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第56話  幼馴染みの二人⁉湖畔での昔話!

 朝日が湖畔を照らし、黄金色の光が水面に反射して美しい輝きを放っていた。レオンは、湖畔のベンチに座り、支配人からもらった温かいお茶をすすっていた。穏やかな朝の空気に包まれ、湖を眺めながら、リラックスした気持ちで時を過ごしていた。


「久しぶりにこんなに静かな時間を過ごせるなんて、贅沢だな…」


 レオンはつぶやき、しばしの安らぎを味わった。これまでの任務や戦闘の激しさを思い返すと、今この瞬間がいかに貴重かがよくわかる。彼の心は一時的にでも落ち着きを取り戻していた。


 支配人も朝の空気を楽しむように、穏やかに湖を眺めながらお茶を飲む。


 そんな静かな時間を楽しんでいると、背後から軽やかな足音が聞こえてきた。振り返ると、そこには少し不機嫌そうな顔をしたセルフィが現れた。彼女は不満そうにレオンと支配人を見つめ、腕を組んでいた。


「ちょっと!二人でお茶なんてズルいじゃない!私も混ぜてよ!」


 セルフィは膨れっ面をしながら、レオンの隣に腰掛けた。レオンは苦笑いしながら支配人に目を向けた。


「なんだよ、セルフィ。君を起こさなかったのは、君がまだぐっすり寝ていたからだよ」


「寝ていたからって、それは理由にならないわ!朝のお茶はみんなで楽しむべきでしょ?」


 セルフィは頬を膨らませて不満を表したが、すぐにその顔を和らげた。支配人は笑顔を見せ、優しくセルフィに言った。


「申し訳ありません、セルフィ様。ぜひ一緒にお楽しみください。私はこれからホテルの業務がございますので、失礼させていただきます」


 支配人は立ち上がり、二人に軽くお辞儀をして去っていった。その後ろ姿を見送ったセルフィは、再びレオンの方に向き直り、お茶をねだるように手を差し出した。


「私にも一杯頂戴!」


「仕方ないな…ほら」


 レオンは笑いながら、セルフィにお茶を差し出した。セルフィは満足そうにそれを受け取り、一口飲んで深いため息をついた。


「ふぅ~、このお茶美味しい!最高ね!」


 二人はしばらく湖畔でお茶を飲みながら、穏やかな時間を過ごした。やがてセルフィは、ふと思いついたようにレオンに向かって話し始めた。


「ねえ、レオン。私、また四人で任務に就きたいと思ってるの」


 セルフィは真剣な表情でそう言いながら、湖に視線を向けた。レオンもその言葉に耳を傾け、静かにうなずいた。


「俺もそうだ。あの黒騎士との戦いは本当に大変だったけど、リリカやステラと一緒に戦えるのは心強かった。それに、仲間たちとの戦いは楽しいし、何より安心できる」


「うん。リリカ様はあんなに明るくて元気で、ステラ様はいつも冷静で頼りになる。私ももっと強くなって、あの二人を支えたいの」


 セルフィの言葉には強い決意が込められていた。彼女もまた、リリカやステラと共に戦う中で、自分の成長を強く望んでいた。


「特にリリカ様は、私たちの副隊長だけど、まだ不安定な部分も多いし。彼女が危険な目に合わないように、もっと私たちがサポートできるようになりたい」


「そうだな。リリカ様はまだ若いし、これから成長していくはずだ。でも、彼女を守るのは俺たちの役目でもある」


 レオンはセルフィの言葉に深く共感し、静かに頷いた。彼自身もリリカを守りたいという思いが強く、そのために自分がもっと強くなる必要があると感じていた。


「ところで、セルフィ。君はこれからどんなことを目指しているんだ?」


 レオンがそう尋ねると、セルフィは少し考え込んだ後、笑顔で答えた。


「私はもっと隠密行動を極めたいわ。あの戦いではそれなりに役に立ったけど、まだまだ未熟だと思うし。それに、戦闘でもっとリリカをサポートできるようになりたいの」


「君の隠密行動は凄かったよ。あの黒騎士との戦いでも、君のサポートがなければ勝てなかった。これからも君のその力は、俺たちにとって大きな武器だ」


 レオンの言葉に、セルフィは少し照れくさそうに笑った。


