ったみたい…」
リリカは驚きの声を上げ、まさに神々しい姿を目の前にした。
メルヴィルも満足そうに頷き
「第二形態、つまりチャチャのステラバージョンってところかしら」
と解説した。
ステラはチャチャに抱き着くと
「メルヴィルさん、こんな感じで大丈夫ですか？」
と、何事もなかったかのように確認する。
リリカはその様子を見て、改めてステラの力に驚いた。自分が第一形態にするだけでも疲労困憊で今にも倒れそうなのに、ステラは汗一つかかず、しかもチャチャを第二形態にまで変身させている。
「やっぱり、ステラはすごいな…」
リリカは息をつきながら、ステラの才能に感心せずにはいられなかった。
メルヴィルは静かにステラに目を向け
「リリカ、ステラは実は光と水の混合魔法を無意識に使っているの」
と明かした。
「え？光魔法だけでも大変なのに、混合魔法まで…？」
リリカは驚きを隠せず、信じられないという表情でステラを見つめた。
「そうよ。光魔法と水の魔法を同時に制御するのは簡単なことじゃないわ。でもステラは自然にそれをやってのけているの。だから、彼女の光魔法は一層強力で、美しいものになるの」
とメルヴィルは説明を続けた。
ステラはその言葉に謙遜した様子を見せながらも
「でも、リリカもどんどん力をつけているわ。すぐに私にも追いつけると思う」
とリリカを励ました。
「本当にそう思う？」
リリカは不安げに尋ねた。
「もちろんよ。あなたなら絶対にできる。だって、こんなに頑張っているんだもの」
とステラは優しく微笑みながら言った。
リリカはその言葉に少し照れくさそうにしながらも、ステラの励ましに勇気をもらった。
「ありがとう、ステラ。私ももっと頑張る…もっと強くなる！」
ステラはリリカを抱きしめて言った。
「その意気よ、だって私とあなたライバル同士でしょ？唯一無二のね！」
その瞬間、チャチャが再び鳴き声を上げ、第二形態から元の姿へと戻った。リリカもステラもその姿を見てクスっと笑いあった。
「今日の訓練は大成功ね」
とメルヴィルは微笑みながら、満足げに頷いた。
リリカにとって、今回の訓練は自分の力を一段と高めるための大きな一歩となった。そして同じ猫耳のライバルとして、ステラの底知れぬ力をあらためて知ることができた。次なる試練に向けて、一層の決意を胸に秘めるリリカであった――。
