第42話 一つ屋根の下⁉ 騎士見習いの試練!其の一
酒場での楽しい時間の後、ステラとセルフィはすっかり酔いつぶれてしまった。レオンとリリカはどうにか二人を支えながら、警護所長のオーエンたち自警団の助けも借りて宿に着くことができた。しかし、なぜかセルフィが予約していたのは一部屋のみで、他に空いている部屋もなかった。
「なんで一部屋だけなんだ…」
レオンは困惑しながら部屋に入ると、4つのベッドが並び、簡素な浴室が備え付けられていた。着替えも用意されているが、これではプライベートな空間はほとんどないに等しい。
「どうしてこうなったんだ…」
美少女3人、それも上官であり国の伝説級の存在である彼女たちと同室とは、レオンにとって信じがたい状況だった。彼はまだ見習いの騎士であり、これほどの大物たちと一つ屋根の下で過ごすことになるとは思ってもみなかった。
「宿の主人の微妙な態度もこれが理由か…」
レオンはため息をつきながら、一番端のベッドをキープすることにした。自分の隣では、すでにステラが寝息を立てており、そのまた隣にリリカ、セルフィが並んでいる。セルフィは完全に酔いつぶれており、リリカはそんな状況でも両手に花とばかりにステラとセルフィの頭を撫でている。
「リリカさん、楽しそうですね…」
レオンは自分に言い聞かせた。この状況も仕事の一環だ。彼女たちを守るのが自分の使命だと。
その時、リリカがふとレオンのベッドに腰掛けた。
「ねえレオン、お風呂、お先にどうぞ!今日も一日疲れたでしょう」
「え、リリカ様、いいんですか?そんな…」
「遠慮してるの?気にしないで、わたしのんびりだから、どうぞどうぞ!」
リリカの無邪気な笑顔にレオンはお言葉に甘え、先にお風呂に入ることにした。浴室に入ると、一日の疲れが一気に癒えるような温かさが体に染み渡った。
風呂から上がったレオンがベットに戻ると、今度はリリカがお風呂に入っていった。しばらくして浴室から出てきたリリカの姿に、レオンは思わず目を疑った。
「いや~、お風呂上がりはまだ暑いね、レオン」
リリカは平然と、上は首にタオルを掛けただけで下はパンティのみの格好で現れた。無防備すぎる姿に、レオンは仰天し、顔を赤らめて目を逸らした。
「リリカさん!ちゃんと服を着てください!」
リリカは全く気にする様子もなく、酔いつぶれているステラとセルフィに目を向けた。そして、セルフィを起こそうと試みたが、まったく反応がない。
「無理ね。レオン、セルフィのニーハイと靴を脱がせてあげて。それから足を洗って、顔も軽く拭いてあげてね」
レオンは一瞬ためらったが、リリカの命令には逆らえなかった。命令だと自分に言い聞かせ、セルフィのニーハイソックスをゆっくりと脱がせ、彼女を抱きかかえて足をぬるま湯に浸した。
「大丈夫、大丈夫…これは任務の一環だ…」
セルフィの足を優しく洗い、再び抱きかかえてベッドに戻した。顔を軽く拭いて毛布をかけてあげると、セルフィは安らかな寝顔を見せた。
リリカはその手際の良さに感心し、次にステラの方を指差した。
「レオン、ステラもお願いしていい?」
「えっ…ステラ様もですか!?」
レオンは戸惑った。セルフィは幼馴染みだからまだなんとか対応できたが、ステラは王国の第一王子であるアレクのお気に入りと噂されている。万が一、何かあったら大問題だ。
「これが…命令なのか…」
レオンはもう一度自分に言い聞かせ、ステラのブーツを脱がせ、セルフィと同じように足をぬるま湯に浸して洗い始めた。ステラの足は柔らかくシルクのような肌触り、透き通るような白い肌、彼の手に触れるたびに心臓が高鳴った。彼女の寝顔は本当に美しく、彼はその顔を見ないように努めながら作業を続けた。
「ステラ様、失礼いたします…」
足を洗い終えると、レオンは慎重に彼女をベッドに戻し、顔を軽く拭いてあげた。毛布をかけた後も、ステラの穏やかな寝息は続いていた。レオンはほっと息をつきながら、リリカに振り向いた。
「ありがとうね、レオン。あなたって本当に頼りになるね」
リリカはニッコリと笑いかける。レオンはその笑顔に一瞬救われたような気がしたが、同時に複雑な感情が胸に湧き上がった。
「いえ…これも任務のうちですから」
レオンはそう言って、自分のベッドに戻った。彼は今日の出来事を思い返しながら、これからどうすればいいのかを考えていた。自分が未熟な見習い騎士であることを痛感しながらも、彼女たちのそばにいることの責任を強く感じていた。
「俺にできることは何だろう…」
レオンは自問しながら、ようやく目を閉じた。美少女たちとの一つ屋根の下での夜は、緊張感とともに過ぎていったが、レオンにとっては大きな一歩でもあった。
「明日もきっと、大変だろうな…」
そう思いながら、レオンは少しずつ眠りに落ちていった。彼の心には、まだまだ乗り越えなければならない壁が多く存在していたが、その一つ一つを乗り越えていく覚悟が芽生えていた。
この夜が、レオンにとって新たな決意のきっかけになることを感じながら、彼は静かに眠りについた――。




