第172話 ルクス・マギナ攻略作戦 ⁉其の四十六
どれほどの時間がたったのだろう。
セルフィはゆっくりと目を覚ました。
寝起きのぼんやりとした視界の中、そばで優しい寝息を立てるステラの姿が目に入る。
ステラの穏やかな表情に、セルフィの胸は自然と温かくなった。
しかし、静けさを破るように遠くから声が聞こえてきた。
「セルフィ、セルフィ！」
はっとしたセルフィが身を起こすと、リリカの声だった。
テントの入り口でリリカが立っている。
しかし、その姿を見たセルフィは思わず目を見開いた。
「リリカ様……おはようございます。あら、そのお姿は……？」
リリカはすっかり元の姿に戻っていた。龍人化していた幼児体型から、以前の可愛らしくも女性らしい元の姿に戻っている。
しかし、その身体は一糸まとわぬ状態で、リリカは平然とした顔で言った。
「セルフィ、着替えが欲しいんだけど？」
セルフィはリリカの裸身に見とれたまま、一瞬動けなくなる。
つややかな肌が朝の光に照らされているその姿は、美しくも愛らしい。
セルフィは我に返り、少し頬を染めながらも、声を張り上げた。
「分かりました！今、すぐに下着と服をご用意しますね！」
急いで立ち上がり、リリカに衣服を渡すと、手際よく着替えを手伝った。
リリカが服を着終えると、セルフィはホッと胸を撫でおろす。
「これで一安心です。でも……レオンたちは見られてないですよね……？」
その時、ステラが微かに身じろぎしながら目を覚ました。
彼女の澄んだ水色の瞳がゆっくりと開き、朝の光を受けて輝く。
「二人とも、おはよう。……とはいっても、もう地上ではお昼過ぎだけど……」
ステラはまだ眠たげな声でそう言うと、リリカに軽く微笑みかける。
リリカは不思議そうに首をかしげた。
「ステラ、どうしてお昼過ぎだって分かるの？」
ステラは静かに髪をかき上げ、手元から見覚えのある物を取り出して見せた。
それは、エルンから預かったヤマタイコクの「トケイ」だった。
「これよ。便利よね、こういうの。」
リリカはその時計を見て思い出す。
「あ！それ、カガリたちも持ってたやつ！」
「ふふ、それから……。これ！」
ステラは髪をかき上げると、耳に装着していたトランシーバーを見せる。
リリカは目を輝かせた。
「それ、カガリたちと全く同じやつ！すごい！いつの間に！」
ステラは軽く頷きながら続けた。
「一応、エルンからの連絡待ちで使っているのよ。でも、できれば今日はのんびりしたいわね。」
リリカはお腹を押さえながら、少し困ったような顔をする。
「お腹空いた……けど、その前に温泉に浸かりたい！ねえ、行こうよ！」
ステラは微笑みながら頷く。
「いいわね。じゃあ、三人で行きましょう。」
三人は焚き木の横で大いびきをかいて寝ているレオンやカガリ、カズチを横目に見ながら、城跡の温泉へと向かった。
温泉に到着すると、霧のように漂う湯気が幻想的な光景を作り出していた。
ステラとリリカが衣服を脱ぎ捨てると、その姿にセルフィは思わず息を呑んだ。
ステラの肌はまるで雪のように滑らかで、その完璧なプロポーションが湯気の中で際立っていた。
その腰から伸びる白銀のしなやかな尻尾が、さらにその美しさを引き立てている。
リリカはまた違う魅力を放っていた。
あどけない表情に似合わず、均整の取れたその身体はどこか可愛らしさと艶やかさが交錯しており、黒光りする尻尾が独特の愛らしさを醸し出していた。
「ステラお姉様……完璧だわ。こんなプロポーション、私も欲しい……」
セルフィは心の中でそう呟き、溜め息をつく。
そしてリリカを見てまた溜め息。
「リリカ様、そのあどけなさと可愛さ……。ステラお姉様をも虜にする唯一無二の存在よ。……この二人、どうしてこんなに素晴らしいのかしら……」
そうして三人は並んで温泉に浸かった。
温かい湯が体を包み込み、心身をじんわりと癒していく。
ステラは湯船の縁に寄りかかりながら口を開いた。
「地上に出る手段だけど……今のところ分からないわね。一応、エルンの報告を待つしかないけど、方法が分からない可能性もあるわ。」
リリカは不安そうな顔をしながら、腕を湯に浸けたまま呟く。
「方法が見つからなかったらどうするの？」
セルフィはそれに応えるように言葉を返す。
「私たちだけで探るしかないですね。でも、今は焦っても仕方ない。まずは英気を養うことが大切です。」
三人はそれぞれ意見を出し合ったが、結局のところ結論は出なかった。
「ま、考えても仕方ないね！」
リリカが湯の中で笑いながら言う。
「とりあえずお腹が空いたから、食事にしよう！」
ステラとセルフィもその提案に頷き、三人は温泉を後にして食事の準備に向かった。
リリカが元の姿に戻り、ステラやセルフィとともに温泉で癒しのひとときを過ごす。ステラ、リリカの一糸まとわぬ姿に見とれるセルフィ。しかし、地上に戻る手立てが見つからない現実に直面するステラ一行。温泉の穏やかな時間を共有した彼女たちは、新たな一歩を踏み出すために、次の行動を考え始めるのであった――。
