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第40話  予想外のステージ⁉ 猫耳メイド魔法使いの魅力!

 ステラは風の音に誘われるように目を覚ました。前のめりになって眠っていた体をゆっくりと起こすと、彼女の猫耳がぴくっとはじけるように動いた。水色のロングヘアーは柔らかな風になびき、夕焼けを背景にきらめいて見えた。ステラは大きく背伸びをし、おおきな欠伸をした。


「う~ん…」


 伸びを終え、ふと目を開けると、そこには見たことのない女の子が立っていた。少女はステラを見て目を輝かせ、はにかみながら言った。


「お姉さん、とてもきれい!」


 その言葉に、ステラは一瞬きょとんとした表情を浮かべたが、次の瞬間、周りから拍手喝采と歓声が沸き起こった。いつの間にか、彼女たちの周りには大勢の人々が集まり、広場全体が賑やかな熱気に包まれていた。


「いやだ、何これ…?」


 ステラは驚きと戸惑いで、その場に立ち尽くした。猫耳と尻尾を隠していたはずだったが、帽子が風で飛ばされてしまい、隠しきれなくなっていたことに気づいた。観衆はその姿を目にし、伝説の猫耳メイド魔法使いを目の前にしていることに興奮していたのだ。


「猫耳と尻尾…これは伝説の猫耳メイド魔法使いじゃないか!」


「まさか、本当に存在していたなんて…!」


「王宮専属アイドル ステラ&リリカ じゃないか!」


「ステラさん!リリカさん!こっち向いて~!」


 観衆の中の声に、ステラはさらに困惑した。周囲には子供たちが前列に座り込み、その後ろには立ち見の少年や大人たちが大勢集まっていた。ステラは周りを見渡しながら、どうしてこんなことになったのかを考えた。


「リリカ、起きて!なんか大変なことになってるわ!」


 ステラは隣で寝ているリリカを軽く揺さぶった。リリカは眠そうに目を開け、しばらく周囲の状況を理解できないままぼんやりとステラを見たが、歓声に気づくとすぐに目を覚ました。


「えっ!?何これ!?どうしてこんなに人が集まってるの?」


 リリカは驚いて飛び起き、周りを見渡した。彼女たちの前にはいつの間にか何十人もの子供たちが囲むように座り込み、その後ろには立ち見の大人たちが取り囲んでいた。リリカは頭を掻きながら、戸惑ったように呟いた。


「そうだ、セルフィとレオンはどこにいるの?」


 リリカが立ち上がって見渡すと、少し離れたところでレオンが手を振っているのが見えた。彼は人ごみに阻まれ、こちらに近づけずに困った表情をしていた。


「どうしよう…」


 ステラとリリカはすっかり眠気が飛んでしまい、観衆に囲まれた状況に戸惑っていた。しかし、ステラがふとアイデアを思いつき、リリカに小声で提案した。


「ねぇ、ステラ。せっかくだし、ちょっとしたショーをしない?こんなに集まってくれてるんだし、楽しんでもらおうよ!」


 ステラは一瞬驚いたが、すぐに笑顔を浮かべて同意した。


「それもいいかもね!楽しもう!」


 ステラは観衆に向かって手を振り、元気よく声を張り上げた。


「みんな、こんにちは!私たちは猫耳のお姉さん、ステラとリリカです。耳も尻尾も本物だよ!」


 続けてリリカも手を振りながら


「今から二人で歌います!楽しんでね!」


 子供たちはその言葉に大喜びし、大人たちも興味津々で二人のパフォーマンスを見守った。リリカとステラは即興で軽やかなメロディを口ずさみ、軽快なステップで踊り始めた。二人の歌声が響くたびに観衆は手拍子をし、子供たちは大歓声を上げた。


「すごい!本当に猫耳のお姉さんだ!」


「もっと見せて!」


 彼女たちのパフォーマンスは次第にヒートアップし、まるで本物のステージのように観衆を魅了していった。リリカとステラはお互いに息を合わせ、リズムに乗って華麗なダンスを披露した。


 時間が経つにつれて日が暮れ始め、広場の街灯が次々と点灯し始めた。そこにセルフィと町の自警団がやってきた。セルフィの命令で事態の収集にきたのだ。


 観客はまだまだ楽しそうにしていたが、ステラはショーの終わりを感じ、マイク代わりにしていた手を下ろした。


「さあ、みんな!そろそろお別れの時間だよ!」


ステラの声に子供たちは「え~!」と声を上げたが、リリカもそれに応じて手を振った。


「また会えるよ!それまで元気でね!」


「皆さん、ありがとうございました!暗くなってきたので、そろそろお家に帰りましょう!」


 ステラが観衆に呼びかけると、子供たちは「またね!」と声をかけながら帰り支度を始め、大人たちも名残惜しそうにしながらそれに続いた。自警団の協力もあって、徐々に広場の人混みは解散していった。


 セルフィが近づいてくると、リリカとステラに向かって微笑んだ。


「二人とも気を付けて下さい。超有名人なんですから!でも素晴らしいショーでした。まさに伝説の猫耳アイドルですね!」


 レオンも頷きながら二人に笑顔を向けた。


「本当に見事でした。僕まで感動しちゃった」


 リリカとステラは顔を見合わせ、満足げに微笑んだ。即興のショーは成功し、観衆も大いに楽しんでくれたことに安心していた。彼女たちは新たな出会いや人々の温かさに触れ、この町での特別なひとときを心に刻んだ。


「それでは宿に行く前に打ち上げですね」


 レオンが提案し、全員がその言葉に頷いた。彼らは再び歩き出し、広場を後にした。夕闇が町を包み込み、彼らの背中を優しく照らしていた。これからも続く冒険と新たな出会いに胸を躍らせながら、リリカたちは一歩一歩を大切に進んでいった――。

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