第129話 ルクス・マギナ攻略作戦 ⁉其の四
セルフィが魔犬獣に捕らえられ、彼女の体が巨大な顎に飲み込まれそうになる瞬間、リリカが叫んだ。
「セルフィ!セルフィが食べられちゃう!」
絶望的な光景にリリカは呆然と立ち尽くし、どうするべきか分からずステラに助けを求めた。
だが、ステラは冷静なままリリカに声をかけた。
「まだよ、リリカ。よく見て」
ステラの視線の先、地面に倒れていたレオンがかすかに動き出していた。
レオンは気を失っていたが、今まさに意識を取り戻し、重い体をなんとか起こそうとしていた。
苦痛に耐えながら、彼は自分の周囲を見回し、目に映ったのは魔犬獣に捕らわれたセルフィの姿だった。
「セルフィ……!」
レオンはその名を呼びながら、足元に力を込め、ふらつきながらもなんとか立ち上がった。
彼の体は痛みで悲鳴を上げていたが、そんなことは気にもせず、剣を握りしめた。
「俺が……やらなきゃ……!」
レオンは自らを奮い立たせ、剣を高く掲げた。
彼は自分自身の周囲に魔法陣を展開し、全身の魔力を剣に集中させた。
剣は青白い光を放ち、次第に太く、長くなり、強烈な力を宿していく。
「セルフィ!今助ける!」
レオンは声を張り上げ、魔犬獣の足元に向かって全力で突進した。
そして、魔犬獣の足を一刀両断にした。
その一撃は見事に命中し、魔犬獣は苦しみの声を上げて体勢を崩した。
だが、魔犬獣もすぐに反撃を開始した。
鞭のようにしなる尻尾を再び振り上げ、レオンに向かって猛攻を仕掛けた。
しかし、レオンの展開した魔法陣がその攻撃を防ぎ、尻尾の一撃はことごとく跳ね返された。
「すごい、レオン!」
リリカが叫んだ。
レオンはセルフィを助けるため、さらに強い一撃を準備した。
そして、魔犬獣の頭部に向かって再び突進し、剣を振り下ろす。
剣は輝きながら魔犬獣の頭を切り裂き、粉砕した。
レオンはすかさずセルフィが地面に落ちるのを抱きかかえた。
彼女の体は軽く、そして冷たかったが、レオンはその体をしっかりと抱きしめた。
「セルフィ、大丈夫か?」
レオンは安堵の表情を浮かべながら言った。
その瞬間、セルフィは薄目を開け、かすれた声で答えた。
「レオン……ありがとう……助かったわ……」
レオンはセルフィの顔を見つめ
「ごめん、俺のせいでこんなことに……」
と申し訳なさそうに呟いた。
しかし、その一瞬の安堵も束の間、残り一体の魔犬獣が咆哮をあげる。
尻尾をしならせ、二人に襲いかかった。
だが、レオンの展開していた魔法陣が再びその攻撃を弾き返し、尻尾の猛攻を防いでいた。
「どうする?俺の魔力もそろそろ限界だ……」
レオンがそう思った瞬間、セルフィが彼の腕の中で囁いた。
「レオン、降ろして。もう大丈夫よ……あと一体、迷ってる暇はないわ」
セルフィは力強く立ち上がり、レオンに向かって微笑んだ。
「分かった……やろう、セルフィ」
レオンは頷き、魔法陣を解除し、すばやく魔犬獣の背後に回り込んだ。セルフィも体勢を整え、風の力を再び呼び起こして風の槍を展開した。
「尻尾は俺がやる!」
レオンが叫び、魔犬獣の背後に素早く回り込む。
尻尾の攻撃を剣でかわすと、魔犬獣の背後に向かって剣を振り下ろした。
「これでどうだ!」
その一撃は見事に尻尾を粉砕し、魔犬獣の動きを止める。
残るは最後の一頭。
しかし、レオンもセルフィも限界を迎えていた。
「あと一撃……これで……終わらせる!」
セルフィは全身の風の力を集め、最後の槍を作り出した。レオンも立ち上がり、セルフィの意志を感じ取り、共に最後の攻撃を仕掛ける。
「今だ、レオン!」
セルフィが叫び、風の槍を放つ。
レオンも剣を振り下ろし、二人の攻撃は見事に重なり、魔犬獣の最後の頭を完全に吹き飛ばした。
魔犬獣は一瞬怯むと、咆哮を上げながらその体が崩れ落ち、黒い瘴気と共に霧散していった。
「やった……のか……?」レオンは膝をつき、息を切らしながらセルフィの方を振り返った。
セルフィも同じように膝をつき、笑顔を浮かべながらレオンに応えた。
「ええ……やったわ、レオン……」
すると、大きな魔光虫の死骸が姿を現した。
「こいつが元凶か……」
レオンは力を込めて剣を振り下ろし、魔光虫の死骸を粉砕した。
セルフィとレオンは互いに無事を確認すると、その場に倒れ込むように座り込み、互いの無事を確認し合った。
戦いは終わった。しかし、二人の体力も魔力もすでに限界だった。
「そもそも……あなたがやられちゃうから……私まで危なかったのよ?」
セルフィが少し責めるように言うが、その表情には笑みが浮かんでいた。
「ごめん、セルフィ。本当に……」
レオンは疲れ切った顔で申し訳なさそうに笑った。
セルフィは少し微笑みながら
「まあ、いいわ……でも助けてくれてありがとう。かっこよかったわ、レオン」
と言い、レオンに優しい眼差しを向けた。
二人は勝利の余韻に浸りながら、疲れた体を寄せ合い、互いに笑い合った。魔犬獣との死闘は激しかったが、彼らの絆は一層深まり、次の挑戦に向けての強い決意が胸に刻まれたのだった――。




