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第72話  メルヴィルの猛特訓⁉リリカの光魔法!

 朝日が窓から差し込む猫耳ハウス。ステラはリリカの柔らかな尻尾が顔に触れる感覚で目を覚ました。隣で寝ているリリカはまだ夢の中のようで、規則的な寝息を立てている。セルフィが朝食の準備をしているのか、厨房からは美味しそうな匂いが漂ってきた。


 ステラはベッドからそっと起き上がり、鏡に映った自分の顔を見る。まぶたは少し赤く、目の下には薄いクマができていた。昨晩、嬉しさのあまり泣いてしまったことを思い出し、苦笑した。「こんなに泣いたのは久しぶり…この世界に来てから、最初の頃は泣いてばかりでメルヴィルさんを困らせてばかりだったっけ。」そんなことを思い出しながらも、自分が嬉し泣きするなんて、と少し信じられない気持ちがよぎった。


 昨日のアレクとのデートのことを思い出すと、自然と顔が赤くなり、恥ずかしさで胸がいっぱいになるステラだった。


 すると、コンコンとノックの音がし、セルフィが部屋に入ってきた。「ステラ様、おはようございます。リリカ様は…まだ寝てますね。起きてください。朝食の準備ができましたよ。」


「ありがとう、セルフィ。リリカは私が連れて行くわ。」ステラは微笑んで答えた。


 セルフィは軽く会釈をして部屋を出ていった。ステラは寝ぼけているリリカに近づき、彼女の耳にそっと息を吹きかけた。リリカの猫耳がピンと立つその瞬間、ステラはやさしい声でリリカの耳元にささやいた。


「リリカ、起きなさい。」


「ニャ!」っとリリカは一声鳴き、むくっと起き上がった。大きく背伸びをしながら、眠そうな目でステラを見つめる。そんなリリカの様子にステラはクスッと笑い


「おはよう、リリカ」


 と声をかけた。


 ステラは思った。「いろいろ試したけど、リリカを起こすにはこの方法が一番!今度、セルフィにも教えてあげよう。」


「はい、リリカ。」


 とリリカに枕を渡すと、リリカはそれを抱えたまま歩き出す。ステラはふと考えた。「なんでこの子は朝起きると枕なしでは歩けないのかしら?本当に小さい子供みたい。」時々、どうしようもなくリリカが愛おしくなるステラ。それはアレクに対する想いとはまた違う、母性本能をくすぐられるような感覚だった。


 二人は手を繋ぎながら食堂へ向かった。セルフィの作る食事はいつも美味しい。ステラはふと思い浮かべた。「セルフィの料理教室なんて面白いかも?」


 朝食を終えると、セルフィから今日のスケジュールが伝えられた。


「本日の予定ですが、メルヴィル様の魔法研究所で昨日に引き続きチャチャとの訓練を行います。昼食を挟んで、午後は勉強会の予定です。私も同行いたしますので、準備ができ次第向かいましょう。」


「了解です。」二人は声を揃えて答え、戦闘用のメイド服に着替えるためにそれぞれの部屋に向かった。


 このメイド服は、リリカとステラがこの世界に来た時に身につけていたもので、メルヴィルの調査によると、伝説級の魔法具だということが判明していた。ステラは白いメイド服、リリカは黒いメイド服。それぞれが猫耳メイド魔法使い専用で、魔力を反射し、破損しても再生するという強力な防具だ。ただし、この服は膨大な魔力を消費するため、二人のように特別な力を持つ者にしか着こなせない。


「この服、着る度に思うけど、やっぱり体に馴染んで魔力の流れが良くなる感じがするわ。それに、何より可愛い!」ステラは自分の姿を鏡で確認しながら、心の中でそう呟いた。


 二人は準備を整え、メルヴィルの研究所へ向かった。到着すると、早速チャチャがリリカに向かって駆け寄り、大きな「ニャーオ!」という声をあげた。


「チャチャ!今日も元気そうね!」


 リリカは嬉しそうにチャチャを抱き上げ、その愛らしい姿を抱きしめた。


 メルヴィルが現れ、今日の特訓の内容を説明する。


「今日の訓練は、リリカの光魔法をさらに強化し、チャチャとの連携をもっとスムーズにできるようにします。ステラはリリカのフォローをお願い」


 リリカとステラは頷き、リリカは早速光魔法の訓練に取り掛かった。リリカの光魔法は強力だが、ステラには遠く及ばない。チャチャとの連携をうまく行うためには、もう少し威力とコントロールが必要だった。


