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第44話  一つ屋根の下⁉ 騎士見習いの試練!其の三

「カチャ!」

 

 浴室の扉が開く音とともに、フローラルな香りが部屋中に広がった。ステラがバスルームから出てきた瞬間、その香りが一気に漂い、朝の空気を一新した。


「ステラ様、おはようございます!」


 目を覚ましたセルフィが元気よく挨拶をすると、ステラはニッコリと笑い返した。しかし、ステラの格好は無防備すぎた。彼女は一糸まとわず、タオルで髪を拭いているだけだった。


「ステラ様…何か着てください!」


 セルフィは思わず叫んだが、その言葉が終わるか終わらないかのうちに、彼女の目に衝撃的な光景が飛び込んできた。一番端のベッドでリリカとレオンが抱き合って眠っているのだ。リリカの猫耳がぴくぴくと動き、レオンの胸にしっかりと顔を埋めていた。


「な、なにがどうなってるの…?まさか、レオンが二人と…?」


 セルフィは頭の中がぐるぐると回り、パニックに陥った。昨夜の出来事がまるで頭の中から消し去られたように、どうしてこうなったのかまったく思い出せなかった。


「落ち着いて、セルフィ。何もないわよ」


 ステラはバスローブを身にまとい、冷静にセルフィに話しかけた。


「リリカが夜な夜な私のベッドに潜り込む癖があるのは知ってるでしょ?今回は寝ぼけてレオンのベッドに忍び込んだのよ。それだけのことよ」


 ステラの言葉にセルフィは少しだけ落ち着きを取り戻した。しかし、それでもまだ昨夜の記憶があやふやだった。


「それより、セルフィもお風呂に入ったらどう?すっきりするわよ」


 セルフィはお風呂をすすめられたものの、昨夜の出来事が気になって仕方がなかった。


「ステラ様、恥ずかしながら昨夜の記憶がほとんどなくて…私、どうやってこの部屋に戻ってきたのかすら覚えていないんです」


 ステラは少し考え込んだあと、思い出すように話し始めた。


「私もね、酒場で酔っぱらって潰れたところまでは覚えてるけど…そういえば、あなたも同じだったわね」


 セルフィは自分の失態を痛感し、悔やんだ顔でステラに謝った。


「本当に申し訳ありません、ステラ様…」


 ステラは微笑んでセルフィの肩に手を置いた。


「いいのよ、セルフィ。気にしないで。みんな楽しんでいたんだから。それより早くお風呂に入ってきなさい」


 セルフィはステラに促されるまま浴室に向かい、ドアを閉めた。その間、ステラはリリカとレオンが眠っているベッドに目を向け、薄く笑みを浮かべた。


 一方、レオンはその時ようやく目を覚ました。目をパチパチと瞬かせながら、目の前にあるのはリリカの顔だった。彼女は寝ぼけたままレオンに抱きついている。


「これは…一体…?」


 さらに視線を上げると、リリカの顔のすぐ後ろに、白いきれいな脚を組んで座っているステラがニヤニヤとこちらを見ている。


「ステラ様、これには深いわけが…!」


 レオンは慌てて釈明しようとしたが、ステラは意地悪そうに微笑んだ。


「あら、レオン。責任はちゃんと取ってもらうわよ!覚悟してね」


 その言葉にレオンは一瞬で顔が青ざめ、ショックのあまり放心状態になった。


「責任って…まさか…」


 しかし、そんなレオンの焦りをよそに、リリカが目を覚まし、寝ぼけながらも笑顔でレオンに挨拶した。


「おはよう、レオン。ごめんね、勝手に潜り込んじゃって…」


 リリカの言葉に、レオンはようやく状況を理解した。ステラにからかわれていただけだと気づき、ほっと胸を撫で下ろした。


「いや、リリカ様なら…まあ、大丈夫ですけど…」


 その時、浴室の扉が勢いよく開いた。セルフィが再び現れたのだが、彼女もまた何も着ておらず、慌ててタオルを巻き直しながら部屋に飛び出してきた。


「お、お風呂が…まだお湯が熱くて…」


 セルフィは焦った様子でタオルを手にしていたが、その姿を見たレオンは思わず目を逸らし、顔を真っ赤にしてしまった。


「セルフィ!ちゃんと服を着てくれ!」


 レオンの叫びにセルフィは一瞬固まり、ようやく自分が何をしているのかを思い出したかのように、再び浴室に戻った。


「朝っぱらから、なんてことだ…」


 レオンは頭を抱えながら、再び自分のベッドに倒れ込んだ。ステラはクスクスと笑いながらレオンの反応を楽しんでいた。


「レオン、本当にお疲れ様。夜な夜な大変だったわね」


「もう勘弁してください…」


 レオンは再びため息をつき、何とか気を落ち着けようとしたが、頭の中ではまだ混乱が続いていた。美少女たちに振り回される朝は、一筋縄ではいかないものだった。


 やがて、セルフィがちゃんと服を着て浴室から出てきた頃には、部屋の空気も少しずつ落ち着きを取り戻していた。リリカはお礼を言いながら、再びレオンに近づいてきた。


「ごめんね、レオン。本当に私、いつもこうだから…」


「いや、自分は気にしてませんから…」


 リリカの無邪気な笑顔に、レオンも少しずつ心がほぐれていくのを感じた。彼は彼女たちと一緒にいることの大変さと、同時にその楽しさを実感しながら、新しい一日の始まりを迎えた。


「さて、今日も頑張ろうか」


 レオンはそう言って自分に言い聞かせながら、ようやく立ち上がった。美少女たちとの一つ屋根の下でのドタバタな朝は、これからも続くのだろう。しかし、レオンはその中で少しずつ自分の居場所を見つけていくことになるだろう――。

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