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第46話  湖の観光地⁉ドラゴン討伐の地!

 馬車は揺れながら進み、夕暮れが近づくと、空はオレンジ色に染まり始めた。ステラ、リリカ、セルフィは馬車の中でしばらく仮眠を取っていたが、車輪のリズムに揺られながら目を覚ました。


「ん…ここは…?」


 リリカが周囲を見回すと、ステラとセルフィも同じように目をこすりながらゆっくりと起き上がった。馬車の窓の外は、夕陽に照らされて黄金色の景色が広がっている。


「夕方ね。かなり寝ちゃったみたい」


 ステラが伸びをしながら言うと、セルフィも窓の外を見て頷いた。


「寝てるうちにずいぶん進みましたね。でも、この景色は素晴らしいです。夕日に染まる丘なんて、なかなか見られないもの」


 馬車は丘をゆっくりと登り、登り切った先には絶景が広がっていた。眼下には広大な湖と、その湖畔に広がる町が見える。湖は夕陽に照らされてキラキラと輝き、その光景はまるで絵画のようだった。


「すごくきれい…湖があるなんて知らなかった!」


リリカが感嘆の声を上げ、ステラもその景色に見入った。


「本当に美しいわね。この町、どんなところかしら」


 馬車は湖の町へと続く道を進み、やがて町の入口に差し掛かった。そこには大きな看板が掲げられており、「ドラゴンの町ベイロンへようこそ」と書かれていた。看板には勇敢な騎士と巨大なドラゴンが戦うシーンが描かれており、町全体がその歴史を誇っているようだった。


「ドラゴンと騎士の町ベイロンか…なんだか面白そうなところだね」


 リリカが看板を見上げて言うと、セルフィも町の様子に目を向けた。


「町のいたるところにドラゴンと騎士のモチーフがありますね。ここは、かつて王宮の討伐隊がドラゴンを倒した場所なんです。この湖も、その戦闘の傷跡でできたと聞いてます」


 馬車が町に入ると、建物の壁や看板、さらには街灯に至るまで、ドラゴンと騎士をかたどったデザインが溢れていた。夕暮れの薄明かりの中、町の通りは観光客や地元の人々で賑わい、町全体が活気に満ちていた。


「見て見て!あのお店もドラゴンのモチーフがある!」


 リリカが指差した先には、ドラゴンの形をしたパンを売るパン屋があり、子供たちがそのパンを手に楽しそうに笑っていた。


「この町、観光地としても人気みたいね。昔の戦場が今では人を楽しませているなんて、不思議な気分だわ」


ステラが微笑みながら言うと、セルフィも同意した。


「ただの観光地じゃないのが魅力ね。歴史と伝統がある場所って、なんだか惹かれるわ」


 町の中心に向かって進むと、さらに大きな広場があり、その中央には巨大なドラゴンのモニュメントが立っていた。石像は見事に彫られており、その迫力に思わず息を呑むほどだった。


「これがドラゴン討伐の記念碑なのね。すごい…」


 リリカがその石像に手を触れると、冷たい感触が彼女の手に伝わった。まるでその石像が生きているかのように感じられた。


「見てください、湖のほとりにもドラゴンのモニュメントがあります」


 セルフィが指さす先には、湖畔に大きなドラゴンの石像が立っていた。その目は空を見上げ、まるで今にも動き出しそうな迫力があった。


「観光地としての側面もあるのね。昔の戦場が今ではこうして人を楽しませているなんて、不思議な気分」


 ステラがそう言うと、セルフィは湖の方へ歩いていった。


「この湖、ドラゴンとの戦いでできたらしいんです!?すごいですよね!」


 町の人々も親しみやすく、通りを行き交う観光客たちに笑顔を向けていた。馬車を降りた四人は、しばらくの間、町の様子を見て回った。店先にはドラゴンのぬいぐるみや、ドラゴンをモチーフにしたアクセサリーが並び、町全体がドラゴンのテーマで統一されているようだった。


「湖も綺麗だし、町全体がドラゴン一色ね。すごく賑やかで楽しいわ」


 ステラが笑顔で言うと、セルフィもその活気に微笑んで頷いた。


「観光地として発展しているのは素晴らしいことね。でも、ただの観光地じゃないのが面白いわ」


 リリカは湖畔の方へ歩いていき、湖の水面が夕日に輝く様子をじっと見つめていた。その光景は幻想的で、どこか神秘的な雰囲気を醸し出していた。


「ところで、町の灯りが明るいのに気づきましたか?」


 セルフィがふと指摘すると、リリカも周りを見渡した。町全体に灯る明かりは、まるで昼間のように鮮やかだった。


「この町では、最近人工魔石を開発していて、そのおかげで夜も明るいんです。天然の魔石は魔獣の餌になる危険性があるけど、この人工魔石はそのリスクがないんです。王都でも時期に採用される予定だとか」


 セルフィが説明すると、ステラは驚いた表情を見せた。


「そんなものが開発されているのね。」


「魔法技術の進歩ってすごいね。安全に使えるなら、もっと広まってほしいわ」


リリカはそう言って、再び湖の方へ目を向けた。町の人々がその新しい技術を誇りにしているのが伝わってきた。


「そういえば、この時期は湖でのナイトクルージングも人気らしいですよ」


セルフィが案内役のように情報を提供すると、リリカの目が輝いた。


「ナイトクルージング!?楽しそう!」


「でも、とりあえず宿さがしね」


 ステラが優しくリリカをなだめたが、その目にもわずかな期待が見えた。四人はそのまま町の散策を続け、夕暮れの美しい景色を堪能した。


「お腹すいたねえ」


 リリカが湖畔に夕焼けに手を振りながら言うと、他の3人もその言葉に頷いた。ドラゴン討伐の歴史を持つこの町でのひと時は、4人の心に深く刻まれた。


 夕焼けから夜へと移り変わる空の下、四人の王都までの旅はまだまだ続く。どんな明日が待っているのかはわからないが、彼らは一歩一歩、確実に前進していた--。

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