第173話 ルクス・マギナ攻略作戦 ⁉其の四十七
温泉から上がったステラとリリカは、さっぱりとした表情で湯気の中から現れた。
二人の肌は湯の熱でほんのりと赤みを帯び、湯気と月明かりに照らされて輝いて見えた。
その美しい光景に、セルフィは思わず息を呑んだ。
セルフィが二人に近づき、用意していたタオルを手渡そうとした瞬間、ふと何か異変に気付いた。
ステラとリリカ、それぞれの背中に見慣れない模様が浮かび上がっていたのだ。
「ステラ様、リリカ様……その背中……」
セルフィは驚きの声を上げた。
「背中?」
リリカはセルフィの言葉に首を傾げながら、自分の背中を触ってみた。
しかし触れた感触には特に違和感はない。
「ちょっとリリカ、私が見るわね。」
ステラが言いながらリリカの背中を覗き込むと、そこには左の翼の形をした美しい紋章が輝いていた。
「……これは一体?」
ステラの声には驚きと戸惑いが混じっていた。
リリカもステラの背中を見て驚きの声を上げた。
「ステラ、あなたの背中にもあるよ! でも、右側だけだ……すごく綺麗……!」
ステラの背中には、右の翼を模した青と金が混ざり合った模様が浮かび上がっていた。
その紋章はまるで生きているかのように柔らかく光り、二人の背中にある模様が対になるように配置されていた。
「これは……さっきまでなかったのに……」
セルフィは不思議そうに呟き、ステラとリリカ、互いの背中を見比べた。
その時、リリカの中で低く響く声が聞こえてきた。
それは久しぶりに聞くサーガの声だった。
「リリカ。何をそんなに騒いでいる?」
サーガの渋い声が心の中に響く。
「サーガ! これ、何なの?」
リリカが心の中で問いかけると、サーガは少し楽しそうに答えた。
「それはな、『龍神の証』と呼ばれるものだ。簡単に言えば、龍神が加護を与えた者に現れる紋章であり魔法陣だ。この魔法陣を背負う者は、龍神の力を宿す存在とされる。大抵の敵はこれを見ただけで戦意を失うだろうよ。」
サーガの説明を聞き、リリカはさらに驚きの表情を浮かべる。
「こんな模様があるだけで?」
「そうさ。ただし、これは力の象徴だ。それだけの威厳があるということだ。なあ、ナーガ?」
サーガが名前を呼ぶと、ステラの中に取り込まれた邪龍ナーガが初めて声を発した。
その声は以前のような威圧感を含むものではなく、深い敬意が込められていた。
「ステラ様……私は邪龍ナーガ。あなたに忠誠を誓います。我が力の全てをあなたに捧げます。どうか、あなたの内で生きながらえることをお許しください。」
ナーガの言葉に、ステラは少し驚いた表情を見せたものの、すぐにその声を静かに受け入れた。
「分かりました。ただし、裏切りは許さない。それだけは覚えておいて。」
ステラの毅然とした言葉に、ナーガはすぐさま答えた。
「もちろんです。ステラ様。私はあなたの力となり、この体の中で生き続けることを光栄に思います。」
そのやり取りを聞いていたリリカは、興味深そうにステラを見つめた。
「じゃあ、ステラも私みたいに龍の姿になれるの? 二人で龍になってエルフェリアに戻ったら、メルヴィルさんがびっくりするんじゃない?」
リリカの無邪気な言葉にセルフィが慌てて声を上げた。
「リリカ様、それは絶対にダメですよ! 王国中が大騒ぎになりますから……!」
「そうかしら?」
リリカはくすくすと笑いながら、セルフィの焦った表情を楽しんでいる。
その時、ステラがふと思いついたようにナーガに問いかけた。
「ナーガ、あなたの力を少し見せてくれないかしら?」
「喜んでお見せします。ただ、その前に腹ごしらえをしてはいかがですか? 空腹では力も十分に発揮できませんからね。」
ナーガの声は穏やかで、どこか楽しげでもあった。
「確かに、お腹が空いてきたわね。」
リリカは自分のお腹を軽く叩きながら言った。
「それなら私にお任せください!」
セルフィは腕をまくり、すぐさま料理の準備に取り掛かった。
セルフィが手際よく野菜を切り、スープを煮込み始めると、辺りに美味しそうな香りが広がり始めた。
リリカとステラはその香りに誘われるように、料理の様子を興味深げに眺めている。
「これで準備は完了です。あとは男どもを起こしてきますね。」
セルフィは軽やかな足取りでテントの方へ向かった。
その間、ステラとリリカは温泉での余韻に浸りながら、背中に現れた紋章の意味を改めて噛み締めていた。
「この紋章……私たちが龍神の力を継承した証なのね。」
ステラが静かに呟いた。
「うん! 早速試してみたい!」
リリカは元気よく答え、二人は微笑みを交わした。
温泉から上がったリリカとステラに現れた「龍神の証」の紋章は、彼女たちが龍神の力を継承した証だった。サーガの呼びかけにナーガは応えステラに忠誠を誓う。龍神の証を背負った二人は、龍の御神体として新たな力を得る。そんな中、サーガとナーガが喧嘩したら……どちらが強いんだろう。と、興味津々のリリカであった――。




