第188話 ルクス・マギナ攻略作戦 ⁉其の六十二
とある日曜日、梨々香と沙織は、いつものように駅で待ち合わせた。
二人は同級生であり、趣味を共有する親友でもある。
沙織が口を開いた。
「ねえ、梨々!今日のアニメイトは盛り上がるわよ。司馬様のアクリルスタンドが入荷してるはず!」
「もう、ホント好きだよね。魔学学園の転校生。まあいいけど」
梨々香は軽く肩をすくめながら笑った。
二人のこうした会話は日常茶飯事だ。
歩きながら、沙織はこそっと声をあげる。
「みなさーん! こちら自称陽キャ系アニオタJK、稲垣梨々香でーす!」
「ちょっと! 勝手に人の自己紹介しないでよね!」
梨々香が慌てて突っ込むと、沙織はにやにや笑いながら続けた。
「だって本当のことじゃん。アニオタなのは自分でも認めるでしょ?」
梨々香は少しムッとした顔をしながらも、素直にうなずいた。
「まあ、アニオタは認めるけどさ……」
すると沙織は大げさに手を振りながらため息をついた。
「でも、梨々、推しが何十年も前のロボットアニメの主人公だなんて、ちょっと渋すぎるんじゃない?」
「何よ、三次元の男どもに興味がないってだけでしょ!」
梨々香は冗談めかしてそう答えたが、その言葉に沙織はさらに興奮したように声を上げた。
「だって、キコリ様だっけ?その渋いロボットパイロットが梨々の理想だなんて、ハードル高すぎ!」
梨々香はふんと鼻を鳴らし、反論する。
「沙織にはわからないのよ、キコリ様の素晴らしさが!せいぜい今どきのアイドルでも追いかけていればいいわ」
沙織も負けじと胸を張り、自信たっぷりに言い返す。
「あら、私は司馬達也様一筋。魔法学校の転校生で天才の主人公。あのクールさと頭脳、最高じゃない?」
「ふーん。司馬様の妹になりたいとか言うんでしょ?」
「もちろん!司馬様の妹ポジションとか、最高じゃない?」
二人はお互いの推しについて語り合いながら笑い合う。
この趣味の話ができる時間が、二人にとっては何より楽しいひとときだった。
そんなこんなで、二人は名古屋駅の裏にあるアニメイトへ到着した。
店内は日曜日ということもあり、けっこうにぎわっている。
「よし、行くわよ!」
沙織は目的のアクリルスタンドが置かれているコーナーへと一直線に向かう。
「沙織、そんなに急がなくても逃げないよ。」
梨々香は笑いながら後を追いかける。
沙織は棚の前で真剣な表情を浮かべながら、アクリルスタンドを探している。
「あった!司馬様の新作!これこれ、待ってたのよ!」
沙織は嬉しそうに手に取ると、うっとりと眺める。
一方で、梨々香は店内を歩き回り、様々なアニメグッズを眺めていた。
ポスター、フィギュア、キーホルダー……どれを見ても楽しい。
ふと目に止まったのは、古いロボットアニメのコーナーだ。
「やっぱりいいなあ、ボトズム。」
梨々香はつぶやきながら、そこに並ぶDVDボックスや関連グッズに見入っていた。
彼女が大好きなアニメ『装甲歩兵ボトズム』は、叔父の影響で見始めたものだった。
梨々香はDVD全巻を揃えただけでなく、登場するロボットのプラモデルを買い、自分で組み立てるほどの熱狂ぶりだった。
「そういえば、この間作ったキコリ専用機、もう少し手を加えたいな。」
梨々香はそんなことを考えながら、手に取った古いプラモデルをじっと見つめていた。
アニメイトを満喫した二人は、
次の目的地である大須の「まんだらめ」に向かうため、電車に乗り込んだ。
車内でも二人のアニメトークは続く。
「梨々、本当にプラモデル作るのが好きなんだね。」
沙織が感心したように言うと、梨々香は少し得意げに笑った。
「まあね。叔父さんが昔からガンプラ作るの好きで、その影響で私も始めちゃったの。」
「でもさ、ボトズムって結構渋いよね。私だったら魔学のアニメとかの方がワクワクするけど。」
「沙織にはわからないのよ。このリアルな戦闘描写と重厚なドラマが!」
二人はそんな話をしながら、あっという間に大須に到着。
まんだらけの店内でも、それぞれの推し作品を探して熱心に棚を漁る。
買い物を終えた二人は、締めに「寿がきや」でラーメンを楽しむことにした。
「やっぱり寿がきやで締めるのが最高だよね。」
沙織がそう言いながらスープをすすり、梨々香も頷く。
「うん、しかもこのデザートがいいんだよね。ソフトクリーム、絶対食べる!」
二人は笑いながらソフトクリームを食べ、今日の戦利品を眺め合った。
店を出ると、夕方の街はにぎわいを見せていた。
すれ違う男性たちが梨々香にちらちらと視線を送るが、梨々香はそんな視線には慣れており、気にも留めない様子だった。
一方で沙織はそんな様子を見ながら笑った。
「やっぱり梨々はモテるよね。あんな視線、私だったら緊張しちゃう」
「そんなの慣れだよ。逆に私の正体知ったら逃げ出しそう」
梨々香は肩をすくめながらそう答えた。
沙織は微笑みながら、からかうように言った。
「理想の男性がキコリ様だなんて……そりゃハードル高すぎだよ」
「ふん、沙織にはわからないのよ。」
梨々香は笑いながら言い返す。
二人は再び笑い合いながら歩き出した。
そんな日常が、彼女たちにとって何よりの楽しみだった。
梨々香と沙織が趣味を語り合いながらアニメショップ巡りを楽しむ。推しの話題や買い物を満喫する二人。梨々香の好きな「ボトズム」と、沙織の好きな「魔学学園」という対照的な推しの話は尽きることがない。親密な友情と趣味を共有する楽しさ。友達との楽しいひとときを温かく感じる二人であった――。