 メルヴィルは、まずリリカの魔力の基礎制御を強化するところから始めた。リリカの光魔法は確かに強力であったが、その威力に頼りすぎており、細かな制御や持続力が欠けていた。メルヴィルは言った。


「リリカ、光魔法の本質はただ強く放つことではないわ。エネルギーをコントロールし、必要な時に必要なだけを放出することが肝心よ」


 リリカは魔力を手のひらに集中させ、小さな光の球を作り出した。最初はうまくいったが、球を維持するのに苦労し、すぐに崩れてしまう。


「もっと集中して!意識を手のひらに集中!」


 メルヴィルの鋭い声が響いた。


 リリカは再び試みる。今度はしっかりと意識を集中し、魔力の流れを一点に集めることで、光の球を安定させた。


「いいわ、その調子。その感覚を忘れないように!」


 次にメルヴィルが課したのは、魔法を長時間にわたって維持する訓練だった。これがリリカにとって最も難関であった。持続的に魔力を放ち続けるためには、相当な集中力と体力が必要だった。


「光のエネルギーを放ち続けなさい。ただし、無理に力を入れるのではなく、自然に流れるように魔力を放出することが重要なのよ。」


 メルヴィルは冷静に指示した。


 リリカは全身から光を放つように魔力を集中し始めたが、徐々に疲労が襲ってきた。汗が額を伝い、息が荒くなっていく。


「まだよ、リリカ。限界点はまだ先、ここを乗り越えなければ真の力は引き出せない」


 リリカは再び力を振り絞り、光を絶やさずに放出し続ける。自分の中で魔力が波打つのを感じ、制御が難しくなっていくが、何とか維持しようと必死だった。


「リリカ、魔力を外に放出するだけではなく、自分の体の中で一度循環させてから放出するのよ。」メルヴィルのアドバイスに従い、リリカは呼吸を整え、魔力の流れを体内でコントロールする感覚をつかもうとした。


 その瞬間、リリカの体から放たれる光が安定し、前よりも強力かつ持続的に輝き始めた。


「そうよ、リリカ!その感覚を忘れないで!」


 メルヴィルはリリカとチャチャとの連携を強化するために、リリカの光魔法でいかにチャチャの魔力を増大できるかが重要だと感じていた。


「リリカ、チャチャとの連携は、ただ光魔法を放つだけでは意味がないわ。お互いの魔力が調和し、一つの大きな力となる必要があるの」


 リリカはチャチャの額の水晶に光の魔力を注ぎ込み、チャチャの火の魔力と融合させるように意識を集中させた。しかし、魔力がぶつかり合い、制御が難しくなる。


「力を押し付けるのではなく、チャチャの魔力に寄り添うように。お互いの力を尊重し合うのよ。」


 メルヴィルは冷静に指導を続けた。


 リリカはチャチャの魔力を感じ取りながら、自分の光の魔力を調整した。すると、二つの魔力が徐々に調和し、共鳴し始めた。リリカは深呼吸をし、さらに集中力を高める。彼女の目は決意に満ち、手のひらから放つ光魔法を放ち続ける。チャチャの額の水晶がほんのりと紫色に輝き始めていた。


「行くよ、チャチャ!」


 チャチャはリリカの魔力をどんどん吸収し、額の水晶が輝きを増す。リリカは力を振り絞り力強く声を上げた。


「チャチャ、第一形態!」


 その瞬間、チャチャの体がまばゆい光に包まれ、ひと回り大きなすがたに変身した。その姿はリリカを軽々と越える大きさに成長し、まるで神獣のような威厳を放っていた。額の水晶が鮮やかな紫色に輝き、鋭い牙と爪がいっそう際立って見える。


「やった…!」リリカは息を飲んでその光景を見つめた。


 ステラとセルフィが見守る中、リリカは魔法の制御力と持続力を向上させ、チャチャの変身を成功させる。リリカは自分の魔法力が確実に強くなっていることを感じていた。いくつもの壁を乗り越える彼女の成長ぶりを目の当たりにして、驚きと興奮を隠せないステラとセルフィだった――。

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