第142話 ルクス・マギナ攻略作戦 ⁉其の十七
レオンがリリカの姿が見えなくなったことに気づき、混乱の中で辺りを見回していた頃、実はリリカはその場から六隠密を使い、姿と気配を完璧に消して祭壇の上に座っていた。
龍の激しい戦いを目の前で観戦し、涼しい顔で楽しむように見物していたのだ。
「ふふ、レオンたら、まさかこんなことでビビっちゃうなんて……」
リリカは龍の壮絶な攻防を目にし、どこか興奮した面持ちで笑みを浮かべた。
彼女の目の前で繰り広げられる戦闘は、まさに圧巻の一言だった。
赤龍が白龍の尾にふっとばされる度に、次の瞬間には鋭い爪で切り返し、その衝突の度に大気が震え、エネルギーが渦巻いている。
リリカはその光景に見惚れながら小さく拍手を打ち鳴らした。
「すごい、すごい! 龍の戦いがこんなにすごいだなんて!」
メイドアーマーを装着し、戦闘モードに入っている彼女の精神は、恐怖をほとんど感じずに純粋に目の前の戦闘を楽しんでいた。
戦闘の刺激が彼女の感覚を研ぎ澄まし、体中の血が沸き立つような興奮を感じさせている。
もはや祭壇に堂々と腰を下ろし、リリカは王様のような態度で二匹の龍の動きを楽しんでいた。
だが、リリカがふとした瞬間に呼吸を整え、軽く姿勢を変えた時、六隠密の効果が突然途切れた。
その瞬間、鋭い視線が彼女に突き刺さるのを感じた。
「……あれ、ばれた?」
リリカが顔をこわばらせる間もなく、二匹の龍が戦いを止めて彼女に視線を向けてきた。
その眼差しはまるで
「何者だ?」
と尋ねているかのように鋭く、威圧感を放っていた。
「や、やばい、ばれちゃったみたい……」
リリカは小さな声で呟き、思わず後ずさりをした。
リリカの心臓が一気に跳ね上がり、冷や汗が背筋に走る。
戦闘モードの状態にあるものの、この状況に彼女はさすがに警戒心を抱いた。
彼女が一歩後退りをした瞬間、背後の祭壇に手が触れた。
そのとき、祭壇に彫られていた黒い龍の彫刻が光りだし、闇の瘴気が噴き出す。
黒い瘴気はリリカの手を包み込むように広がり、彼女を冷たい霧に包んだ。
リリカが手を引っ込めようとした時には、すでに遅かった。
「な、何……?
」リリカが驚きと戸惑いで動けずにいる中、黒い瘴気の中から第三の龍――黒龍が姿を現した。
その大きな体は他の二匹の龍をも凌駕し、圧倒的な存在感と威圧感を放っていた。
赤龍と白龍も黒龍の登場に驚いたのか、わずかに後退りし、警戒を強めているように見えた。
「うわぁ……今度は黒龍が出てきちゃったの……?」
リリカは息を呑み、再び身動きが取れなくなってしまった。
黒龍は赤龍と白龍をじっと睨みつけると、闇のように重い低音で咆哮を上げた。
その声は空洞全体を揺るがし、まるでその場のすべてを飲み込むかのような力強さがあった。
黒龍の体は赤い模様の入った黒い鱗で覆われ、目には赤い光が宿っており、全身から放たれる瘴気が闇のオーラを纏わせていた。
そして次の瞬間、黒龍は赤龍と白龍に向かって突進を開始した。
龍たちは再び戦闘態勢に入り、三つ巴の戦いが繰り広げられた。
リリカは、祭壇から身を乗り出し、圧倒的な三つ巴の戦いの光景に目を奪われていた。
黒龍は鋭い爪と巨大な尾で、赤龍と白龍の攻撃を次々と防ぎ、逆に猛攻を加えていく。
「すごい……本当にすごい……!」
リリカは感嘆の声を漏らした。自分が引き起こしてしまった状況ではあるが、それでも目の前の壮絶な光景に心を奪われていた。
「リリカ様、今は見物を楽しむ場合ではありません!」
とレオンがやつれた顔で立っていた。
祭壇にいるリリカを見つけ、必死で追いかけてきたのだ。
レオンが彼女をたしなめるが、リリカは興奮した様子で戦いに目を奪われ続けている。
「でも……だって、こんな迫力満点の戦い、なかなか見れないじゃない!」
一方、赤龍と白龍も決して負けてはいない。
赤龍は炎のブレスを口から放ち、黒龍の体に直撃させようとする。
しかし、黒龍はその場で軽やかに躱し、炎のブレスをかわすと、逆に闇の力で赤龍を包み込もうとした。
赤龍は必死に翼を広げ、闇から逃れようとするも、黒龍の力は圧倒的であり、その一撃で一気に力を削がれてしまった。
その間に、白龍が鋭い牙で黒龍の尾に噛みつこうと試みるが、黒龍はさらに素早く反応し、尾を力強く振り回して白龍を弾き飛ばした。
白龍が岩壁に激突し、地面に落ちると、黒龍は再び二匹に向かって攻撃を仕掛けた。今度は黒龍が放つ黒い闇のオーラが、赤龍と白龍の体を徐々に蝕んでいった。
六隠密で姿を隠し、祭壇から二体の龍の戦いを楽しむリリカ。うっかり効果が切れその拍子に黒龍まで目覚めさせてしまう。赤龍、白龍、黒龍の三つ巴の戦いが激化し、迫力に圧倒されるリリカ。一方でレオンはリリカの元にたどり着くも焦燥感を隠しきれないのであった――。




