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第189話 ルクス・マギナ攻略作戦 ⁉其の六十三

「今日は四時に大須に集合ね!」


 沙織がLINEで送ってきたメッセージを見ながら、梨々香は慌ただしく準備を進めていた。


 彼女のスマホの画面には、遅刻しないように時間指定まで表示してある。


 朝から続く予定に少し疲れを感じつつも、どこかワクワクした気持ちが胸の奥に広がっていた。


 スマホを手にしながら、心の中で今日の予定を再確認する。


 朝は部活で汗を流し、昼過ぎには一旦帰宅してシャワーを浴び、夕方には大須で待ち合わせ。


 そしてその後は叔父がオープン準備を進めている猫耳メイドカフェ「ニャンニャンメイド」の手伝いだ。


「了解!」


 そう返信を打ち込むと、彼女はバッグにタオルや部活用のシューズ、水筒などを詰め込み、家を出た。


 朝の空気はまだ少しひんやりしていて、これから動き回る一日の始まりを予感させる。


 通学路の並木道を歩きながら、ふと今日の部活での練習メニューを思い出した。


 部活ではダンスの振り付けの練習が続いている。


 地元のお祭りで披露するための新しい曲に合わせたダンスだ。


 梨々香は、部活仲間たちと一緒に汗を流し、何度も繰り返し踊ることで少しずつ完成形に近づいていく達成感を感じていた。


 全員が息を切らしながら練習を終えたときには、すでに昼過ぎ。


 家に戻る途中、近くのコンビニに立ち寄り、軽めのランチ用にサンドイッチとスポーツドリンクを購入した。


 帰宅後はシャワーを浴び、部活でかいた汗をさっぱりと流す。


 鏡の前で軽く髪を整えながら、彼女はふと思った。


「あと二週間でオープンか……」


 叔父が経営する猫耳メイドカフェ「ニャンニャンメイド」。


 このお店は、梨々香と沙織がオープニングメンバーとして手伝うことになっている。


 部活や学校の合間を縫って準備を進める日々は確かに忙しいけれど、その分やりがいを感じていた。


 何より、自分たちの手で一から作り上げていくこのお店がどんな風に仕上がるのか楽しみで仕方なかった。


 午後五時過ぎ。


 梨々香は再びバッグを肩に掛け、大須に向けて家を出た。


 電車に揺られながら、車窓に映る街並みをぼんやりと眺める。


 次第に人通りの多い商店街が見えてくると、彼女の気持ちも自然と高まってきた。


 大須の駅に到着すると、沙織がすでに待っていた。


「お待たせ!」


「ううん、ちょうど着いたとこ!」


 沙織は笑顔で手を振り、二人で商店街を歩きながら叔父のお店に向かった。


 カフェの準備作業にはもう何度も参加しているが、そのたびに少しずつ進化していくお店の様子を見るのが楽しかった。


「お、来たな! 待ってたぞ、二人とも!」


 店内に入ると、叔父が掃除道具を手に立っていた。


 彼の足元には数匹の猫が寝そべっている。


 ここは猫たちもくつろげる空間として設計されており、店内の至る所に猫用クッションやキャットタワーが配置されている。


 壁には木材が温かみを感じさせるデザインで使われ、まるでログハウスのような雰囲気だ。


「頼むぞ、梨々香。この店の未来は君の腕にかかっているんだからな!」


 叔父はおどけたような表情でそう言い、梨々香に視線を向けた。


 その言葉に、彼女は少し呆れたように肩をすくめる。


「もう、叔父さん!何でもかんでも私の責任にしないでよね。でも……まあ、期待には応えるよ。」


 そう答える梨々香の表情には、どこか誇らしげなものが浮かんでいた。


 実際、彼女はこのお店のメニューや内装について数々のアイデアを出し、そのセンスの良さに叔父や沙織も驚かされている。


 たとえば、壁に飾られたフェアリーライトや、猫のシルエットを模したオリジナルロゴは、梨々香の発案だった。


「梨々香、お前の提案、どれもいい感じだな。特にあの飾り付け、あのまま採用するぞ。」


「え、本当に?嬉しい!」


 梨々香はその言葉に少し驚きつつも、嬉しそうに笑った。


 沙織もその場で拍手しながら言った。


「いやいや、梨々のセンスがいいのは私も知ってる。だから、叔父さん、この子に頼って正解だよ」


 梨々香は少し照れながらも、次の装飾アイデアを考えていた。


 お店の床を掃除していた梨々香の足元に、三毛の子猫がちょこんと座り込んだ。


「あら、チャチャ。いい子にしてた?」


 梨々香が子猫を抱き上げて優しく撫でると、沙織が興味津々で声を上げた。


「えっ、この子の名前チャチャになったの? いつの間に?」


 梨々香は少し照れくさそうに笑いながら説明した。


「それがさ、叔父さんが仕事サボってて、私が『ちゃっちゃとやってよ!』って叱ったら、この子がたまたま『ニャー』って返事したの。それで『チャチャ』に決定。」


 沙織は目を丸くしながら笑い出した。


「何それ適当すぎる!……でも可愛いじゃん!」


「でしょ?」


 梨々香も誇らしげに笑みを浮かべる。


 その時、叔父が作業場から顔を出してきた。


「君たち、ちゃっちゃと働いてくれるかな?」


 その言葉に、梨々香と沙織、そして叔父自身も思わず吹き出した。


 お店の準備は大変だったが、こうした何気ないやり取りが、みんなの気持ちを軽くしてくれた。


 準備が進む中、猫たちも新しい環境に慣れ始めていた。


 特にチャチャは、お店のどこにでもついて回り、梨々香たちのそばを離れない。


「チャチャ、ほら、こっちに来て」


 梨々香が手を伸ばすと、チャチャは小さな鳴き声を上げながら飛びついてきた。


「本当に人懐っこい子だよね」


 沙織が微笑みながらチャチャを撫でる。


 叔父はそんな二人とチャチャを見ながら、ふと呟いた。


「このお店がオープンしたら、きっとたくさんの人が猫たちに癒されるだろうな」


 その言葉に梨々香と沙織は同時にうなずいた。


「うん、私たちも頑張らないとね」


 準備が順調に進む中、梨々香はふと思った。


 忙しい日々だったが、叔父や沙織、そして猫たちと過ごす時間はとても楽しかった。


「ニャンニャンメイド、オープンが楽しみ!」


 梨々香が呟くと、沙織が元気よく答える。


「絶対大成功だよ! だって看板娘が梨々花だもん!」


 梨々香は照れながらチャチャを抱きしめた。


 梨々香と沙織、そして叔父が始める猫耳メイドカフェ「ニャンニャンメイド」の開店準備追われていた。梨々香が提案したお店のアイデアが次々と採用され、内装やデザインが形になっていく。彼女のセンスに驚く叔父と沙織。忙しい中にも笑いと笑顔が溢れるやり取りの中、猫耳メイドカフェ「ニャンニャンメイド」のオープン準備は着々と進んでいくのであった――。

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