第174話 ルクス・マギナ攻略作戦 ⁉其の四十八
セルフィは丘の上で寝ているレオンたちを起こしに向かった。
寝袋に包まれて気持ちよさそうなレオンの寝顔を見て、一度声をかけるのをためらったものの、食事の準備が整ったことを伝えるために優しく頬を撫でる。
「レオン、おはよう。昼食の準備ができたわよ」
レオンは目をこすりながら起き上がり、
「おはよう、セルフィ……ふわぁ、すごくよく寝た!」
と大きく伸びをした。カガリたちも起き始め、それぞれ身支度を整えて朝食の席に着いた。
しかし、ステラが周囲を見回しながら疑問を口にする。
「……レオン、チャチャの姿が見えないけれど、知らない?」
レオンも驚いたように辺りを見回し、首を傾げた。
「本当だ……リリカ様の枕代わりになっていたはずですが、どこに行ったんだろう?」
リリカも不安そうにチャチャの名前を呼び始めたが、返事はない。
「とりあえず、食事を済ませてから捜索しましょう。」
ステラの提案で、全員が朝食を急いで済ませた後、チャチャの捜索を開始することになった。
カガリは周囲の見張りにトランシーバーで連絡を取り、チャチャの目撃情報を確認した。
しかし、誰もチャチャの姿を見ていないという。
「どうやら見張りの包囲網を抜けた可能性がありますね。」
カガリは険しい表情を浮かべながら言った。
「敏捷な動きで抜けられたのか……とにかく、二手に分かれて捜索しませんか?」
リリカはすぐさま前に出て、
「私も行く! チャチャを見つけないと!」
と声を上げた。
カガリはトランシーバーをセルフィに手渡しながら、
「これを使って連絡を取り合いましょう。片方が何かを見つけたらすぐ知らせてください」
と指示を出した。
チームは二手に分かれることになった。
ステラはテントに待機して、リリカ、セルフィが一つの班に。レオン、カガリ、カズチがもう一つの班を組んで、森の奥深くまで捜索を進めることになった。
リリカたちの班は獣道のような細い道を進みながら、チャチャの名前を呼び続けていた。
「チャチャ~! どこにいるの~!」
リリカの声が森の中に響くが、返事はなかった。
二人は獣道をひたすら歩く。
するとリリカが突然セルフィに声をかけた。
「セルフィ、この道で正解。チャチャの臭いがする」
「流石です。リリカ様。でも何か嫌な気配がします。六隠密で気配を消しましょう」
二人は六隠密で気配を消し、チャチャの臭いを追う。
しばらく進むと、森の奥にひっそりと佇む鳥居が現れた。
その古びた木製の鳥居は苔むしており、明らかに長い年月が経過していることを物語っていた。
「鳥居? こんなところに?」
セルフィが驚きの声を上げる。
リリカは鳥居に近づき、その奥を覗き込んだ。
「ねえ、セルフィ。この先、鍾乳洞みたいな入口があるよ! なんだか怪しいけど、チャチャがここにいるのかも……!」
セルフィは警戒心を露わにしながらリリカを引き止めた。
「リリカ様、少し待ってください。この場所、何か不気味な気配を感じます……下手に入ると危険かもしれません。」
しかし、リリカはその言葉を聞き流し、鳥居をくぐって鍾乳洞の入口へと進んでいく。
鍾乳洞の中からはひんやりとした空気が流れ出しており、洞窟の奥は闇に包まれていた。リリカはその入口をじっと見つめながら、小さく呟いた。
「チャチャ、ここにいるの……?」
セルフィも不安げな表情を浮かべながらリリカの隣に立ち、トランシーバーを手に持っていた。
「レオンに連絡して、先に合流してもらった方が良さそうです。ここから先に進むのは少し……」
その時、鍾乳洞の奥から微かに光が見えた。その光は青白く揺らめき、まるで何かがリリカたちを誘っているかのようだった。
「セルフィ、見て! あの光……」
リリカが声を上げると、セルフィもその方向に目を向けた。
「何かが奥にいる……リリカ様、慎重に進みましょう。」
セルフィがそう言いながらも、リリカの直感を信じるかのように鍾乳洞の中へと足を踏み入れる。
鍾乳洞の中は静寂そのものだった。滴る水の音だけが耳に届く。
リリカとセルフィはお互いを支え合いながら進む中、奥にある光が次第に明るさを増していった。
やがて、鍾乳洞の中に広がる大きな空間が目の前に現れた。
鍾乳洞の中からはひんやりとした空気が流れ出し、奥は闇に包まれ、滴る水音が静寂の中に響き渡る。
青白く揺らめく光が、まるで二人を誘うように奥から漏れている。
リリカは迷うことなく光の方向に足を踏み出した。
セルフィも警戒しながらその後を追う。
鍾乳洞を進むと、やがて広がる空間にたどり着いた。
その中心には岩が鎮座し、その上には青白い光を放つ石が浮かんでいた。
その光に照らされて、鍾乳石の隙間から何かが動いているのが見える。
「……誰かいるの!?」
リリカが目を凝らして叫んだ。
その時、一つの影が現れた。
それは血まみれの衣服を纏った小さな少女だった。
彼女は腕輪をつけており、それが微かに輝いている。
少女はよろよろと歩み寄ると、突然倒れ込んだ。
「ねえ? 大丈夫?」
セルフィが声をかけた瞬間、鍾乳洞全体が大きく揺れた。
「ギャース!!」
同時に、奥からチャチャの激しい咆哮が響き渡る。
セルフィは警戒しつつ、リリカに叫んだ。
「リリカ様、この場所は危険です! 一旦退きましょう!」
セルフィは倒れた少女のもとへ駆け寄ろうとしたが、その瞬間、鍾乳洞全体が激しく揺れ始めた。
天井から細かな石や砂が降り注ぎ、地鳴りが耳をつんざくように響く。
「セルフィ! 危ない!」
リリカが必死の形相でセルフィに叫んだ。
突き飛ばされたセルフィは地面を転がりながらも何とか踏みとどまり、抱きかかえた少女をしっかりと守る。
しかし、その瞬間、巨大な鍾乳石がリリカの頭上に迫りくるのが目に入った――。