「ありがとう、レオン。でも、もっと強くならなきゃね。私たちが力を合わせれば、どんな敵にも勝てる気がするわ」


「その通りだな。これからも俺たちは、どんな困難にも立ち向かえるはず」


 二人はお互いの近況やこれからの任務について語り合い、しばしの安らぎを楽しんでいた。しかし、ふとした瞬間、セルフィが昔のことを思い出したように微笑んだ。


「ねえ、レオン。覚えてる?私たちが初めて出会った頃のこと」


 セルフィが言うと、レオンは一瞬驚いた顔をしたが、すぐに微笑みを浮かべた。


「もちろん覚えてるさ。あの頃、俺たちはまだ子供だったけど、君はすでに俺よりずっとしっかりしてたよな」


 セルフィは照れくさそうに笑いながら、湖に視線を戻した。


「あの時のレオンは、まだまだ落ち着きがなくて、いつも私に頼ってばかりだったじゃない。少し無鉄砲だったし」


 レオンは苦笑いしながら頷いた。


「そうだったかもな。君には随分助けられたし、頭が上がらなかったよ。でも、あの頃は本当に楽しかった。何も考えず、ただ無邪気に一緒に遊んでたな」


「そうね…」セルフィは懐かしそうに思い出に浸りながら続けた。「覚えてる?初めて一緒に森で迷子になった時のこと。私たち、道に迷って、夜になっちゃって…その時、レオンが『俺が守ってやる!』って言ったんだけど、すぐに泣き出したのよね」


 レオンは顔を赤らめながら、笑いをこらえきれずに言った。


「あぁ、そうだったな!君に慰められて、結局君が先に俺を守ってくれたんだよな。あの時の俺は、本当に情けなかったな」


 セルフィはその話を聞いて大笑いしながら言った。


「でも、その後もレオンは何度も挑戦したでしょ。森での探検、近くの湖で泳いだこと、山に登ったこと…全部レオンがリーダーで、私が後ろからついて行ったのよ」


「うん、君はいつも俺を助けてくれてたな。あの頃から君は強くて賢かった。だから、今でも君の隠密行動にはいつも驚かされるんだ」


 レオンは素直にそう言い、セルフィの強さに感謝の気持ちを込めた言葉をかけた。セルフィは少し照れながらも、昔のことを思い出すと同時に、今の自分たちがどう成長したかを感じていた。


「レオンも変わったわ。昔は頼りなかったけど、今は頼れる騎士見習いになったもの。私、誇らしいわよ」


「いやいや、まだまだ未熟さ。君のように、六光の騎士には程遠い」


 レオンは謙遜しながらも、セルフィの称賛に少し自信を持てたようだった。セルフィはそんなレオンを見て、再び昔の話に戻る。


「でも、あの頃から私たちの夢は同じだったよね。いつか騎士団に入って、国を守るんだって。私たち、二人でいつもその夢を語ってた」


「そうだったな。俺は何度も騎士団の試験に落ちたけど、君は一発で合格して、六光の騎士にまで上り詰めた。本当に尊敬してるよ、セルフィ」


 セルフィは少し恥ずかしそうに笑いながら、軽くレオンの肩を叩いた。


「やめてよ、そんなに持ち上げないで。でも、確かに私は先に合格しちゃったけど、レオンだって今は立派に頑張ってる。お互いこれからも成長していかなくちゃね」


 二人はそう言って、再び湖に目を向けた。懐かしい昔話に花を咲かせながらも、今の自分たちがどれほど成長し、そしてこれからどんな未来を切り開いていくのかをお互いに確認していた。


「そうだな。また、二人で任務に出られるのが楽しみだよ。あの頃の俺たちみたいに、無鉄砲に挑戦していくんじゃなくて、ちゃんと計画的に…でも、きっと楽しい冒険になるだろうな」


「ええ、一緒に戦いましょう。今度は、もっと強くなった私たちでね」


 セルフィとレオンは、幼馴染としての絆を再確認しながら、これからの任務に向けて新たな決意を胸に抱いた。


 二人は、穏やかな湖畔の朝にしばらく浸りながら、幼馴染としての深い絆を感じていた。これからの冒険が、さらに強く成長した二人を待っていると信じて――。

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