目覚めたら猫耳⁉ ～神隠しで別宇宙のアイドル級猫耳メイド魔法使い⁉に大変身！～

第130話 ルクス・マギナ攻略作戦 ⁉其の五

　ボロボロになりながらも、ついに巨大な三頭の魔犬獣を倒したセルフィとレオン。

　二人は息を切らしながら、地面に座り込んだ。

　激しい戦いの末、勝利したものの、体力と魔力は限界に近づいていた。

　その時、リリカが涙を浮かべながら二人の元に駆け寄り、彼らにしがみついた。

「セルフィ、レオン！本当に良かった……もう、二人が死んじゃうかと思ったよ！」

　リリカは泣きながら二人に抱きついた。

　セルフィはリリカの背中を優しく撫でながら、弱々しく笑った。

「ごめんね、リリカ様。心配かけて……でも、なんとか勝てました」

　レオンも力を振り絞って、微笑みながら言った。

「正直、どうなるかと思ったけど……セルフィと一緒に戦えて良かった」

　その時、ステラが彼らの後ろに立ち、静かに微笑みながら言った。

「二人とも、本当に良くやったわ。でも、連携はまだまだね。これからは、もっとしっかりと息を合わせなきゃいけないわよ。」

　そう言うと、ステラは二人の頭に手をかざし、治癒魔法を展開した。

　彼女の手から淡い光が放たれ、瞬く間に二人の体から痛みと疲労が消え去っていった。

　セルフィもレオンも驚きながら、ステラを見つめる。

「すごい……本当に元通りだ……！」

　レオンが驚きの声を上げた。

　セルフィもステラに感謝の眼差しを向けた。

　「ありがとう、ステラ様。これでまた戦えます」

　ステラは優しく頷き、彼らを立ち上がらせた。

「さあ、先を急ぎましょう。遺跡までもう少しよ」

　一同は再び隊列を整え、ルクス・マギナ遺跡へと向けて歩き始めた。

　途中、道中には魔獣の群れが何度も現れたが、リリカの光魔法で次々に浄化されていった。

　しかし、そのたびに魔獣たちが狂暴化している様子が、彼らに不安を抱かせた。

　セルフィは地図を片手に、険しい表情で呟いた。

「こんな状況、以前とはまるで違うわ。森の中でさえこれほどの魔力の異変があるなんて……遺跡の中は、一体どうなっているのか検討もつかないわ」

　リリカも不安げに遺跡の方角を見つめた。

「うん、確かに前とは全然違う。何か大きな力が働いている気がする……」

　その時、一同は目の前にそびえ立つ遺跡の入り口に辿り着いた。

　以前訪れた時とは明らかに違う、異様な雰囲気が漂っていた。

　遺跡の入り口からも、強烈な魔力が放たれており、空気さえも重く感じる。

「もう、以前の遺跡ではない……」

　ステラは冷静に状況を分析し、仲間たちに視線を送った。

　途中何匹かの魔獣を浄化しながら一向は道を進んだ。

　セルフィは地図を片手にしながら、周囲を見回した。

「おかしいです。もうここは遺跡の入口のはず。遺跡が見あたらない」

「セルフィ、道を間違えたんじゃない？」

　リリカが茶化すように言った。

「私もその可能性を考えましたが、そうではないみたいですね。前回私が目印を付けた石像がそこに。間違いありません」

「そうね、セルフィは間違ってないわ」

　そう言ってステラは両手を掲げて。上空に光魔法展開した。

　すると空中に巨大な魔法陣が現れた。

　黒く赤い文字の刻印が刻まれたその魔法陣はゆっくりと回り結界を作り出していた。

　ステラがさらに光魔法の出力を上げていくと魔法陣の回転が止まり、遺跡が姿を現した。

「結界で遺跡を隠してたのね。これでは分からないわね」

　と言って続けた。

「これで明らかになった事が三つ。このルクス・マギナ遺跡の異変は人為的なもの。そしてもう一つはそいつらの魔力も相当なものね。私やリリカに匹敵するかもしれない」

「ええ？お二人より強い魔法師がいるなんて信じられません」

　レオンがびっくりして言った。

「あくまでも仮定よ。この魔法陣のエネルギーはすさまじいわ。もしたった一人で作ったのなら相当なもの。デリケートな結界の魔法陣をこれだけの大きさで展開できるのは熟練された証拠ね」

　とステラは淡々と説明した。

「そして三っつ目よ。この魔法陣の魔法の属性が分からないの。唯一、今分かった事だけれど……。私の光魔法を吸収してるわ、そう、全ての魔力を吸収して無効化する可能性がある」

　ステラが真剣な表情で皆の顔を見て言った。

「何とか今は止めたけど、また時期にこの魔法陣は動き出すかも」

　その瞬間、遺跡の中から低い唸り声が響き渡った。

　地面がかすかに揺れ、一同の背筋に冷たい汗が流れた。

「何か来るよ……！」

　リリカが緊張した声で叫び、皆が警戒態勢を取った。

　突然、遺跡の入り口から黒い霧が流れ出し、その中から無数の魔光虫が飛び出してきた。

　光を反射しながら飛び回るその姿は、不気味で不吉な予感を漂わせていた。

「魔光虫……！？」

　セルフィが驚きの声を上げる。

「すごい数……」

　ステラは冷静に判断し、すぐに浄化魔法を唱え始めた。

　リリカもステラに続き、光の魔法を放って魔光虫たちを次々に消滅させていく。

　しかし、魔光虫の数は尽きることなく、次々と襲いかかってくる。

「一体、どこから湧いてくるんだ……！？」

　レオンが必死に剣を振りながら叫んだ。

　ステラは冷静に言った。

「この霧が源よ。魔光虫だけでなく、何か別の存在も隠れているはず……」

　すると、遺跡の奥から低く、重々しい足音が響き渡った。

　その音は徐々に近づき、一同の前に巨大な影が姿を現した。

「これは……！」

　リリカが驚愕の表情を浮かべた。

「何かが来る……！」リリカが呟き、全員が警戒態勢を取った。

　その時、闇の中から低く重々しい咆哮が響き渡り、霧の中に巨大な影がゆっくりと姿を現した。

　それは、全身に黒い瘴気をまとった恐ろしい獣人だった。体は筋肉で覆われ、獣のような鋭い爪を持ち、目は血のように赤く輝いていた。

　その姿は、まるで悪夢から抜け出してきたかのような凄まじい存在感を放っていた。

「これは……ただの魔物じゃない！」

　リリカは恐怖に満ちた声で叫んだ。

「なんて邪悪な気配……」

　ステラが眉をひそめながら言った。

　遺跡が結界で隠されていることに気付いたステラ。そのことから敵は強大な力を持つ魔法師であると確信する。新たなる敵に向けて歩を進め、決戦の幕が開こうとしていた――。