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第123話 リリカの名案⁉馬車でのデート!

 朝の城の庭園は、珍しく賑やかな時間を迎えていた。

 

 リリカ、ステラが加わりセルフィ、エリオス、フレイそして巡回任務中のベリアと共に笑い声が絶えないひと時を過ごした。


「楽しかったねえ」


 とリリカは微笑みながら言った。


「本当です。フレイのあんなに慌てた顔は初めて見ましたよ」


 と、セルフィも満足げに頷いた。


「エリオスも忙しそうね」


 とステラが静かに付け加えると、ふと庭園を見渡す。


 半刻程前、エリオスとフレイは公務に戻り、ベリアも巡回の仕事へと戻っていった。


 リリカとセルフィ、そしてステラは、しばしその楽しいひと時の余韻を味わっていた。


 その頃、エリオスは城内へと急いで戻り、兄のアレクシス王子を探していた。


 やっとのことで書庫で調べ物をしているアレクを見つけたエリオスは、少し焦り気味に言った。


「兄さん、ステラが庭園に来ているよ。どうする?明日にはルクス・マギナに行くってリリカが言ってた」


 その言葉を聞いた瞬間、アレクの心は激しく動揺した。


 アレクは、エリオスの声を背に受けて書庫を飛び出した。


「ステラ!」


 思わず口にだす。


「噴水前だよ兄さん!」


 エリオスが叫ぶ。


 アレクは一心不乱に庭園の噴水前へと走った。


 彼女に渡したいものがある。


 それだけを考えて、最短距離を全力で駆け抜けた。


 やっとのことでたどり着いた噴水前。


 しかし、そこにはもう誰の姿もなかった。


「いない……」


 アレクは呟いた。


 ステラたちは既に猫耳ハウスに戻ってしまったのか、それともメルヴィルの研究所に行ったのか、分からない。


 アレクは今日からまた公務で城を離れなければならない。


 隣国の大臣の招きによる視察があり、帰りは明日の夜。


 彼女たちは明日の朝には、ルクス・マギナへ出発する。


 アレクは肩を落とし、溜め息をつきながら歩き始めた。


「せめて見送りくらいしたかったのに……」


 彼は悔しそうに呟く。


 そんな時、茂みの向こうから聞き慣れた笑い声が聞こえてきた。


 アレクはその声を追いかけるように再び走り出し、声を上げた。


「ステラ!」


 彼の叫びに応えるかのように、ステラが現れた。彼女もアレクの姿に気づき、駆け寄ってきた。


「アレク!」ステラは笑顔で彼の腕に抱きついた。


 二人はそのまま、再会の喜びを込めてキスを交わした。


「どうしたの?すごい汗よ」


 とステラが彼を見上げた。


「ごめん!エリオスから庭園にいるって聞いて、急いで来たんだ」


 とアレクは息を切らせながら答えた。


「アレク、忙しいのにありがとう……明日、私たちが任務に向かうこと、聞いたのね?」


 と額の汗をハンカチで拭った。


 アレクはその手を握り返し


「見送りにも行けないなんて、申し訳ない。実は君に……」


 そう言いかけたその時、後ろからリリカとセルフィがひょっこり顔を出した。


 「ねえ?いい案があるんだけど?」


 とリリカが楽しげに提案した。


 数刻後、アレクとステラ、そしてチャチャは王宮の馬車の中にいた。


「まさかこんな手があるなんて」


 とアレクは驚きながら、向かいに座るステラに言った。


「提案したのはリリカだけど、考えついたのはきっとセルフィよ」


 とステラは微笑んだ。


 リリカは「馬車でのデート」を提案したのだ。


 アレクが隣国へ向かうために使う王宮の馬車に、ステラとチャチャも同乗する。


 そして、国境を超える手前でステラは馬車を降り、チャチャに乗って帰ってくるという寸法出だ。


 これにより、国境までの五時間をアレクとステラは馬車の中で過ごすことができる。


「それにしても、こんな風に二人で時間を過ごせるなんて、思ってもみなかったよ」


 とアレクは照れくさそうに笑った。


「私も。思いがけず素敵な時間をもらえて嬉しいわ」


 とステラは、笑い返す。


 馬車の中で、二人はゆったりとした時間を楽しんだ。


 ステラはアレクに今回の任務のこと、そして未来のことを語りながら、穏やかな笑顔を浮かべていた。


「アレク、ありがとう。あなたとこうして一緒にいられて、本当に幸せだわ」


 とステラは静かに囁いた。


 アレクはステラを見つめ


「僕も、君が隣にいると、どんな困難も乗り越えられる気がする」


 と優しく言った。


 リリカの提案で馬車でのデートという意外な展開に。馬車の中で彼らは二人だけの世界を満喫し、未来の事を語り合う。時間が止まったかのような、幸せなひと時を過ごすアレクとステラであった――。

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