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第59話  王宮への帰還!再会の抱擁⁉

 転移の間に漂う微かな魔力の乱れを感じ取ったメルヴィルは、すぐにその違和感に気付き、急いで足を向けた。転移の間に行くことなど、普段の任務ではほとんどない。しかし、今の彼女には強い不安が胸をよぎっていた。リリカ、ステラ、セルフィ、レオンの四人が無事に王宮へ戻ることができたのか――彼らの安全を確認するため、メルヴィルは足早に廊下を駆け抜けた。


 その頃すでに四人は転移の間に立っていた。リリカとステラ、セルフィ、そしてレオンは無事に戻ってきた。彼らが部屋から出ようとした瞬間、メルヴィルが勢いよく扉を開けて飛び込んできた。


「おかえりなさい! みんな、無事でよかった…」


 メルヴィルの安堵の声に、リリカとステラは思わず駆け寄り、彼女に抱きついた。二人は戦士として任務に就いているが、まだ年若い少女でもある。長い冒険の疲労が心にも体にも溜まっていたのだろう。彼女たちにとって、メルヴィルは母親のような存在。どんなに強くても、彼女たちにとっては家族がいる安心感が必要だった。


「メルヴィル…ただいま…」リリカが小さな声で答えると、ステラも続いて言った。「無事に戻れたけど…いろいろあったわ」


 二人の瞳には涙がにじんでいた。メルヴィルは彼女たちの背中をそっと撫でながら、「落ち着いて、もう大丈夫よ」と優しく声をかけた。彼女のぬくもりが二人の心を癒し、二人は少しずつ安心したようにメルヴィルの胸に顔をうずめた。


 セルフィは、少し離れた場所でその様子を見守っていたが、彼女もどこかほっとした表情を浮かべていた。そしてレオンも、無事に戻ってきたという安堵感を隠せず、肩の力が抜けたように見えた。


 「何があったの? あなたたちの格好を見ていると、そう感じるわ」とメルヴィルは鋭い目で彼らの姿を見つめた。確かに、みな任務にしては鎧や防具を一切身に着けず、小奇麗な服装をしている。


「まあ、色々あったんですけど、無事に帰ってこれたので…」レオンが少し申し訳なさそうに言うと、セルフィも頷いた。


「そうですね。特に私とレオンはいろいろありましたけど…まあ、大丈夫です」


「そう…なら良かった。でも、まずはしっかり休んで。リリカとステラ、それからセルフィも、一旦猫耳ハウスに戻りなさい。レオンも自宅に戻って、体を休めること。昼食を取った後で、研究所に来てくれないかしら? 任務の詳細を聞かせてもらいたいの」


 メルヴィルの指示に、四人はすぐに頷いた。彼らも疲れていたため、少しの休息が必要だと感じていたのだ。


「わかったわ。じゃあ、一旦戻って準備を整えたら、またメルヴィルの研究所に集合するね」リリカはそう言って、メルヴィルにもう一度感謝の笑顔を見せた。


 猫耳ハウスに戻ったリリカ、ステラ、セルフィは、それぞれ自分たちの部屋で休息を取ることにした。疲れ果てていた彼女たちは、柔らかなベッドに横たわると、すぐに眠りに落ちていった。冒険の疲れ、そして転移の不安定さが残した疲労感が、静かに体を蝕んでいたのだ。


 一方、レオンも自宅に戻り、服を脱ぎ捨てて一息ついた。彼もまた、無事に帰還できたことに感謝しつつ、短い休息を取ることにした。


 昼食を終えた四人は、午後になってメルヴィルの研究所に再集合した。研究所は王宮の一角にあり、古代の書物や魔道具が並ぶ静かな場所だった。そこには膨大な量の資料が整理されており、メルヴィルがいつも研究に没頭している姿が目に浮かぶ。


「さあ、みんな。無事に戻ってきたことは本当に嬉しいけれど、今回の任務で何があったのか、詳しく聞かせてもらえるかしら?」メルヴィルは静かに問いかけた。


 リリカが最初に口を開いた。


「まず、遺跡探索の途中で、古代の魔石に遭遇しました。でも、その魔石を触ろうとした瞬間、突然魔物が現れて…」


 彼女は詳細に状況を説明し始めた。魔石を守っていた土の魔犬獣との戦い、そしてリリカとステラが融合魔法『炎水龍』を発動し、何とか撃退したこと。レオンもその間、奮闘しながら仲間を守り、セルフィが封印を施した広間の魔石についても詳しく語られた。


「それで、何とか魔物を撃退したんだけど…あの黒騎士が現れて、レオンが危ないところを助けようとしたセルフィもやられかけたんだ」


 リリカは悔しそうに続けた。


「黒騎士…?」


 メルヴィルは眉をひそめ、真剣な表情を浮かべた。


「まさか、それほど強力な敵が現れるとは思わなかったわ。詳細はもっと調査しないといけないわね」


「はい…その後、ステラが私たちの命を救ってくれて、彼女の治癒魔法のおかげでレオンも回復しました。けど、リリカ様が最終的に覚醒して黒騎士を倒してくれました」


 セルフィが誇らしげに続けた。


「そうだったのね…。それにしても、リリカがまた新たな力を開花させたのは喜ばしいことだけど、それと同時に、この任務は危険なものだったのね。よく無事で戻ってきてくれたわ」


 メルヴィルは、彼女たちが遭遇した危険な出来事に驚きつつも、無事に戻ってきたことに深い安堵を感じていた。


「これからは、もっと注意深く任務を遂行してもらう必要があるわね。でも、よくやってくれたわ。ありがとう。少し休んで、次の準備に備えましょう」


 メルヴィルの優しい言葉に、四人は少しほっとした表情を浮かべた。


 メルヴィルの元で語り合った今回の任務の経験が、今後の彼らの成長につながっていくことを、彼女たちは確信していた――。

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