第38話 初めての公式任務⁉ 猫耳メイド魔法大隊の挑戦!其の五
激闘を繰り広げた遺跡の広間。黒騎士との戦いでリリカたちは見事に勝利を収めたが、その代償は大きかった。戦いの最中で荷物や食料をすべて失い、これ以上の進行は困難な状況に追い込まれていた。リリカたちは疲れ切った様子で広間に立ち尽くし、重い空気がその場を包んでいた。
「ステラ様、リリカ様、荷物が…」
セルフィが疲労で震える声で呟いた。広間に散乱している荷物の破片は、爆風や崩れた岩によって無惨にも破壊されていた。食料も水も、すべてが失われ、これ以上の進行は現実的ではなくなっていた。魔石の封印はまだ途中で、先にはさらに強力な魔石があるかもしれない。だが、今の状態ではこのまま進むのは無謀すぎた。
「このままでは、さらに奥へ進むのは無理ね…」
ステラは険しい表情で広間を見渡しながら呟いた。彼女もまた、猫耳メイド魔法大隊の隊長として、メンバーの安全を第一に考えざるを得なかった。彼女は冷静さを保ちつつ、次の行動を決めるために状況を整理していた。
「私たち、どうするの…?」
セルフィの声には疲労と不安が滲んでいた。彼女は黒騎士との戦いでリリカをかばい、重傷を負ってしまった。レオンもまた、黒騎士の一撃で壁に叩きつけられ、意識を失ったことが心に深い傷を残していた。二人は心身ともに限界に近く、その目には不安と無力感が漂っていた。
「セルフィ、レオン…」
リリカは仲間たちの様子を見て心を痛めた。自分とステラはまだ体力も魔力も残っているが、セルフィとレオンは今すぐ休息が必要な状態だった。無理にでも進行を続けるべきか、それとも撤退するべきか。リリカの心は揺れていたが、ステラがそっと手をリリカの肩に置いて静かに言った。
「リリカ、私たちだけが元気でも意味がない。皆で生きて帰ることが一番大事なのよ」
ステラの声には決意が込められていた。彼女もまた、隊長としての責任と仲間を守る使命感を強く感じていた。ステラは仲間たちの安全を最優先に考え、一つの決断を下した。
「みんな、一旦ここで任務を中断して、引き返すわ。魔石の封印は確かにまだ終わっていないけれど、今は私たち全員の安全が最優先よ」
ステラの言葉に、セルフィとレオンは少し安堵の表情を浮かべたが、どこか悔しさも感じていた。任務を完遂できなかった無念さが、彼らの胸に重くのしかかっていた。
「ごめんね、ステラ様…リリカ様…私のせいで…」
セルフィは肩を落としながら呟いた。戦いでの失敗や、仲間を守れなかったことが彼女の心に重くのしかかっていた。リリカはセルフィに歩み寄り、その肩に手を置いて優しく微笑んだ。
「セルフィ、そんなことないよ。あなたが私をかばってくれなかったら、どうなっていたかわからない。ありがとう、セルフィ。あなたがいてくれたから、私は今ここにいるの」
リリカの言葉に、セルフィの目には涙が浮かんだ。彼女は自分の行動が無駄ではなかったと知り、少しずつ自信を取り戻していった。
「リリカ様…そんな風に言ってもらえるなんて…私、嬉しいです。でも、次はもっと強くなって、あなたを守れるように頑張ります!」
「さすが六光の騎士!期待してます!」
セルフィの言葉に、リリカは力強く頷いた。そして、二人は互いに笑い合い、その場の緊張が少し和らいだ。レオンもまた、俯きながら声を絞り出した。
「僕も、もっと強くなりたかったのに…こんな結果になってしまって…」
二人の落ち込んだ様子に、リリカも胸を痛めたが、ステラは二人の肩を優しく叩き、力強い声で応えた。
「セルフィ、レオン、謝る必要なんてないわ。誰も犠牲にならなかったことが一番大切なことよ。それが私たち猫耳メイド魔法大隊の誇りなんだから」
ステラの言葉は温かく、二人の心に少しずつ届いていった。リリカもステラの言葉に同意し、セルフィとレオンに向かって優しく微笑んだ。
「そうだよ。私たちはみんなで帰るために戦ったんだから。無理して先に進んで誰かが傷つくなんて、絶対に嫌だから」
セルフィとレオンはリリカとステラの励ましに、少しずつ元気を取り戻していった。彼らは共に戦った仲間としての絆を再確認し、全員が無事であることの大切さを再認識した。
「さあ、みんなで帰ろう。まだ任務は終わってないけど、次の挑戦に備えるためにもしっかり休息を取らなくちゃ」
ステラの言葉に、リリカたちは頷き合い、一行は慎重に遺跡からの撤退を始めた。険しい道のりを歩きながらも、彼らの心には次なる挑戦への決意が新たに芽生えていた。道中、リリカとステラはセルフィとレオンを励ましながら、足元の不安定な石段を注意深く下りていった。
「この遺跡の魔石、必ず封印してみせるわ。次はもっと強くなって戻ってくる」
リリカの言葉に、ステラ、セルフィ、レオンも力強く頷いた。彼らは決して諦めない。猫耳メイド魔法大隊としての誇りを胸に、再び立ち上がる決意を固めていた。
やがて、遺跡の入り口にたどり着くと、朝日が地平線から昇り始め、薄暗い遺跡の内部を温かく照らしていた。リリカたちはその光に導かれるように一歩ずつ確実に前進し、帰路に着いた。戦いの傷跡はまだ生々しいが、その痛みが彼らをさらに強くする糧になると信じていた。
「次はきっと、もっと良い結果を出せるわ。猫耳メイド魔法大隊として、私たちの力を証明するのよ」
ステラの言葉に、一同は力強く頷き合い、彼らの絆と信頼はさらに深まった。彼らの戦いはまだ終わっていない。新たな試練が待つ中で、彼らは再び力を合わせて挑むだろう。その絆と勇気が、必ずや次の戦いへの勝利へと繋がっていくのだった――。




