第169話 ルクス・マギナ攻略作戦 ⁉其の四十三
焚き火を囲む四人は、静かで穏やかな雰囲気の中、ヤマタイコクの装備品について語り合っていた。
レオンはトランシーバーの仕組みを説明され、その驚きと感動が冷めやらない様子で炎を見つめていた。
彼の表情には好奇心が溢れており、胸の中に浮かぶ新たな疑問を口にした。
「トランシーバーの仕組みも素晴らしかったが、その時計というのは何に使うんだい?」
その問いに、カズチは微笑みながら頷き、腕につけていた時計をそっと外してみせた。
その動作はゆっくりとしており、彼がこれを大事に思っていることが伝わってくる。
「もちろんだ。例えばこれだ。これは一般的に出回っている物だがちょっと値がはる……」
カズチが差し出した時計は、装飾が施された美しいもので、銀色に輝く金属の本体には魔法的な力を感じさせる模様が彫り込まれていた。
リリカは興味津々にその時計を覗き込み、目を輝かせながら尋ねた。
「これが時計……? どうやって使うの?」
その純粋な問いに、カズチは少し得意げな笑みを浮かべ、時計を手に取りながら説明を始めた。
「これは魔力を利用して時間を知る道具だ。時間を正確に測ることができるんだ。なにを基準にするかにもよるけれど、この時計はヤマタイコクに存在する『光の柱』という魔力源の周期を基準にしている。これによって、どんな環境でも正確に時間を知ることができる」
リリカはその話を聞きながら時計の盤面をじっと見つめ、小さな声で感心したように呟いた。
「針が動いてる……これが時間を表しているんだね。すごいなぁ……」
レオンも興味深そうにその時計を覗き込み、腕を組みながら感想を述べた。
「エルフェリア王国にはこんな道具は存在しない。昼の惑星テラスと夜の惑星デューンの位置関係で知るとは学校で習った……」
「ああ……地上には空というものが無限に広がり、夜という暗闇が来るのだろう。その時の空の景色も素晴らしいと聞く。一度地上に出て見てみたいものだ……」
カズチは目を輝かせながら言った。
カガリが話に加わり、時計の文字盤を指しながら補足説明をした。
「ヤマタイコクでは、時間の正確さが非常に重要なんです。特に我々警備隊のように複数人で動く場合は、全員が同じタイミングで行動する必要がある。こういう時計がないと任務がスムーズにいかなくなってしまう」
リリカは興味をそそられた様子で時計を手に取り、そのひんやりとした感触や細かな装飾を指でなぞった。
目を輝かせながら再び質問を投げかける。
「すごいね……でも、どうしてこの時計はこんなに正確に動くの?」
カズチは笑顔を浮かべながら時計の裏側をリリカに見せた。
そこには小さな宝石のようなものが埋め込まれており、不思議な光を放っている。
「この裏に埋め込まれているのが『魔力供給石』。先ほどのトランシーバーと同じ物です。この石が周囲の魔力を吸収して動力に変えているんだ。そして、光の柱が発する一定の波動を基準にして針が動いている。これによって、常に安定した時間を刻むことができるのです」
レオンが腕を組み、少し難しい表情をしながら考え込むように呟いた。
「つまり、この時計も魔力そのものをエネルギー源として使っているのか。地上では魔力は希少だから、こういう発想は考えつかないだろうな」
カガリは頷きながら、ヤマタイコクの特異性について語り始めた。
「ヤマタイコクの鍾乳石はそれ自体が魔石なんだ。そこら中にゴロゴロしてる。魔力が非常に豊富なんだ。それがこの技術の発展を支えている」
リリカはその説明に深く感心しながらも、ふと疑問を抱いたように顔を上げた。
「でも、地上に持って行ったら動かなくなっちゃうんじゃない? 魔力が薄い場所では使えないよね?」
カズチは真剣な表情で頷き、さらに詳しく説明を続けた。
「そうですね。魔力が少ない場所では、この時計が正常に動作しなくなる可能性もある。そのため、軍事用に改良されたタイプの時計も研究されているんです」
レオンは興味津々でその改良型について尋ねた。
「その改良型の時計って、どうやって動くんだ?」
カズチは嬉しそうに笑い、詳しく説明を始めた。
「改良型の時計は、先ほどの小型トランシーバーと同じさ。『魔力供給石』を無くして、自身の魔力を動力とするタイプ。どんな場所でも使用可能なんだ。ただ今のところ軍事用としてまだ開発中だ」
リリカはその説明に驚きの声を上げ、目を輝かせながら言った。
「すごい! もう魔法具のレベルが違いすぎる!」
カガリは微笑みながら、その言葉に応じた。
「いえいえ、全てヒミコ様の功績です。あの方が現れて、ヤマタイコクを建国し独自の技術と文化が進化したんです。閉ざされた環境で生き延びるために、魔法と技術を融合させていく必要があった。それが今の私たちの力になっているのですよ」
その言葉を聞いたリリカは感心した様子で
「ヒミコ……すごい人だったんだね」
カズチとカガリは顔を見合わせ、一瞬の沈黙の後に頷いた。カガリが優しい声で答える。
「そうですね。そしてヤマタイコクから出ていった地上の人たちと出会い、こうして話すことができるのは貴重な経験だ」
リリカは明るい笑顔を浮かべながら頷き、希望に満ちた声で言った。
「これからもっとたくさん話そうね!ヤマタイコクのことも、みんなの事もたくさん知りたいな!」
カズチとカガリも微笑みを返し、彼らの間に暖かい空気が流れた。焚き火の炎が揺れ、互いの顔を優しく照らしている。
やがて焚き火の光が弱まる中、一行はそれぞれの思いを胸に眠りについた。
ヤマタイコクの装備品を囲みながら語り合うリリカたち。その先進的な技術と文化に驚嘆するリリカとレオン。トランシーバーや魔力を基盤とした時計の仕組みを知り、地上との違いに感心する一方で、ヒミコによる技術開発と魔力豊富な環境が技術発展を支えていることを知るリリカとレオンであった――。




