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第165話 ルクス・マギナ攻略作戦 ⁉其の三十九

 ステラの治癒が終わったことを見届けたエルンが前に進み出て、カガリに事の真相を説明し始めた。


「カガリ、あなたたちが戦ったリリカ様は、ただの地上人ではありません。彼女は龍神サーガ様の力をその身に宿した御神体なのです。」


「御神体……?」

 

 カガリは信じがたいといった表情を浮かべた。


「信じられないでしょうが、事実です。リリカ様は龍神サーガ様をその身に宿し、その力であなたたちを圧倒した。そしてステラ様もまた、邪龍ナーガの御神体……」


 その説明に、カガリは愕然とした表情を浮かべながら、リリカとの戦闘を思い返していた。


 黒い鱗を纏い、龍の姿に変貌した少女が圧倒的な力で自分たちを打ち破ったあの瞬間。


 その姿は確かにただの人間ではなく、神話の龍の存在そのものだった。


「そう。リリカ様は封印されていた龍神サーガ様を解放し、その力をその身に宿したのです。そしてステラ様もまた、邪龍ナーガの力を取り込んだ……ヤマタイコクにとって重要な役割を担うお二方なのです。」


 その説明に、カガリは信じられないという表情を浮かべ、リリカとの戦闘を思い出していた。


 龍の姿を纏い、圧倒的な力で自分たちを圧倒した少女――あの姿は、ただの人間とは思えなかった。


「……地上人は排除すべき存在だと思っていた。しかし、彼女たちは……」


 カガリは呟きながら視線を落とした。


「リリカたち……地上人を敵とみなしてきた我々の信念は、間違っていたのかもしれない……」


 その言葉を聞き、エルンも静かに頷いた。


「私たちヤマタイコクは長らく地上との接触を断ち、地上への警戒心だけでやってきました。しかし、リリカ様やステラ様を見ていると、その偏見がどれほど狭量だったか、気付かされます。」


 その後、エルンはステラに向き直り、深く頭を下げた。


「ステラ様、もしよろしければ、この国を統治している私の姉、エルバにお会いいただけませんでしょうか。彼女は現在、ヤマタイコクの未来について真剣に考えております」


 ステラは一瞬考え込み、静かに答えた。


「本当はそうしたいところだけど、私たちにはやらなければならないことがあるの。遺跡に安置されたエルフェリア王国の騎士団の亡骸を、一刻も早く故郷に届けたいわ。」


 事情を聞いたエルンは深く頷いた。


「分かりました。では、地上に出るための案内役を私に任せてください。明日またお迎えに上がります」


 兵士たちも頷き合い、エルンの指揮のもと、一行はカガリとカズチを残して一時引き上げることになった。


 夜も更け、静まり返った温泉のそばで、リリカが目を覚ました。


「う~ん……なんだか体がだるい……」


 リリカは自分の体を見下ろし、また幼児化していることに気づき、慌てて周囲を見回した。


 すると、傍らにはレオンとカガリ、カズチの三人が座っていた。


「リリカ様、体調はいかがですか……?」


 レオンが優しく問いかける。


「うん、大丈夫。……ねえ、お風呂入りたい!そこの二人も汗臭いし!」


 リリカがカガリとカズチの二人を指差してにっこり笑う。


 突然の提案にカガリとカズチは驚き、顔を見合わせたが、結局リリカのわがままな提案に付き合うことになった。


 温泉の湯気が立ち込める中、リリカは無邪気に湯に浸かりながら笑顔を浮かべていた。


「やっぱり温泉って最高よね!」


 と言って華麗な泳ぎを披露する。」


 一方で、カガリとカズチはどこか緊張した様子で湯船に浸かっていた。


 龍神の御神体といわれるリリカが幼児の姿で、しかも一緒に湯につかっているその光景にどうしても違和感を拭えなかった。


「兄者……この子が龍神サーガ様ってことでいいんだよな……?」


 カズチが恐る恐る尋ねる。


「ああ……間違いない。伝説の龍神サーガの御神体だ。」


 カガリがため息交じりに応じた。


 レオンが二人に近づいて


 「どうだい湯加減は?」


 と気さくに声をかける。


「最高だよ、レオン!ステラ様の治癒も加わって、肌がスベスベだ!」


 カズチが興奮気味に答えると、カガリも頷いた。


「確かに……ステラ様はすごいな。治癒魔法なんて単なる伝説だと思ってたよ」


 そこにリリカが得意げに胸を張り


「そうよ!ステラは本当にすごいんだから!」


 と笑う。


「サーガもね、最初は私に反抗的だったけど、今じゃすっかり私の言うことを聞いてくれるのよ!」


 その言葉にカガリとカズチは苦笑し、やがてお互いに視線を交わして静かに言った。


「リリカ様、私たちはこれからあなた方と共に行動することで、もっと多くを学びたいと思っています。」


 カガリが穏やかな声で言う。


 リリカは一瞬驚いた表情を浮かべたが、すぐに笑顔を返し、手を差し出して言った。


「じゃあ、これから仲間ね!これぞ、裸の付き合いってやつね?」


 カガリとカズチにリリカが龍神サーガの御神体であることが明かされ、彼らの価値観に変化が訪れる。温泉でリリカの無邪気さに触れ、緊張しつつも心を解していくカガリとカズチ。ステラの治癒の力も加わり、体だけでなく心も癒された彼らは、リリカたちと行動を共にすることを決意する。温泉の湯気に包まれる四人。リリカを中心に、ヤマタイコクと地上の新たな絆が芽生え始めたのだった――。

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