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第182話 ルクス・マギナ攻略作戦 ⁉其の五十六

 リリカは足元に感じる冷たい鱗の感触に全身の毛が逆立つような感覚を覚えた。


「うへぇ……何これ……? 気持ち悪い!」


 彼女の目の前に広がるのは、まるで生きた大地そのもののような巨大な蛇の体だった。

 

 その鱗は一つ一つが刀のように鋭く、背中を踏みしめるたびに微妙に動く。


 突然、彼女の足元が激しく揺れた。

 

 大蛇が自らの存在を誇示するかのように、うねる体を持ち上げてリリカを振り落とそうとしているのだ。


「やばい、これはまずい!」


 リリカは慌てて飛び上がり、近くの岩に飛び移った。


 その瞬間、彼女の視界に驚くべきものが飛び込んできた。


「ニャオ~~~!」


 聞き慣れた鳴き声が洞窟内に響いた。

 

 リリカはその声の方向を振り向く。


 そこには、チャチャが威嚇のポーズを取りながら大蛇を睨みつけていた。

 

 そのすぐ横には、倒れた白い大蛇の巨体が横たわっている。


「チャチャ!」


 リリカは思わず叫び、チャチャに向かって駆け出した。


 チャチャはリリカに気づくと、一瞬緊張した表情を緩め、小さく「ニャー」と鳴いた。

  

 しかし、すぐにまた鋭い目つきで周囲を警戒する。


「無事だったのね、チャチャ!この大蛇はあなたが倒したの?」


 リリカは膝をついてチャチャを抱きしめた。

  

 その瞬間、全身に伝わるチャチャの温もりに、思わず涙が滲む。


「もう、心配かけて……本当に無事でよかった……」


 しかし、安堵の時間は長くは続かなかった。


「リリカ、感傷に浸っている暇はないぞ。」


 サーガの冷静な声が響く。


「そうね……分かってる」


 リリカが振り向くと、目の前に双頭の大蛇が姿を現していた。

 

 その体は横たわる白い大蛇を凌駕するほど巨大で、両方の頭がそれぞれ鋭い牙を剥き出しにしている。


 その双頭の蛇は、洞窟内を支配する主のように悠然と動き、低い唸り声を上げながらリリカたちを睨みつけた。


「顔が二つ?……これが本物の主ってわけ?」


 リリカは冷や汗を拭いながら、チャチャと共に戦闘態勢に入った。


「サーガ、手を出さないで!今回は魔力は一切使わない。物理攻撃のみで勝負よ」


 リリカは心の中で強く叫ぶと、決意を込めてメイドアーマーを展開した。


 黒い瘴気が身体を包み、漆黒の輝きを放つアーマーが瞬時に彼女の体を覆う。


 その姿は勇敢でありながらもどこか優美さを感じさせるものだった。


 同時に、子猫の姿に戻っていたチャチャも、その小さな体を震わせながら魔獣としての本来の姿へと変貌を遂げた。


 鋭い爪としなやかな体を持つ姿は、見る者に畏怖を与えるほどの迫力を持っている。


 洞窟内には双頭の蛇の咆哮が轟き渡り、音の振動で岩壁が震え、小石が次々と崩れ落ちる。


 その恐ろしい音に対しても、リリカは怯むことなく前を見据えていた。


「チャチャ、行ける?」

  

 リリカは横目でチャチャを見つめながら問いかける。

チャチャは鋭い鳴き声をあげ、力強く頷くような仕草を見せた。


「よし、いくよ!」


 双頭の蛇の片方の頭が鋭い牙を光らせながら、リリカに向かって突進してきた。


 その速さと迫力は恐ろしいものだったが、リリカは冷静だった。


 身体を低く構え、直前でその牙を華麗にかわす。


 彼女はすぐに反撃の体勢に入った。


「そこだ!」


 彼女は拳を一気に振り下ろし、蛇の巨大な体に一撃を加える。


 しかし、その鱗はまるで鋼のように硬く、刃が弾かれる音が響いた。


「硬い……!」


 思わず漏れたリリカの声。


 その瞬間、もう一つの頭がチャチャに向かって鋭い動きで襲いかかってきた。


 チャチャはしなやかな動きで素早く跳び上がり、その爪を使って蛇の片方の目を的確に攻撃した。


「ナイス、チャチャ!」


 チャチャが作り出した隙を見逃すことなく、リリカは再び攻撃を仕掛ける。


 しかし、双頭の蛇は巨体を大きく振り回し、その衝撃でリリカを洞窟の壁へと吹き飛ばした。


「くっ……!」


 壁に叩きつけられた衝撃で一瞬息が止まるほどの痛みが走ったが、リリカは歯を食いしばりながら立ち上がった。その目には強い決意が宿っていた。


「いててて……!」


 彼女は再びチャチャと目配せを交わし、次の動作に入る。


 リリカが蛇の注意を引きつけ、チャチャがその隙をついて再度攻撃を仕掛けるという連携が何度も繰り返された。


「行け、チャチャ!」


 リリカの叫びに応えるように、チャチャは力強く跳び上がり、鋭い爪で蛇のもう片方の目を突いた。


 双頭の蛇は痛みでのたうち回り、洞窟内に再び大きな咆哮を響かせる。


「これでもくらえ!」


 リリカは渾身の蹴りを放った。


 その攻撃範は蛇の硬い鱗を突き破り、首元に深々と突き刺さった。


 蛇の巨体が大きく揺れた後、ついにその動きが止まった。


「まずは一匹!」


 洞窟内に訪れた静寂の中、リリカとチャチャは互いの健闘を称えるように視線を交わし、共に大きく息をついた。


リリカとチャチャは魔獣化した蛇の巣で再会する。そこで遭遇した双頭の巨大な蛇。リリカはサーガの力を抑え、自らの力で双頭の蛇に立ち向かう覚悟を決め、チャチャと共に戦う。硬い鱗と巨体に苦戦しながらも、リリカの果敢な攻撃とチャチャの素早い動きが功を奏し、ついに一匹を仕留めることに成功するのであった――。

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