第70話 ステラの涙⁉夜の女子会!
猫耳ハウスに戻ったリリカとセルフィは、玄関の扉ををそっと閉じた。家の中は静まり返っており、まるで誰もいないかのような雰囲気だった。二人は顔を見合わせ、急いで灯りをつけた。
「ステラ、どこにいるのかな…?」リリカは心配そうに言いながら、家の中を歩き出した。
セルフィも後に続き、部屋を一つ一つ確認していく。そしてリビングに入ると、そこでようやくステラを見つけた。ステラはソファーに座ったまま眠っている様子だった。
「ステラ…?」リリカが小さく声をかけたが、ステラは反応しない。
リリカがそっと近づくと、ステラの目の周りが少し赤く腫れていることに気がついた。ほほには乾いた涙の跡が残っており、まるで泣き疲れてそのまま眠ってしまったようだった。あの強くて頼もしいステラが、こんなにも弱っている姿を見て、リリカもセルフィもショックを受けた。
「ステラがこんなに疲れ果てるなんて、何があったんだろう…」
リリカは心配そうに呟いた。
「とりあえず、今はこのまま寝かせておいてあげましょう」
とセルフィが提案した。
リリカはうなずき、そっとステラの上に毛布をかけた。セルフィもその姿を見て、静かにリリカに言った。
「お風呂と食事の準備をしましょう。ステラ様が目を覚ましたら、温かいものを食べさせてあげたいですし」
「そうだね。ステラ、きっと疲れてるから、温かいお風呂に入れて、ゆっくり食事させてあげよう」
リリカも同意し、二人は手際よく準備を進めることにした。
リリカはセルフィを手伝いながら浴槽を洗い、温かいお湯を張った。セルフィは、時間が限られているため、簡単でおいしい食事を考え、みんなが好きなグラタンとサラダを作ることにした。リリカも手伝いながら、ふと口を開いた。
「なんだか信じられないね…」リリカはいつも強いステラが、こんなにも脆い姿を見せることに戸惑っていた。
「ステラ様もか弱き乙女ですから、時には弱さを見せることもあるんです。でも、私たちが支えてあげれば大丈夫です」
とセルフィが優しく答えた。
「うん、そうだね。ステラが元気になりますように」
とリリカは頷いた。
しばらくして、お風呂の準備が整った。二人はステラを起こすためにそっと近づいた。
「ステラ、起きて」
とリリカが優しく声をかけると、ステラが目を覚ます。
「ステラ、お風呂が準備できたから、入って温まってきて。セルフィ特製のグラタンも焼いてるよ!」
リリカが笑顔で言うと、ステラはぼんやりと二人を見た。そして、次の瞬間、ステラは突然二人に抱きつき、そのまま泣き出してしまった。
「ステラ…つらかったんだね」
とリリカはそっとステラの背中を撫でながら、優しく声をかけた。
「何があったかは存じませんが。話したくなったら、いつでも聞きます、ステラ様」
とセルフィもステラに寄り添いながら言った。
しばらくステラは泣き続けたが、やがて涙が止まり、二人に抱きついたまま落ち着きを取り戻した。
「ありがとう、リリカ、セルフィ。二人のおかげで少しだけ楽になった…」
「それなら良かった!」
リリカはにっこりと笑って答えた。
「今、お風呂が温まってるから、一緒に入ろう?」
「うん…」ステラは涙を拭いながら頷いた。
三人はお風呂に入り、温かい湯に浸かりながらリラックスした。お湯の中で、リリカは今日の出来事を話し始めた。
「そういえば、今日はチャチャに会ったの!メルヴィルさんがチャチャを訓練していて、すごく驚いたよ!」リリカが楽しそうに話すと、ステラも少し興味を示した。
「チャチャが訓練?それって、どういうこと?」
ステラが尋ねる。
「メルヴィルさんがチャチャに魔力を注ぐことで、回復したり形態を変えたりできるんだって。チャチャが第一形態っていう姿に変身して、すごく大きくなったんだよ!」
「それはすごいわね!」
ステラは少し元気を取り戻し、興味深そうにリリカの話に耳を傾けた。
「チャチャもリリカ様と同じ火属性の魔法を使えるようになったらしくて。リリカ様といいコンビになりそう」
とセルフィが付け加えた。
「猫耳魔法大隊にもしチャチャが加われば、すごいことになりそうね」
とステラは嬉しそうに微笑んだ。
お風呂から上がった三人は、セルフィが作ったグラタンとサラダを囲んで食事を楽しんだ。ステラはグラタンを一口食べると
「セルフィ、あなたのグラタンは本当に最高ね!作り方を教えてくれないかしら?」
と感激の声を上げた。
「それはちょっと代々伝わる秘伝のレシピなので教えられません!」
とセルフィが冗談を言って、リリカとステラを笑わせた。
食事が終わると、ステラが提案した。
「二人さえよければ、今夜は女子会にしようよ。リリカの話ももっと聞きたいし、私も報告があるの」
「いいですね!」
とセルフィが笑顔で答えた。
「お茶とクッキーを持ってきますね!」
何よりステラが元気を取り戻しつつあるようで、リリカとセルフィはそれが何よりうれしかった。
三人はステラとリリカの寝室に集まり、ベッドの上でリラックスしながら会話を楽しんだ。先にリリカが今日のメルヴィルの研究所での出来事を語り始めた。
「メルヴィルさんのところで、チャチャが第一形態に変身して、本当にびっくりしたんだ!森の悪魔だったころとは違って、すごくなんかピカピカしてかっこよくてさ!」
「私も早くチャチャに会いたい、その姿もぜひ見てみたいわ」
とステラが微笑んだ。
「そういえば!リリカ様を背中に乗せて、チャチャが飛んだり跳ねたりすごいスピードで走りまわったりして!私それを見て呆然としてたんです」
とセルフィが興奮気味に話を続けた。
「それはメルヴィルさんが乗りなさいっていうんだもの」
とリリカがふてくされたように言うと、ステラとセルフィはおなかを抱えて笑い出した。
三人は湯上がりのリラックスした雰囲気の中で、次々に話が弾んでいった。ステラも、リリカやセルフィの明るい話に影響され、いつもの元気なステラにすっかり戻っていた。
「ありがとう、二人とも。気を使わせてちゃったみたい」
とステラが感謝の気持ちを込めて二人に言った。
「こちらこそ、ステラ様。いつでも頼ってくださいね!」
とセルフィが力強く答えた。
リリカもそんなステラの姿を見て、安心したように微笑んだ。女子会は夜遅くまで続き、三人はお互いの報告や日常のささいな話題で盛り上がった。そんな中、ステラは二人に相談にのってほしいときりだした。いったいステラに何があったんだろう?あのステラが私達に相談事なんて。ついつい思い悩んでしまうリリカとセルフィだった――。




